第19話 お昼休みは、ほのぼの一緒にご飯タイム
狙い通りに彼女と時間差登校をした俺は、いつも通り一言も話さずボッチな時間を過ごしていた。そしてやってきた昼休み——
たった数日、霞と過ごしただけで俺は変わってしまっていた。
今、教室の席にひとりで座っているだけで胸にぽっかりとした穴が空いたみたいな感覚に襲われる。自分でも予想外。
俺の席は窓際の後ろから2番目。霞は中央の最前列。
距離にすればほんの数メートル。でも、その距離は今の俺には越えられない壁みたいに思えてくる。
つい目で彼女を追ってしまう自分がいる。友人と楽しそうにしている彼女を見て俺は勝手に落ち込んでしまう。昨日はすぐ隣にいたのに、今は遠い。
俺はそんな考えを振り払い鞄を持っていつも通り昼食を取ろうと教室を出ようとしたその時、教室に入ってきたクラスメイトと肩がぶつかってしまった。
「あっ………すま」
「すっ!!!すいません!!!鷹村くん!!」
「いやっ、別に……」
最後まで俺が言い切る前に逃げるように俺の前から立ち去るそいつ。
そして俺が教室から出ると、そいつと誰かの話し声が後ろから追いかけてくる。
(こえぇ……とりあえず謝っておかないと何されるかわからないからな、鷹村には)
(わかるわぁ……)
………知ってる?陰口って結構辛いんだよ?
俺は慣れた足つきでいつもの場所へ向かう。そこは校舎と校舎の間にある渡り廊下の近くにひっそりと佇むベンチだ。
ここは人通りも少なく草花に囲まれていて人目に付かない。ボッチ飯には最高の場所なのだ。そこで今日の昼飯を取ろうと腰掛けようとしたその時…
ブルルッブルルッブルルッ…
スマホが激しく震え出す。俺は少し驚き、焦りながらスマホを取りだし画面を見ると霞から着信のようだ。
「もしもし……霞?」
「恭介、どこにいるのよ?あなたがいないから探しているんだけど?」
…俺を探す?なんか用事あった?
「えっと、俺は……校舎と校舎の間にあるベンチの所だけど?」
「校舎の間のベンチ?たぶんあそこね……とりあえずこの電話切らないでくれるかしら?今行くから」
「へっ?お前来るの?」
俺は若干混乱しながらも霞を待っていると、数分後、鞄を持ち少し早足で歩きながら辺りをキョロキョロと見回す霞の姿が目に飛び込んで来た。
俺は彼女に駆け寄っていくとすぐに話し掛ける。
「どうした霞?なにか用事か?」
「恭介!…………」
間を置いて少し不機嫌そうに話し始める彼女に俺は少し息を呑む。そんな俺に彼女は綺麗なハンカチに包まれた何かを取りだし渡してくる。
「これ、お弁当…」
「…………弁当?」
「昨日のあまりで作ったんだけど今日の朝渡し忘れちゃったのよ」
「えっ…マジ?……わざわざこれ届けにきてくれたのか?」
「そうよ。それともお弁当より私が食べたかった?別に良いわよ?恭介が望むならあそこの茂みで……」
「おっおい!冗談はよせって!お前生徒会長なんだぞ!?」
嘘でしょ!?まさか学校でもこの調子でくるの!?流石に学校では色々マズいだろっ!?
「生徒会長だって人間よ?ヤル時はヤルわ」
「お前言い方よ……」
少しじゃれつくような表情で言ってくる彼女に俺は頭を抱える。気づけばいつものふたりの空気がそこにあった。
「まあいいわ……恭介、嫌じゃなければお昼一緒に食べない?」
「えっ?いいのか?」
「もちろんよ」
彼女はそう言っていつも俺が座っているベンチの方へと歩き出す。
そしてベンチの座面をサッと手で払うと彼女は腰を下ろす。俺もそんな彼女の隣に続いた。
早速彼女に貰ったハンカチに包まれた弁当の結び目をほどくと、中から見覚えのない青い弁当箱と箸が顔を出す。
ゆっくり蓋を開けるとそこには綺麗に並べられた美味しそうなおかずたちと輝く白米が顔を覗かせた。思わず嬉しくて笑みがこぼれてしまう。
「うわぁ旨そう!霞これ朝作ってくれたのか?ありがとな…すげぇ嬉しい」
「よかった、じゃあ食べましょう?」
彼女はふふっと微笑んでから箸を手に取った。そして、俺と彼女は弁当に手をつけ始めるのだった。
「やっぱり美味しいなお前の料理」
「ありがとう。じゃあ毎日ここで一緒にご飯食べるのはどうかしら?」
彼女から出た唐突な言葉に驚き、彼女の顔を凝視してつい箸が止まってしまう。流石にその提案は彼女に悪すぎる…そう俺は感じてしまったから。
「霞!?お前それ大丈夫か!?いつも友達と一緒だっただろ?」
「別にいいわよ、私が好きでやってることだから」
「でも……」
「恭介、あなた今日学校に来てから私と話すどころか、目も合わせてくれなかったわよね?」
俺の心に鋭く突き刺さったその一言。あえてそうしていた部分があったから。
彼女はそっと視線を下げ、悲しげな声色でぽつりと話し始めた。
「もちろん恭介が気を使ってくれてる事はわかっているわ。でもね、昨日まであんなに近くてあんなに優しかったあなたが……なぜか急に遠くに行ってしまったみたいに感じて少し寂しくなっちゃったの……だからせめてお昼くらい一緒にいてもいいでしょ?」
「霞………」
彼女の言葉に偽りなどない。俺の気持ちと彼女の気持ちは同じだったのに…
沢山の友人に囲まれて楽しく過ごしている高嶺の花と勝手に決めつけて、俺は彼女の気持ちを汲もうとしていなかったんだ。
俺は彼女の言葉に背中を押されて自分の本心を告げた。
「霞、俺も同じだよ……教室で会うお前の事が遠く感じてた……なんか壁があるみたいに感じちゃって、なんかごめんな……」
「そう……私たち同じだったのね……」
同じ気持ちだと思えるだけで気恥ずかしいが不思議と胸があたたかくなる気がする。
箸を静かに置き俺は少し緊張しながら彼女の手にそっと手を重ねた。
その瞬間、彼女は微笑むように俺の肩に頭を預けてくる。
「これくらいなら……学校でもやってもいいわよね?ご主人様?」
「ばか、ご主人様じゃねぇ……」
「ふふっ♡恭介、早く教室でも私に話し掛けてほしい。私待ってるから……」
「……」
陽だまりの中、彼女の髪から香る微かな匂いが胸の奥に優しく染み込んでくる。
俺は静かに目を閉じしばらくの間、彼女の心の温もりにただ身を委ねていた。
この日、生徒会長は俺の居場所になった——
次回:エロは控えて今更だけど、手を繋ぎたい
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奥付
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