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理想世界

作者: うさぽん

私を誰だと思っているの。あなたを守ろうと生きたのだから死んでもらっては困る。これが現実。虚実。嘘に塗り固めた真実。愛。愛。愛愛愛愛愛。孤独。私の心には炎が舞い、目は虚ろで、口が乾く。血が流れているのにのに全く死ぬ気がしない。

「私は守るモノであり守られるモノじゃ無いから、カミトに守られるわけにはいかない。」

心から焦がれるからこそあなたに触れたくなる。

「私を救うとか、もう私の生きる理由を奪わないで。」

なんでこの好意を受け入れてくれないのだろう。私は強いのだから、私のことは諦めてただ自分の幸福を求めていれば良いのに。あなたといると罪の意識が私を堕としに来る。今まで見ないふりをしてきたのに、振り向いたら精神こころが壊れてしまいそうで怖いのに。砕けたら、あなたに依存してしまいそうで、あなたを愛するたちを不幸にしてしまうのに。

「俺はお前と違ってなんでも一人でできるほど出来た人間じゃない。だから、このままあいつらを連れて逃げれば、きっとあいつらを守れる気がする。でも、こんな予感もするんだ。きっとこの戦いが終わった時には、誰もいないところでお前は血を流したまま壁に寄りかかって、殺した死体を眺めながら後悔しているってね。」

「後悔って何?何を後悔しろっていうの?」

「人の人生を奪った罪とか」

罪、罪ねえ。そういえばこんなことをいっている人がいたなあ。

「罪は他人が定めるものではなく、みずから背負うものだ。」と。

罪とは認識であり、妄想であり、また思ひ出でもある。理性という常識りょうしきを外れた時に作るもので、元の常識りょうしきに戻れた時、自分の世界との違いを認識して負うものだ。それはあくまで認識であって、違いの度合いが大きいほど重荷となり私を苦しめる。この世界に戻ってしまったら、どんなに忘れようとしても、一番忘れたい時に、たとえそれがどんな理由であれ人をあやめた自分が脳裏に浮かぶ。

「それはあなたが決めるものではないわ。相手が私に銃口を向けるということは、私に殺されてもいいと主張すること。そこにあるのは罪ではなく生きたいという願いだけ。事実として、その手で勝ち取った者に善悪もないわ。」

そう、それはあくまで事実であり、想ひではない。それは私が決めることなのだから。

「お前は優しい人間だ。気にかけた人間にはみんな幸せになってほいしいと願うお人好しなんだ。だから、きっと事実と本心は反転する。いや、してしまうんだ。そんな奴が、後悔しないはずがない。」

「よくそんな夢物語が思いつくのね。あきれて感心してしまうほどよ。」

「いや、解るんだよ。だって俺たちは似たもの同士だから。だからこそ、報われない人間を見ると救いたいと思うんだよ。」

そんなこと、私だってあなたを救う人がいないことに気づいたからこの有り余る力で救うと決めたのに。そのために、あなたを拒絶しているのに。この気持ちを打ち明けることは自分の願いに反する。目的のためなら自分を殺す。これは昔自分に課した約束ルールだから。魔術師にとって約束は絶対だから。約束を破ることは死を意味するから。私は生きるために行動する。これは特別ではなく、生き物なら誰しも抱く正しい行いだから。はあ。こんな言い訳でしか自分を保てないなんて、なんて私は愚かなのかしら。

「勝手に同類なんて決めつけないで。この行為は私がみずからの願いを叶えるために払う代償に過ぎないのだから。私の意志は、私が決め、私が認め、私が許し、私が創り、私が求め、私が否定し、私が叶えるもの。それを歪めたいと望むなら、私の意志を殺しにきなさい。」

私は愛用のナイフと共に彼と相対する。

「結局は分かり合えないんだよな、俺たちはさ。いいぜ、お前を殺す気には全くなれないけど、お前は救われることをその身に刻んでやる。」

そう言って彼は私に銃口を向けた。このナイフを握ると、冷たく血生臭い鉄の持ち手の感触によって私の雑念は殺人衝動にすり替わっていく。彼は私を優しいお人好しだと言ったが、本当の私はまさに人を殺すためだけに生まれた道具へいきなのではないか。息が止まり、頭の中が空っぽになって自分の周りの時間の感覚が緩やかに止まったいく。心臓の鼓動が時を刻む。あと三歩で彼は私を穿うがつ。二歩。一歩。体をかがめ、左足をバネにして最小限の動きで相手の喉元一点を狙う。彼はけるそぶりも見せず私の手足肩、関節を狙い次々と引き金を引く。この程度で私が痛がり、降参すると思っているのか?まず、私に致命傷を与えようとしないところで彼は致命的なミスを犯している。そもそもける動作をしない時点でこれから死にますと宣言しているようなものだ。彼は間違っている。これは生きたいという万物の理念に反している。

これではまるで死ぬことは大したことはないと言っているようなものだ。それとも、私は彼を殺さないと信じてやまないのだろうか。さっき、私に銃口を向けることは死を意味すると言われたはずなのに。これぐらい理解できない人間ではないだろうに。まあ、いずれにしても愚かであることには違いない。目に映る情報は脳内で予測に変換され、数弾の犠牲とともに彼の喉元にナイフの刃を突きつけた。

「これで満足?」

「お前の欠点はさ、最後になって油断してしまうところだよな。」

その瞬間彼はナイフに食らいつき、頭突きをかましてきた。

「少しは恐怖にすくんで動けなくなるとか、かわいい所はないの?」

「残念ながらこういうことは日常茶飯事でさ。悪いね、可愛げがなくて。」

「そう、なら少し本気でらせてもらうわ」

右手に魔力を込め、理想の形に作り変えていく。やがてその瘴気しょうきは右手からあふれ出し、影のように彼をとらえようと伸びていく。彼は銀の銃弾で応戦するが、その程度の聖性で壊せるわけがない。彼が闇に飲まれるのを見届けてその場を去ろうとした時、

「聖剣ミュルグレスよ、魔をこばめ」

剣先から展開された光の障壁しょうへきが影の侵入を妨げる。

「カミト、大丈夫?」

「お前こそもう動いて大丈夫なのか?」

「うん。聖属性の精霊は休むだけで回復魔法を唱えなくても回復してくれるから。ところで、なんで奏と敵対しているの?奏は敵なの?」

「理由はあとで説明する。今はサポートに回ってくれ。」

「わかった。無理しない程度にね。」

もう手加減なしで完全に悪役として振る舞うしかない。

「ここまで私を追い詰めたこと、万死に値するわ。」

「(必殺技)」

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