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第27話 放課後の練習でパイタッチ…前編

火曜日の放課後——


俺はサッと帰り支度を済ませて前の机に座る霞の元へと向かった。

今日は珍しく誰にも囲まれてない彼女に「帰ろうぜ」と一言声を掛ける為に。


「かすっ……」


その俺の声をかき消すように教室に入ってきた陽キャの大きな声。


「柴乃宮さーん!今日も体育祭の準備いくよ!」

「はぁ………わかったわ」


その声の主は丸山だ。そんな彼の声に反応して霞は動きだし、俺に背中を向けたまま教室を出て行ってしまう。


「…………」


まあ仕方ない、霞にも仕事があるんだ。やり場のない声をしまい込み、無理矢理自分を納得させる。

気を取り直し教室の出口へ向かおうとした時、背後から元気な声が俺に向かって突進してきた。


「た〜か〜む〜ら〜!!どこ行くの!!」


俺の背中がビシッとその声の主に叩かれ「痛っ!?」と声が出てしまう。反射的に振り返るとそこにはニッコニコの楓が立っていた。


「楓!?何すんだよ!?」

「何って!鷹村こそどこ行くの!?」

「どこって……帰るんだけど?」

「はあっ!?ダメだよ!すぐに運動着に着替えて!!」

「はっ?」


マジでちょっと何言ってるかわからない……

俺はだいぶ困惑していた顔をしていたと思う。それに気づいた楓は不満を露わにする。


「練習行くよっ二人三脚の!!早く着替えて!」

「えっ……体育祭って練習するの??」

「当たり前でしょ!やるからには勝つ!これがあたしの流儀!」


俺は初めて参加する体育祭だからか、そういう所が全くわかってなかった。

流石に無理とは言えないし、別にこの後やることがあるわけじゃない。

俺は彼女の申し入れを承諾する事にした。


「わかったよ……じゃあ着替えてくるから待っててくれ」

「教室の外で待ってるからすぐにね!1分で戻ってきて!」

「無理だって!!」

「じゃあ2分!!は〜や〜く〜!」

「わかった!わかったから!!2分な、待っててくれ!」


楓の半端ない押しに若干引きながら、俺はトイレに走り体操着に着替えるのだった。



————



着替えた俺は楓と合流して校庭に出ると、練習しやすそうな場所に移動する。

辺りを見渡すと部活をしている生徒以外にも体育祭の自主練習している生徒もちらほら見かけたりする。思えば放課後の校庭なんてあまり見た事もなかったから新鮮だ。


「鷹村はさ、運動とか出来る人?苦手な人?」


楓が俺の顔をのぞき込むように見ながら聞いてくる。


「うーん、苦手とまではいかないけど……」

「昔運動してた?」

「いちおう空手と剣道と合気道はやってた……」


男は強く優しく女性を守れる強さが必要!という母のモットーに従い、小学生からたたき込まれた。まあ理由は片親という所から察してくれ。あまり言いたくない……


「おおっ!?イメージ通りだいぶ攻撃的だね鷹村…」

「おいイメージ通りって………お前はどうなんだよ?」

「えっ!?鷹村あたしの事マジで知らないの!?」

「えっ?……うん…なんかヤバい?」


まるで天然記念物でも見たかのように驚く彼女になんか悪い気がしてくる。

でも知らないんだから仕方がない。


「あたし陸上部の部長だし、県大会とかでも優勝して終業式とかで表彰されたんだけど……」


………悪い、部活関係無関心で終業式も休んでた!


「そっ、そうか、なんかごめんな!俺マジでボッチでそういうの知らなくて……」


そんな俺の答えに弾けるように笑いながら俺の肩をポンポンと叩いてくる彼女。

なにか面白いとこあった?


「はははっ!むしろ新鮮だよ鷹村!あたしの事そこまで知らない人って」

「じゃあ私の実力見せて上げる!早速やろ!」


そう言ってどこかから出した平たい紐を俺と彼女の足にかがんだ姿勢で結び始める。


足と足が触れあいフワッと爽やかな柑橘の香りが押し寄せる。

思わず下を向いて彼女の方を見ると、前屈みになったせいで胸元がゆるゆるになり、その隙間からピンクのブラのようなモノと、思った以上に形のよい白い膨らみ(おっぱい)の一部が目に入りつい狼狽えてしまう。


うわっ……楓!?ちょっとこれ、エロい気が……


そんな気持ちを紛らわす為に俺は視線を辺りに移す。すると今度は霞は居ないよな?というなぜか後ろめたい感情が芽生え始める。


「じゃあまずはゆっくり一本!声を掛け合いながら行くよ!!」

「……おう」


立ち上がった彼女のそんなかけ声とは真逆の間の抜けた俺の声。そんな感じで練習は幕を開けた。



————



練習を始めて数回直線を往復してみたが、なかなか息が合わずもつれそうになってしまう俺と楓。そして今は少し近くの階段に座りながら作戦会議中。


「なかなか息が合わないねぇ、あたしたち」

「悪い上手く合わせられなくて…」

「う〜ん、なんかこう…しっくりこないんだよなぁ……一体感がないというか?」


楓は腕を組みながら眉間にしわを寄せて唸ると、近くに置いてあった鞄からスマホを取り出していじり始めた。

そんな彼女の発言にギクッと俺は身体を震わせてしまう。

上手くいかない原因に俺は心当たりがあったのだ。


その理由は密着……二人三脚って言えばわかると思うが、ふたりが横に並んで隣り合う足を紐か何かでくくりその状態で走る競技だ。

その時、上半身もできる限り密着させて互いの身体を手でホールドするのが基本。

しかし、俺はあえて真逆の事をしていた…


だって急に女子に触れるとか出来るわけないじゃん!!密着したら色々あれじゃん!?俺童貞なんだよ!?


そんな考えを脳内に巡らせていると、彼女が「あっ!」と大きな声を上げる。

彼女の方を見ると何やらスマホで動画を見ているようだった。


「鷹村わかったよ!!あたしたちが上手くいかない理由!」

「おっ、おう…そうか……」


頼む、見つけないでくれ!見当違いであってくれ!!


「あたしたち全然密着してないんだよ!!」


…………はい、正解です……もうだめぽ……


「おおっ、そうかぁ……」


俺は心でがっくりと肩を落としながらなんとか返事をする。

彼女は鞄にスマホをしまいサッと立ち上がると俺に手を向けてきたので、気まずそうにその手を取って俺は立ち上がった。

すぐに俺たちの足を紐でくくり始める彼女。


「ほら!じゃあさっそく試すよ鷹村!まずフォームを決めよう!」

「おい…マジでか?」


いやいや無理だって……だって彼女、霞に比べれば小さいけど十分おっぱいあるんだもん……密着したら絶対それも密着しちゃうじゃん……


気まずそうに下を向く俺に対して、彼女は小さく首をかしげ不思議そうな視線を送ってくる。そのままほんの少し視線を彷徨わせたあと、急に目を見開き何かに気づいたかのようにパッと口を開いた。


「あっ……鷹村もしかしてあたしとくっつくの嫌!?あたしなんか臭いかな!?さっき制汗剤使ったのに……」


予想の斜め上の回答……これどう返せばいいの?そんなボキャブラリーないよ俺……全然臭くありません!むしろいい匂いですって言えばいい?いやダメか…

俺は焦りながらどうにか取り繕う。


「いやいやっ、そんな事ないって!!そういう所じゃないというか……」

「えっ……じゃあ、なに?」


何って言われても……おっぱいが当たるからって答えられないだろ!?


オドオドする俺をまたもやジーッと見つめてくる。

そして今度はジト目で俺の事を見始める。彼女は実に表情豊かだ。


「ねぇ……もしかして鷹村……私とくっついておっぱいが当たるのが恥ずかしかったりする?」————




次回:放課後の練習でパイタッチ…後編


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