小さな男の子。
俺の名前は、来栖陸翔。
これは、俺が22歳ぐらいの話しなんだが。
その日は、俺は夜勤の仕事から帰ってきた。
高校を卒業して、就職をした俺は今だに実家に暮らしている。
彼女もいるし、それなりに給料は貰ってる。
何不自由していない。
うちの家は、母子家庭だったから、その日親は仕事で顔を合わすことはなかった。
いつもの様にビールと帰りに買ったコンビニ弁当を食べて、ベッドに入った。
外は明るい。
俺の地元はかなりの田舎だ。
農家だらけだし、しかも俺の家は山の中なので静かだ。
なので黒いカーテンを締め切ればほぼ夜になる。
身体は正直なのか夜勤をした朝は、身体が眠りたいと言っているのがわかってくる。
俺は、そのまま瞼を閉じた。
ガチャガチャガチャガチャガチャ
俺の部屋のドアを開けようとする音がして目が覚めた。
俺の部屋は、鍵がついていて開かないようになっている。
だが、たまに俺の親がそういうことをするので、帰ってきたのかと思い返事をした。
「母ちゃん、帰ってきたのかー?何か用?」
睡眠を邪魔されて少し怒った俺は、ベッドに入ったまま、声をあらげて言った。
返事が返って来ない…
時計を見ると14時過ぎを指している。
一度起きようと思い立ち、身体を起こし部屋の鍵を開けリビングに向かった。
家の中は、太陽の日差しで眩しい。
お酒がまだ残っているのか、少し足取りがおぼつく。
「母ちゃん、さっきのなんだよ。」
リビングに入るとそこには、母の姿はなく、
人の気配もどこにもなかった。
ん?
夢だったのかなと、少し考えて玄関前のトイレに向かった。
玄関前まで行き、ふと玄関のドアに目をやった。
玄関のドアは一部ガラス張りになっていて、スモークフィルムが張ってある。
そのドアガラスの向こうには、うっすらと子供の影が浮かんでいた。
俺は、ゾッとしたが、何かのいたずらの可能性もあると思い、思いきって玄関のドアを開けた。
ガチャ
「おい!誰だよ!」
そこには、誰もおらず目の前の駐車場には、使っている母の車もなかった。
いや、寝ぼけてるだけだな。
そう思うことにして俺は、また寝ることにした。
それから俺は、小さな6歳ぐらいの男の子に追われる夢を、たまに見る様になった。
それだけ聞くと、バカバカしい、たいしたことない様に思えるが、俺にはずこく何か嫌な感じのする夢だった。
その子は、俺のことをすごく知っている。
なぜか、そんな感じがしていたからだった。
夢を見ている時は、すごく怖くて、でも目が覚めると、何が怖かったのかわからなくなるそんな感覚だった。
よくわからないかもしれないが、それが怖かった。
それから、1ヶ月ぐらいたった時だと思う。
夢のなかで、俺とその男の子が畳部屋のテーブルで向かいあって話す夢を見た。
それは、その男の子がとにかく、俺の生きてきた人生を淡々としゃべるものだった。
来栖 陸翔22歳、平成14年10月生まれ、あおぞら幼稚園入園。
彼は、スポーツ好きな男の子で、友達もいた。
小学校入学後、両親が離婚し、現在の来栖の名字になる…
夢の中で、知らない子どもが延々と俺の生い立ちをしゃべるその姿が異様でい異常で怖かった。
それは、俺の今の年齢をすぎた時だった。
その男の子が聞きとれない言葉になった。
英語でもなく、この世の言葉ではないものだと俺は感覚的にそうわかってしまった。
バンッ
男の子がテーブルを強く両手で叩いた。
「気をつけて。」
そう言った。
俺はその夢から目を覚ました。
ただそれだけの話なんだけど。
今でもそれがなんなのかわからない。
後日談
あの夢を見なくなって忘れていた。
ちょうど一年ぐらいした時だった。
その日は、休みだったが外は大雨が降っていた。
日頃の疲れがでていたのか、俺はまた昼頃まで寝ていた。
ガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャ
部屋のドアを開けようとする音が鳴った。
俺はその物音で起き、ハッと思いだした。
全身に鳥肌がたつ。
その日も親は、仕事でおらず俺一人のはずだ。
外は、雨音はしない。
雨は、上がったんだろう。
雷の音がする。
ゴロゴロゴロ
いったん深呼吸をして、意を決して俺は、部屋の扉のドアを開けた。
家の中は、暗く誰もいない。
はぁー。
深くため息をついた。
やっぱり誰もいない。
気のせいだったのだろう。
そう思いトイレに向かった。
そして玄関ドアの前には…
明らかに小さな子供がくすんだガラスの向こう立っているのがわかった。
「おい!なんなんだよ!」
俺は、怒りとともに声あらげて玄関ドア開けた。
ピカッ
一瞬光った。
ゴロゴロゴロ
ドダドドドドドドドドドドドドドドドドドド
大きな音と一緒に俺の後ろの自分の家は、崩れていった。
土砂崩れだった。
俺は、あのまま寝ていたらどうなっていただろう。
今思うと、俺の人生で一番怖い。
ピロリロリン
陸翔のスマホがなった。
あの男の子は、きっとこのことを伝えたかったんだろうけど、疑問しか残っていなくて申し訳ないが、もう時間がない。
この話は、ここまでにしようと思う。
急がないと、俺の子供が生まれてくる。
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