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第16話 男女の夜って、まあそうなっちゃうよね。前編

温かい浴槽のお湯に顔まで沈めて、今日の疲れをじんわりとお湯に溶かしてゆく——


夕食を終え、霞との何気ない会話で楽しい時間を過ごした俺は気づけば夜もすっかり更けていた。

そして今、あまり掃除していない汚れた浴槽を彼女に使わせるわけにはいかないと思い、掃除を兼ねて俺が先に入っているというワケだ。


水垢はおろか髪の毛1本も見当たらない位に掃除した俺は達成感に包まれながら天上を見上げる。


「なんかいいなこういうの」


考えてみればここ数年、学校でも家でもずっとひとりで時間を余らせていた。

何をするわけでもなくただそこにいるだけ、それが嫌で俺はバイトに打ち込んだんだ。バイト先だけは居場所があった。人と話せた。たぶん俺は寂しかったんだろう。


俺は母方の親に引き取られて育ったいわゆる片親ってやつだ。

ただ俺の母親は俺が高校に進学してすぐにちょっと色々あって…それ以来ずっと病院暮らしだ。まあ暗い話はここまでってことで。


疲れと共に暗い記憶もお湯に溶かしきった俺は、風呂の栓を抜いて全てを流しお湯張りボタンを押すと響く機械音を背に浴室を出た。


リビングに戻るとソファに腰掛けていた霞が話し掛けてくる。


「お風呂、張り直したの?私にそんなに気を使わなくていいのよ?」

「気を使うっていうか……せっかくなら綺麗なお湯のほうが霞もいいだろ?」

「でも勿体ないわよ?」


彼女は本当に家庭的な感覚を持っていると実感させられる。彼女の家柄などは全く知らないし、借金の件もあって触れるの避けているがたぶんしっかりしている家庭なんだろう。少し不満そうな顔をした彼女はこう続ける。


「次からは恭介と一緒のお湯でいいから。もし張り直しなんかするなら……」

「張り直しなんかしたら……?」

「あなたと一緒にお風呂入るわ、毎日」


………はい。すいませんもうしません……逆にお湯張りすれば彼女と一緒にお風呂に?なんて考えはいかんぞ俺!!


「わかったって!じゃあ基本は霞が先に風呂入ってくれていいからな!」

「そう、私を先にお風呂に入れて…そのあとそのお湯で恭介はなにするのかしら?」

「ばっ、バカ!何もしないって!」


彼女はいたずらにクスッと笑うとソファから腰を上げる。たぶん俺をからかっているんだろうが不思議と腹は立たない。そんな彼女の言葉一つ一つになにか温かいものを感じるから。


「じゃあお風呂頂くわね」

「ああ、タオルは洗面所に置いてあるしシャンプーとかは好きに使ってくれ、もし欲しい物とかあったら明日一緒に買いに行けばいいよな?」

「明日……ふふっ♡そうね」


どことなく嬉しそうに浴室に向かう彼女。俺はそんな彼女の背中をボーッと見つめながら彼女をそうさせた原因に頭を悩ませるのだった。



——————



霞が風呂に行ってから30分程、俺はソファに座りやはり悶々としていた——


以前ラブホでこの状況になった時は、どこからか聞こえた喘ぎ声と部屋の雰囲気が問題だと思っていたのだがそれは違ったようだ。


彼女が浴びるシャワーの音、浴槽に浸かる音、ふんわり漂ってくる香り。それらが合わさるとこうなるみたいだ。頑張ってTVの音などで気を紛らわそうとしたがそれは失敗に終わっている。


先ほどからはドライヤーの音が部屋に響き渡っている。

ほどなくしてその音も止み、廊下から彼女の足音が近づいて来た。


「ふぅ……お風呂気持ちよかったわ。恭介、お湯は貯めたままでいいかしら?」

「ああ、そうだなお湯は…………!?」


何気なく彼女の方に振り返った俺は激しく後悔した。油断をして心の準備をしていなかった。彼女は以前言っていたではないか、超薄着派だと……


「霞!?お前その格好!!」


俺は股間が強く反応しそうになるのをどうにか堪える。

そうなるのも無理はない。彼女は上に超薄手の黒いネグリジェ一枚だけを羽織り、下は何も履かず下着のみというあられもない姿だったのだから……


「どうしたのかしら?これは私の寝間着よ?」


不思議そうにこちらを見つめる彼女。


うん、そうだよね。知ってた……童貞の俺が全部悪いんですよね、そうですよね……


「そっそうだけど……下とかその……」

「ん?下着が好みじゃないのかしら?Tバックがよかった?それともノーパンかしら?あれスースーするから苦手なの、まあ恭介が望むならそうするわ」

「いやいやいやそこじゃなくって!!………はぁ……」


ちがう違う、そうじゃない……


でもこれが彼女の普通なのだ。同棲とは互いに歩み寄る必要があるはず。

俺は彼女をどうにか受け入れようと、どうにか暴れ出しそうな自分の()()を抑え込む。


「恭介、お水いただくわね」

「ああ。お茶とかがよければ冷蔵庫好きに漁ってくれ」

「ありがとう」


彼女はグラスに水を注ぐと、それを持って俺の座っているソファまでトコトコと歩いてくると俺の隣にゆっくりと座った。

ふわりと良い香りが俺にまとわりついてきて、誘われるようについ彼女へと視線を向けてしまう。


………!?!?!?


目に飛び込んで来たのは彼女のネグリジェのとある部分。

重力に逆らってぷるんと張りを保った彼女の胸の大きな膨らみ(おっぱい)

その双岳(おっぱい)の頂点辺りにぷくっとした小さな膨らみがあるのだ…


おいおいおい勘弁してくれ……これってノーブラ特有の乳○ポッチじゃないの!?

全裸よりも確実にエロいその光景に目が離せなくなってしまう。


「恭介?どうしたの?さっきからどこを見て……」


しくじった…彼女が俺の目線の先を追ってしまった…

彼女は口元をにんまりと三日月のように歪めると俺と太腿が触れるほどの距離に近寄ってくる。


「恭介……私のおっぱい見てたでしょ?」

「………いやっ……」


痛いところを突かれて俺は思わず彼女から視線を逸らす。

が、彼女は容赦なく俺の頬をつかむとグイッと胸の方へと顔を向けさせてきた。

そしてネグリジェの胸元を人差し指で軽く押し下げ、白く柔らかそうな彼女のおっぱいを見せつけてくる。


「霞っ!ちょっと!?」

「へぇ…こういうのが好きなのね?ノーブラで乳首が浮き上がってる感じとか。恭介結構むっつりなのね」


むっつりなのは否定しない…


「いいわよ、好きなだけ見て……」

「好きだけってお前!?」


胸元から沸き立つように香る彼女の香りと、しっとりとした彼女の誘惑に負けそうになるのをどうにか堪えて俺は顔を上げる。


とにかくこのままのこの話題を続けると多くの重大な過ちが起こる気がする。

俺は隙をみてどうにか話題を変えようと試みたのだった——




次回:男女の夜って、まあそうなっちゃうよね。後編


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