第3話 放課後カフェで待ち合わせ
生徒会長を買ったその日の放課後——
俺は学校近くのカフェでひとりカフェラテを飲みながら彼女が来るのをダラダラと待っていた。
あのあとトントン拍子で簡単に交渉は成立し、今日一日の間、俺は彼女を買ってしまったのだ。
強烈な罪悪感が、今もなお胸を締め付けて離れない。
高校生が高校生を金で買う。普通に考えてダメだろ?字面もアウト。
でも彼女が別の男に買われる、ましてや抱かれている姿など絶対に見たくない。
たぶん血反吐を吐いて倒れる自信がある。
だからこその苦渋の選択という部分もある。
俺はカフェラテをもう一口すすり、ため息とともに心の奥の罪悪感を吐き出そうと努力をする。しかしそんなコトできるわけない。
「まあ、こんなんじゃこの最悪な気持ちを吐き出せるわけないわな……」
ぽりぽりと頭を掻いて独り言をつぶやく。なんともやるせない。
買っても地獄、買わなくても地獄……
そんな思考を巡らせている時、後ろから聞き慣れた声が聞こえた。
「おまたせ、鷹村君」
反射的に驚いてしまい、ビクッとしながら振り向くと、そこにはいつも通りの柴乃宮の姿があった。
「ああ、わざわざ来てもらってごめんな」
「いいのよ、私はあなたに買われたの。今日は一日好きなように使って」
「使ってって……その言い方やめろって。モノじゃないんだから」
「どうしてかしら?私は今、あなたの所有物よ?」
「だから……まあいいや」
このやりとり一つ一つに心を締め付けられる感覚を覚えて、彼女の事を見るのが辛くなる。そんな悲しげな言い方をされてしまうとどう返していいかわからない。
それは俺が未熟だからかもしれない。
「私如きがこんなこと聞いて良いのかわからないけど、なんでここで待ち合わせしたの?別に教室から一緒に帰ればよかったじゃない?少しだけ生徒会の仕事が残ってたから待っててくれればすぐに合流出来たのに」
少し不思議そうな声色で問いかけてくる彼女。
「えっ?なんでって、俺と柴乃宮が一緒に帰ったりしたらお前の評判落ちちゃうじゃん?お前、生徒会長であり学年一の美女なんだぞ?申し訳ないだろ」
俺にとってはあたりまえの答えを伝えると、彼女はピクリと眉がつり上げる。
その表情を見て、俺は少しだけ不安を覚えてしまう。
なんか余計なこと言ったか?俺……
「そんな事ないわよ?あなたは十分……格好いいじゃない?」
「………へっ?」
これは彼女なりのリップサービスなんだろうか?あの10万の中に含まれているんだろうか?そんな勘ぐりさえしてしまう。
「お世辞はいいよ柴乃宮。俺はお前が今まで会ってきた客とはちがう。ただの同級生だからさ、普通に接してくれよ」
「なにを言ってるのかしら?これは本心よ?」
…………へ?
急激に顔が熱くなるのがわかる。たぶん俺は今、相当照れている。あまりの恥ずかしさとニヤけそうになる口元を手で覆ってどうにか誤魔化した。
俺……柴乃宮に格好いいって言われた!?
そんな俺を、彼女は目を逸らすことなくじっと見つめてくる。
不思議な圧になんて言って良いかわからないがどうにか言葉を紡ごうとして俺がひねり出した言葉がこれだ。
「わかった、覚えとく」
そんで言ってからまた激しく後悔する。もう頭かきむしりたい位。
いやだから誰目線よ俺?まじでこの口は災いしか生まないだろ。
俺が恥ずかしさと自分への落胆で悶えていると彼女が意味深な質問をしてきた。
「それで、一度家に寄ってから行く?それとも、このまま行く?」
「……ん?」
なにそのご飯にする?お風呂にする?それともわ・た・し?みたいな類似品。
「もう鷹村君は着替えは持っているのかしら?」
「着替え?持ってないけど……なんで着替えがいるんだ?」
「あら♡もしかして、鷹村くんってそういうフェチ?♡」
何故か声が艶っぽくなる彼女。
えっ?何言ってんのこの人?どこからフェチの話持ってきたの?ってかなんで急に顔赤らめて唇舐めてるの!?
急な彼女の変化にパニクる俺は、ストレートに今の話しの筋が見えないことを伝えることにした。
「ごめん柴乃宮……着替えとかなんとかって、今なんの話してるの?」
純粋な疑問。
その問いに対して彼女は俺の想像を遙かに超える回答をぶっ込んできた。
「えっ?だって私たち、これかラブホに行くわけだから、その時の着替えの話しではないのかしら?私はたまたま着替え持っているから問題ないわ。そもそも今日が金曜日だから明日までゆっくり出来ていいわね♡」
ラ……………ブ………………ホ?
いやいやいやいやいやいや………………ラブホ?
「ラブホ!?えっ……俺たちラブホ行くのぉぉぉぉ!?」
カフェ中に俺の声がこだました——
次回:なんかラブホにイクっぽい
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