#6
「──警察が、瑞喜に話があるといって来た」
箸を置きながら瑞喜の父親は言った。
「いつ?」
「今日の昼間だ。せっかく久々に帰ってきたのに仮眠の邪魔をされた。登校中だと伝えたら、また来るといって戻っていったよ」
「……そう」
「思い当たる節があるのか」
疲労のせいか、父親の声には棘が生えていた。瑞喜はわずかに背筋を強張らせながら、いいえ、と言って首を振った。瑞喜が紫苑のいじめを知ってから一月以上が過ぎつつあった。顔色から察するに、瑞喜は業を煮やして警察に相談してしまったようだった。
「しっかりしなさい。大事な時期じゃないか。来年は大学受験だろう。いちいちお前の行いを問うつもりはないが、あいにく私も昔のように面倒を見てやれる状態ではないんだ」
「ごめんなさい。お父さんに心配をかけるつもりはなかったの。巻き込まないように気を付けるから……」
「私の心配など要らない。自分の将来を第一に考えなさい。それと、つるむ相手は選ぶことだ。くだらん同級生に現を抜かしていると、いつか私のように足元をすくわれるぞ」
苛々と父親は食後のコーヒーを啜る。夢の中に生身の父親が姿を現したのは今度が初めてだった。相変わらず桜野グループは債務整理や事業売却に追われている。多くの社員が職を失い、不採算の工場や店舗も次々に閉鎖され、世間の風当たりは酷くなる一方だった。
そうね、と瑞喜はつぶやいた。
仕事に追われ、憔悴する父親の目には、紫苑も“くだらん同級生”に映るのだろうか。黙り込んだ瑞喜はそう問いたげだったが、同時に、すでに答えを手にしているようでもあった。
翌日、紫苑は高校に来なかった。
代わりに刑事が職員室を訪れた。
陽の傾きかけた放課後のことだった。昨日、在籍する生徒への暴行事件があったと通報を受けたが、何か知っているか。そう問われた校長たちは、異口同音に「そんな事実はない」と答えたらしい。職員室でのやり取りを盗み聞きしていた同級生たちが口々に盛り上がるのを、瑞喜は問題集を解きながら聴いていた。
大丈夫だよ、あいつら何も言わないよ。だって自分たちの評価に関わるもん。洛陽の先生ってものすごく給料いいんでしょ? せっかく好待遇の場所で仕事できてるのに、自分のクラスの生徒がいじめで不登校になりましたなんて、怖くて誰も言い出せないよね。
アイツ、来ないね。
来るわけないじゃん。いまごろ腰が立たなくなってるよ。
聞いた? 隣のクラスのあいつ、あのあと三回もヤったんだって。
あんな貧相な身体によく勃つよねぇ。
あー気色悪い。顔も見たくない。もう一生、あのボロ家から出てこなきゃいいのに。
──漏れ聴こえる断片的な情報に、同級生たちの交わす冷笑に、にわかに私の胸に不安が湧き起こったそのとき。まさに同じ不安に突き当たったのか、がたんと音を立てて瑞喜は立ち上がった。「出た」と誰かが小ばかにしたような声を上げた。寄り集まった同級生の冷ややかな視線が、立ちすくんだ瑞喜を串刺しにした。
「桜野さんだよね? こないだのこと警察にしゃべったのって」
「だったら何だっていうの。あなたたち、北山さんに何したの……っ」
「桜野さんには関係ないよ。ねぇ?」
「関係あるわ! 私だってこのクラスの生徒よ! あなたたちのやってることは本当に目に余るわ。ずっと机を並べて一緒にやってきた同級生を動物みたいに痛めつけて、それで良心は少しも痛まないの!?」
「痛むわけないじゃん。同じ身分じゃないんだから。桜野さんだって、うちらのこと同じ身分だと思ってないでしょ?」
へらりと笑い返され、瑞喜は言葉を失った。ここぞとばかりに詰め寄ってきた同級生たちが「私らがどんだけ桜野さんに気を遣ってきたと思ってんの?」と凄んだ。
「みんな、桜野さん家みたいにぬくぬく暮らせるような身分じゃないんだよ。私らもいつかはどこかの財閥に使い潰されて、身体を壊して死んでゆくんだ。同じ身分だとか言って謙遜するなら、あんたたちの持ってる資産とか肩書きとか、少しはこっちに分けてよね!」
まざまざと明らかになった同級生たちの敵意に、瑞喜は狼狽した。下校をうながす校内チャイムの音が廊下に響いている。息を荒げ、反論の言葉も持たずに、瑞喜はカバンだけを取って教室を走り出た。あーあ、これであの子も来なくなっちゃうんじゃないの──。嘲り笑う同級生たちの声を背中の向こうに聴きながら、瑞喜は奥歯を噛みしめていた。
飛び込んだのは職員室だった。
居並ぶ教員たちの脇をかすめ、瑞喜は担任に詰め寄った。北山さんの住所を教えてほしい、様子が心配だ。そう迫る瑞喜に、担任は「妙なことを言わないで」と眉を曇らせた。面倒事を持ち込まれたくないのが明らかだった。
「あのね桜野さん、あなたも模範生徒なら少しは立ち居振る舞いを弁えなきゃだめよ。警察に話したのもあなたなんでしょう。そのうえ個人情報を持ち出そうだなんて、模範生徒の名が廃って──」
「なら、もう模範生徒なんか辞めるわ」
瑞喜は担任の胸倉を掴み上げた。担任が声にならない悲鳴を上げたが、耳も貸さなかった。
「御託はいいから今すぐ教えなさい。大人しく吐かないと父に連絡してあなたを懲戒免職にする。私の身分、わかってるでしょう?」
国内に数十か所以上も現存するといわれる新民集落は、その多くが人目を避けたような山奥の盆地や、災害の絶えない川沿いの低地に位置している。いつか私が訪れた紫苑の故郷も、丘陵地帯の物陰に隠れるように家々が軒を連ねていた。最寄りの鉄道駅からは徒歩で数十分もかかる。瑞喜は躊躇なくタクシーを捕まえ、目的地を告げて後部座席に沈んだ。
紫苑は強姦被害に遭ったようだ。
いつ、どこで、誰に犯されたのかは定かではない。たったひとつ確かなのは、それがいじめの一環であることだけ。
私のせいなの? ──運転手にも聴こえないくらいの声で瑞喜はつぶやいた。いじめを止めに入ったこと、教師や警察に相談したこと、紫苑に優しく振る舞ったこと。紫苑を想って取った行動の数々が、かえって火に油を注いでしまったのか。少なくとも目の当たりにした状況証拠は、ことごとく瑞喜に不都合な可能性を示していた。
集落の入り口に瑞喜を捨ててタクシーは去っていった。日没とともに小雨が降り始め、家々はひっそりと静まり返っていた。紫苑の暮らす平屋の家には電灯すら点いていない。手にしたスマホの灯りを頼りに、瑞喜はインターホンを押し、反応がないのをみて玄関に踏み込んだ。鍵はかかっておらず、ドアの先には鬱蒼とした廊下が続いている。
「北山さん、いるの」
瑞喜の呼びかけに答える声はない。
代わりに、がさりと物音が響いた。
肩を跳ね上げた瑞喜は、しかし気丈にも廊下を進んでゆく。「北山さん……?」と呼びかける声が震えている。不意に、狭い居間の奥から嫌な臭いが漂ってきた。おそるおそる居間の隅を覗き込みながら、瑞喜はスマホのライトを暗がりに向けた。
包丁を手にした紫苑がそこにいた。
ぐったりと壁の脇に座り込み、虚ろな目で瑞喜を見上げていた。
「瑞喜……ちゃん……?」
「何してるの!」
叫んだ瑞喜がスマホを放り出した。崩れ落ちた紫苑の胸元は赤黒く染まり、流れ出した血でシャツが光っていた。弱々しい微笑みを瑞喜に投げかけながら「ごめんね」と紫苑は言った。その四文字さえ、ひどく掠れていた。
「わたし、もう、だめみたい」
「まさか自分で刺したのっ……。駄目、もうしゃべらないで。今すぐ救急車を呼ぶわ!」
「よばないで」
取り落としたスマホを拾い上げようとする瑞喜を、紫苑は首を振って制止する。その口元から血が噴き出して、紫苑の息遣いはいよいよ荒くなる。
「これでいいの。もっとはやく、こうしておけばよかったの。わたしのせいで瑞喜ちゃんにも、たくさんめいわくかけちゃった」
「迷惑なんて……! ねぇ、お願いだからしっかりしてよ。あなたがいなくなったら私、あの高校で独りぼっちになってしまうのにっ……」
「ひとりぼっちじゃないよ。みんな、みずきちゃんのみかただよ」
紫苑は苦しげに笑いかけた。その濡れた手が、おずおずと包丁を差し出した。
「あのね……。わたし、うまく心臓をさせなかったの。いたくて、くるしくて、でも死ねないの。どうせ死ぬならみずきちゃんの手で死にたい。わたしのこと、これで、ころして」
引きつった音を立てて瑞喜は息を詰まらせた。
おねがい、と紫苑が畳み掛ける。今にも力の抜けそうな手が、瑞喜の手のひらに包丁を押し付けた。がくがくと足を震わせながら瑞喜は「無理よ」と叫んだ。あふれ出した光が足元へ散らばり、暗闇に吸い込まれてゆく。
「そんなこと……私……っ」
「みずきちゃんにしかたのめないの。どのみち、わたし、もうたすからないから」
くずおれる瑞喜を前にしても、紫苑の意志が揺らぐことはなかった。苦悶に歪んだ瑞喜の顔から、ぼろぼろと音を立てて淑女の仮面が剥がれてゆく。いや、いやだ、あなたに死なれたらどうすればいいの。嘆き取り乱す瑞喜を前に、紫苑は弱々しい息をするばかりだ。
途方もない時間が流れてゆく。
とうとう観念したのか、おもむろに瑞喜は包丁を握り直した。
その切っ先が、紫苑の左胸を捉える。
紫苑は安心したように目を閉じた。
「ありがとう、みずきちゃん。……わたし、みずきちゃんのともだちでよかった」
瑞喜は歯を食いしばった。突き刺した刃が沈み込むように紫苑の胸を切り裂き、重たい手応えが手のひらにまとわる。紫苑の細い身体は魚のように跳ね、口からは泡のように鮮血を噴いた。包丁を引き抜く頃には目の光が消え、紫苑は動かなくなっていた。
包丁を手に、瑞喜は茫然と座り込んだ。
力の抜けた紫苑が瑞喜を見上げている。
どのくらい、そうやって互いを見つめていただろうか。ようやく身体を起こし、よろめくように立ち上がったとき、瑞喜の顔は真っ暗だった。カーテンの隙間から月明かりが差し込んで、わずかに庭の景色が見える。その片隅に転がっている古いガソリン用のポリタンクを、瑞喜の暗い瞳は虚ろに見つめていた。瑞喜が何かを決心しようとしているのを、その瞬間、私は理解してしまった。
だめ。
それを手にしちゃだめ。
あなたは背負う必要のなかった罪を、生涯にわたって背負うことになる──。
私の引き留めが響くことはなく、ゆらり、瑞喜は歩き出した。血に濡れた手が滑り、包丁が足元に落ちて耳障りな音を立てた。調書によれば、このあと瑞喜は深夜の高校敷地内に侵入し、保管されていた給油用のガソリンを寮にぶちまけて放火したのだ。空前絶後の大惨事を引き起こしに向かう瑞喜の足は、もう誰にも止められない。瑞喜の穏やかな瞳が、その背中を静かに見つめるばかりだ。
ぐんと視界が奥の方へ引っ張られた。
ああ、また夢から醒めてしまう。
何もしてあげることのできなかった瑞喜が、一歩、一歩、私から遠ざかってゆく。
東京の空は雨模様だった。
寝不足に目をこすりながらスーツに袖を通し、私は家を出た。すっかり通い慣れた高瀬先生の事務所が、雨の向こうに霞んでいた。高瀬先生はいつものようにソファでコーヒーを啜りながら、たどり着いた私をみて「ひどい顔だね」と眉を曇らせた。
「緊張で眠れませんでしたか」
「……別に、そういうわけでは」
「羽田さんが肩肘を張る必要はないですよ。私の質問事項をしっかり聞いて、勉強してくれればそれで結構だからね」
はい、と私は頭を垂れた。空のマグカップを流しに置いた先生が、では行きましょうか、といって上着を羽織り始めた。
法廷に不審物が届いたことによって順延になった第四回公判は、結局、招喚するはずだった証人の都合がどうしてもつかず、被告人質問への変更を余儀なくされた。被告人質問とは、犯罪当事者の被告人を証言台に立たせ、本人の言い分に耳を傾けることだ。これだけの大事件ならば普通、証拠調べ手続きに十数回の公判を費やすのだが、今回は肝心の瑞喜に起訴状の内容を争う気がないこともあり、審理のペースは不気味なほどに順調だった。
先生とともにタクシーに乗り、裁判所を目指す。すっかり通い慣れた官庁街の光景を見つめる目が、不安と眠気でキリキリ痛い。瑞喜は今頃、護送車に乗って拘置所を出た頃だろうか。昨夜の夢が脳内でリフレインして、吐き気が込み上げて、私は必死にそれを嚥下した。
許されるのならば私が瑞喜に質問したい。
尋ねたいことがたくさんある。
あなたは同級生を刺し、寮に火を放ち、未曽有の大量殺人事件を起こした。その真意をあなたが語らないから、世間はあなたをいじめの主犯と断定し、身勝手に校友を手にかけた悪魔の人殺し令嬢だと思っている。きっと今も、あなたを責めるデモ隊の声が聴こえるでしょう。街頭ビジョンに映るテレビのアナウンサーが、あなたの罪を非難しているでしょう。私も、その片棒を愚かに担いでしまった一員だ。
こんなことが罪滅ぼしになるとは思わないけれど、それでもいい。どうか、あなたの口から、あなたの見たものを話してほしい。あなたの味わった孤独を、無念を、北山紫苑への素直な思いを明かしてほしい。そこから先はあなたじゃなく、大人の闘う領域だ。
人類は法という規範で自らを縛り、動物であることを辞めた。感情よりも理性で結び付く秩序を選び、秩序に基づく社会平和を望んだ。その秩序や平和を子どもたちが信じられないなら、それは大人の問題に他ならない。大人を信じられない社会を、私たち大人自身が作り上げたのだ。この世界が少しでも公正であるために、正しさが強さに潰されないために、今度は私たちが闘わなければならない。たとえ、あなたがもう私たちを信じてくれなくても。
極限のストレスで胃が引き締まり、私はうずくまって痛みを我慢した。裁判所に着いたらトイレに行こうと思っていたのに、その裁判所がなかなか見えてこない。「ずいぶん渋滞していますね」と、先生が運転手に話しかける。
「向こうに路駐が一台見えますね。あいつのせいでしょう。あなたがた急いでるの?」
「いえ、開廷時間に間に合えば十分です。あと一時間ある」
「冗談じゃない。一時間もかかったらこっちが敵いませんよ。商売あがったりだ」
けらけらと運転手が笑った。釣られて私も少し笑った。はずみで胃の痛みが少し和らぎ、視界が鮮明になる。また少し渋滞の列が動いて、路駐の乗用車が次第に見えてきた。迷惑な路駐の斜め後ろでタクシーは止まった。十メートルほど向こうの大きな交差点を、横向きに車が流れてゆく。そのなかに、赤いパトランプを載せたミニバンが見えた。ああ、誰かが護送されているのだなと、ぼんやり思ったそのとき。
路駐の乗用車が急発進した。
ゆっくりと交差点を横切っていた護送車に、乗用車は猛スピードで体当たりした。
轟音が耳を劈いた。乗用車が爆発を起こしたのだ。吹き飛んだ護送車が横転しながら信号機にぶつかり、ひしゃげた車体から火を噴くのを、後部座席から私は目の当たりにした。
「──なんてことだ!」
腰を浮かせた先生が、スマホを取り出して緊急通報を試みている。いても立ってもいられず、私は勝手にドアを開けて外へ飛び出した。冷たい雨に打たれて胃の痛みは消えた。
待ちなさい、と先生が叫んだ気がする。
ばしゃばしゃと水たまりを踏みしめ、私は交差点に出た。突っ込んだ乗用車は交差点の真ん中で炎上し、交通の流れは完全に遮断されている。集まってきた人々が右往左往するのを横目に、私は護送車のもとへ駆け寄った。ひどい煙で視界もおぼつかない。
「大丈夫ですか!?」
叫びながらドアをこじ開けると、すでに車内にも火の手が回っていた。助手席は炎に呑まれ、運転席には血まみれの刑務官が突っ伏している。思わず口を覆い、込み上げる悪寒を我慢しながら、歪んだ後部座席のドアを力任せに引き開ける。折り重なった後部座席の残骸の向こうに、誰かの息遣いが聴こえた。
「桜野さんっ……!」
私は悲鳴を上げた。
力尽きた女性刑務官の下に桜野瑞喜がいた。まだ息があるのか、かすかな返事が返ってくる。まさか、路駐の乗用車は瑞喜が護送されているのを知っていて、待ち伏せして自爆テロを図ったのか──。悠長に推理する余裕もなく、残骸の隙間へ無我夢中で手を差し伸べる。
「しっかりして! いま助けが来るから。あなたは無事なんだね?」
「……無理よ。助けなんか、間に合わない」
喘ぐように瑞喜は言った。もうもうと立ち込めた煙が視界を塞ぎ、瑞喜の姿が見えなくなる。助手席を飲み込んだ火の手が瑞喜の身に迫っている。私は焦りを深め、「バカなこと言わないで!」と必死に呼びかけた。
「知ってるでしょ。私、手錠されてるし、隣の刑務官と腰縄で繋がってるの。いくら逃げたくたって、ここから動けないわ」
「お願い、そんなこと言わないでよ。きっとすぐに消防が来るから……!」
「これでいいの。これでやっと、地獄であの子に頭を下げられる」
瑞喜の声色はひどく穏やかで、騒ぎ立てる私の無力さがいっそう浮き彫りになる。ぱちぱちと火の爆ぜる音を聴きながら「これでいいの」と瑞喜は畳み掛けた。その穏やかな眼光に既視感を覚えて、私は言葉を詰まらせた。
「寮の生徒たちもこうやって死んでいったのだから因果応報よ。危ないから、もうここから離れて。……あなたがこうして駆けつけてくれたことだけは、きっと忘れないわ」
それが、私の聴いた瑞喜の最期の言葉になった。パトカーのサイレンが消え、駆け寄ってきた警官たちが私を護送車から引き離した。危ないと誰かが叫んだ拍子にボンネットが吹き飛び、大破した護送車は紅蓮の炎に包まれた。真昼の都心に死の狼煙が黒々と立ち上った。激しい雨が地面を叩き、座り込んだ私を打ち据え、炎はいよいよ勢いを増していった。