6.ぐしゃぐしゃにしてくれる関係
どのくらいの間隔で、デートするもんなんですかね?
だいたい、二、三週間に一回。
月にすれば、二回くらいかな。
わたしたちは、それからも逢いつづけた。
カラオケにいったり、また漫画喫茶だったり。
ふたりで蘭をみにいったりもしたっけ。
それでもわたしは、これをデートなんて呼ぶ気はなぜだかしなかった。
ごはんをたべて。夜が更けたら、そのあとのこともきまっている。ちかくのコンビニに寄ることは変わらずだけど。買っておかなきゃならない薄膜なら。ふたりで逢う日はちゃんと、もち歩いてるんだから。
あ、きょうはウォーターベッドの部屋があいてるよ。
逢いたかった。
ねえ、今夜もわたしをぐしゃぐしゃにして。
嘘ではない、さみしかったってことばと。
嘘っぽい、好きだよってことばをささやきながら。
わたしたちは夜を費やし、朝をむかえた。
ありがとう。わたしをぐしゃぐしゃにしてくれて。
あいかわらずそのひとは、自分がほかのだれかのものだってくちにするけど。
どうぞ、ごかってに。
わたしは、ぐしゃぐしゃになりたいだけなんだもん。
あなたが、わたしをぐしゃぐしゃにしてくれるんだよ。
ぐしゃぐしゃであることがこんなに楽なものだったなんて。
なんでわたしはもっと早く。
わたしをぐしゃぐしゃにしてくれる、そんなあいてに出逢えなかったのだろう。
汚れたシーツと、熱を失いはじめた汗ばんだ肌。
二、三週間に一回。こんなふうに眠ることが心の拠りどころとなっているのに。
ばかなわたしは、まだ気づいていなかったのかもしれない。
その日は、まだ夕方まえからそのひとと逢えた。
とうぜんのように指を絡めて。笑みをこぼしながらふたりで歩く。
そのひとはおしゃれさんで、ライヴハウスで出逢ったときだけではなく。わたしと逢うときは、いつもゴス調の服装をしてきた。
普段からそうなのか。わたしのために、そんなかっこうをわざわざしてきてくれるのか。
たずねたことなんてなかったけど。
おしゃれなそのひとと、指を絡めて歩くのは楽しかった。
ぐしゃぐしゃにしてくれるあいてだから、いっしょにいるんじゃないの?
うるさい。そんなのいわれなくてもわかってる。
だけど、楽しかったんだからしょうがないでしょ。
はじめての夜にふたりで降りた駅を、いつも待ちあわせ場所にしていたわたしたちは。そこから電車に乗って、移動することなんてそれほどなくて。
駅周辺で、ぶらぶらすることが多かったんだ。
漫画喫茶も、カラオケも、食べ物やさんも、そのあとの寝ぐらも。
ここらへんで、ぜんぶまかなえる。
じゃあ、きょうはなにを食べにいこう? そんなわたしたちを呼びとめる声があった。
なんだ、わたしの知人か。友人とさえ呼ばないような知りあい。かといって、はなしかけられても害のない、そんなたぐいの。
でも、その知人がなにげなく、くちにした質問。
考えもなしにするべきではない。
くだらないどころか、最悪な質問。
それをくちにした知人を恨みはしない。
しょせんこれは、わたしがぐしゃぐしゃになるための関係なんだ。
だったらその関係じたいも、はじめからぐしゃぐしゃなもの。
ぐしゃぐしゃにつづいて、ぐしゃぐしゃにおわるのなんて、わかりきっていた。
だけど、わたしがどんなにばかでも。
わたしだったら、ぜったいにそんな質問だけはしないよ。
ウォーターベッドに憧れるのです。




