第12話 色々ご奉仕させてもらわなきゃ気が済まないらしい
霞との濃い一日を終えた俺は、あの後早速彼女にお金を振り込んだ。
彼女も少し用事があるとの事でラブホを出た後、俺たちはあっさりと解散した。
そして二日後の月曜日の放課後——
ブルルッ
俺のポケットのスマホが震えた。
普段バイト先以外から連絡がくる事なんてめったにないボッチな俺は少し驚きながらスマホを取り出す。そこには柴乃宮霞からのメッセージという文字が表示されていた。
【霞:生徒会の用事があるからちょっと教室で待っててもらえる?】
俺はそんな何気ない一文を見て俺の顔は自然と緩む。高校生活3年目で初めて個別でメッセージを貰い、しかもその相手が霞なのだ。
ただ教室で彼女を待つのは色々と迷惑が掛かる可能性がある。
高嶺の花で皆の憧れの存在である生徒会長の彼女が、不良と噂されているボッチの俺と待ち合わせなんかしてたら彼女の信頼は地の底に落ちてしまう。
というかそもそも何か今日約束した覚えがない。用事はなんだろう?
俺は彼女へ返信をする。
【恭介:待つのはいいけど、流石に教室は霞に迷惑かかるから、学校近くのカフェにいる。これがURL】
【霞:わかった、できるだけ早く行く】
【恭介:急がなくていいからな?ちなみに、今日何かお前と約束あったっけ?俺が忘れてたらごめんな。】
しかし、そのメッセージには既読が付かなかった。
まあ霞も忙しいのだろう。俺はそこまで気にせずにスマホをしまい、とりあえずカフェへと向かった。
——————
カフェに到着し彼女を待つこと30分程。飲み物ももうすぐ飲み終える、そんな時に俺の背後から声が掛かった。
「おまたせ恭介」
俺はゆっくりと声の方向へ振り返る。そこにはいつも通りの美しい顔に優しい笑顔を宿した霞が立っていた。
「お疲れ。何か飲むか?」
「そうね……今日はやることもあるから、恭介が飲み終わってるならもう行きましょう」
「ああ……そっか」
…やることってなに?というかこの待ち合わせの目的はなんなの?
俺は疑問に思い彼女に聞いた。
「なあ霞。俺たち今日何か約束してたっけ?」
その言葉に霞は少しムスッとした表情になり、冷たい視線と共に俺に言葉を浴びせてくる。
「なにって恭介、あなたは私の1年を買ったのよ?私はあなたのモノなの。約束もなにも奴隷のように付き従う義務があるでしょ?」
「だ・か・ら!!奴隷っておまえ!?いいって!そこまでしなくても!」
「あなたがよくても私がよくないのよ。奴隷の私はご主人様に色々ご奉仕させてもらわなきゃ気が済まないわ!!」
ゆったりとしたジャズが流れる店内に響き渡る奴隷とご奉仕というエロいワード。しかもそれを容姿端麗な巨乳女子高生が《《大声》》で言い放ったわけだ。
カフェの空気が一瞬で凍った気がした。
「霞!!声!!声デカいって!!!わかった!わかったから落ちついて!!」
もうこの生徒会長どうにかして……めちゃくちゃ周りから視線が痛いんだけど!?しかもなんで少しうっとりした表情してんの!?
俺は彼女を買ったとはいえ、それは大義名分であり俺は彼女に何かを押しつけたり強要するつもりはない。ただ彼女が見知らぬ他の男と食事に行ったり、抱かれたりする事がなければそれだけで俺は満足だ。
「そう、わかればいいのよ。じゃあ行きましょ」
俺は手元の飲み物を一気に飲み干すと、そそくさと逃げるように彼女の後を追いカフェを出た。はい、このカフェもセルフ出禁です。良いカフェだったのに……
カフェを出たはいいがそもそもこれから何するかも決めていない。
というか彼女の目的も不明。どうしようかと考えながら彼女にも聞いてみる。
「それで霞、これからどこか行くのか?やることあるって言ってたけど」
「ええ、まずは家に荷物を置きに行きたいわね」
「荷物?」
ふと彼女の方を見ると学生鞄とは別に大きな鞄を持っていることに俺は気づく。
荷物とはそのことだろう。という事は、彼女は一度自分の家に帰って荷物を置いてきたいということだろう。だったら別に俺と合流しなくても良かったのでは?でも彼女なりの配慮って線もあるしな…
そんな考えが頭を巡る。
「一旦家帰るのか?」
「ええ、流石にこれじゃ動きにくいもの」
「じゃあ一旦ここで解散って感じだよな?」
「えっ?何を言ってるのかしら?これからあなたの家に行くのよ?」
「………………へっ?なんて?」
俺は全くもって理解が出来ない、自分の考えを遙かに超えた彼女の返答に素っ頓狂な声を上げた。
「だからあなたの家に行くって言ってるのよ」
いやいやいや。さも当たり前みたいに『行くって言ってるのよ』、じゃないのよ…
「なんで俺の家に来るんだ……?」
「あなたの家に一緒に住むからに決まってるじゃない。あなたは私の1年を買ったのよ?それなのに日々一緒にいることも出来ないなんて私が詐欺をしてるみたいじゃない。だから住み込みでご奉仕してあげるわ♡」
急に顔をグイッとこちらに寄せて色っぽい表情で見つめてくる彼女。可愛い…
でも俺、それ、いまじゃない。
俺は目の前で起ころうとしている現実を受け入れられず、ありきたりな驚きの台詞を投げてしまった。
「ごっ、ご奉仕っておまっ……てか俺ん家に住むの!?」
「ええ、だって一人暮らしだって言ってたじゃない」
「そうだけどお前……健全な高校生が急に同棲ってマズくないか!?」
「なにが健全よ。私をお金で買って、私のファーストキス奪って、裸を見て、おっぱいにキスマークまで付けたクセに」
「いやいや間違ってないけど……でも間違ってるだろ!?」
「…………だめなの?恭介……家庭の事情があるなら、私は諦めるわ……」
急に顔を伏せて悲しい表情になる彼女に俺は焦りを覚える。
彼女が住むことに問題があるわけじゃない。いや道徳的に問題があるがキャパシティ的にはって話。確かに1人暮らしだし。
そもそも俺は彼女を買った時に覚悟を決めたじゃないか。同棲くらいたいしたことない……
そんなワケあるか!!彼女と一晩一緒に寝ただけであんな感じになるんだぞ!?耐えられるのか俺は!?この欲望と煩悩に……
そんな事を考えている間にも、黙ったままどんどんと表情を曇らせてゆく彼女を見てる事など俺には出来なかった。
「わかったよ。お前もタダで何か貰うのは気分悪いもんな……俺ん家汚いけど、大丈夫か?」
まず一旦受け入れてから考えよう。話はそれからだ。そう自分に言い聞かせる。
俺の一言に彼女の表情はみるみる明るく変わってゆく。そして花が咲いたような笑顔を俺に向けて嬉しそうにこう言った。
「ありがとう恭介!今日からお世話になるわ!」
そんな彼女を見て俺も嬉しくなってしまう。たぶんにやけている。それが恥ずかしくて言葉で誤魔化した。
「じゃあ、俺ん家はこっちだから」
俺は自分の家へと彼女を案内を始めるが、どうしても彼女が重そうに持つ大きな荷物が気になってしまう。
「なぁ……その荷物、重いだろ?俺が持ってやるから貸してくれ」
「えっ……悪いわよそんなの」
「いいんだよ。こういうのは男の仕事だろ?ほらっ」
俺は彼女の肩に食い込んだ鞄の持ち手を持ち上げると自分の方へと移す。
ズシリと重いその荷物。彼女もここまで来るのも大変だっただろう。
「あっ……ありがとう、恭介」
「いいんだよ……重かっただろ?わざわざここまで持ってこさせて悪かったな」
少し照れながらお礼を言う彼女。
俺はこういう小さいところからアピールをちゃんとしていこうと決めたのだ。
霞の彼氏になるためにはこれくらいは出来なければ釣り合わない。
そもそもどれだけ努力しても釣り合わないかもしれない。でも1年という時間の中で少しでもそこに近づきたい。
俺たちは傾く夕日を浴びながら肩を並べて同じ家へと向かったのだった——
次回:ふつつか者ですがよろしくお願いしますご主人様♡
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