はじまり
「どうしても出て行くの?」
聞きながら塔子はドアの鍵を開けて中に入った。
「まあね。だってもうあれからずいぶん経つからさ。大丈夫かな、とも思うし。」
後ろから大きい影がついてきてそう言った。
「健二は楽観的だからさ。」そう言いながら中をきょろきょろ見渡すと
「じゃなきゃ今、改装できないわよね~」とニヤニヤした。
落ち着いたアイボリーの壁にこげ茶のテーブルにチェアー。カウンターテーブルも奥行きが大きめに
作ってある。天井からはアンティーク風(健二はなかなの合理主義者なのである)のランプがバランスよく配置されてるし、よくみるとチェアーというより、椅子という感じで大き目につくってある。
カウンター席にすすめられて座ってみるととても居心地がいい。
「とっても素敵ね。」塔子は健二を振り向いてにっこりした。
「お姉ちゃんがそう言ってくれれば、もうなんにも心配ないね。」今まで緊張していたらしい目がやっとゆるんだ。
「それで本題に移るけれども・・・。」
「私は一人で暮らすのは恐いから嫌だってば。」
「相談なんだけど、紹介したいコがいるのよね。」
ちょっと、と奥に声をかけるとロングヘアーの女の子が入ってきて、コンニチハと小さい声が聞こえて
きた。
「ウチではきらりん、ていうんだけど、このコと一緒はどうかな、と思って。」
目を伏せた彼女をちらりと見て
「このコの意見もあるでしょう。それにもし二人でいるところにアイツが入って来たら、だれが止めて
くれるの?」
「それは大丈夫。もう説明してあるし。それにこのコ昼間は男の子だからさ。」と言うなり、ひ~かかったあ~と大笑いを始めた健二に目を丸くしてると、きらりんなる彼(?)がグラスに飲み物を入れて
出してくれた。ありがとう、と言って受け取ると彼(?)はにっこりした。
まだひ~ひ~笑ってる健二の肩をひっぱたき、黙らせると
「じゃあ私にも説明してくれるのよね!」