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4-19 帝国軍のパーティー・前編

長くなったのでパーティーの話は3分割にしました。



 10月41日、いつもどおりの時間に目を覚ましウェルフトー神への祈りを捧げたレアニール。昨晩はマリアージュと遅くまで痛飲したのにスッキリとした目覚めだった。やっぱり吐き出すものを吐き出したからかな?と思う。午前中は前日同様に大使館で時間を潰し、軽めの昼食を摂った後に滅多にしない化粧をしてから夜会服へと着替えた。

 その夜会服、礼服と同様に戦巫女たるレアニール専用にデザインを変更されたものだった。

 以前だと女性団員用夜会服は2種類、男性団員と同様のタキシード型のものとドレス型のものが存在していた。今はタキシード型のものだけとなっている。レアニール専用に仕立てられた物もそのタキシード型のスタイルがベースである。ジャケットが長めとなりパンツはかなりタイトなデザインに、足元はパンプスではなく右足首の傷を隠す為にという彼女自身の要望を受けて第1種制服用と同じ丈の、ただしヒールがそれよりも若干高いブーツとなっている。色はベスト以外全て白、金糸の刺繍が随所に入っているがそれも通常より多めであった。帽子は制帽となるが他団員の物は隊色のパイピングが施されているのに対し金色のパイピングとなっている。


「馬子にも衣裳・・・だな」


 規定どおりに勲章の類を付けたジャケット、今回初めて佩用(はいよう)したがメキア帝国からの勲章もある。功労の有った外国軍人に授与される特別功労章だが、それは今日のパーティーへ参加するチケットみたいなものだった。もちろんフォースワイア島での一件で授与されたものだ。ちなみにファンラインもその件で今日のパーティーに出席できる権利を持つ勲章を授与されていた。そうでなければ平民出身の尉官では出席できない。

 そのファンラインは16時5分前に大使館へ第5部門の馬車で迎えに来た。


「お待たせ・・・ん?神官騎士団の普通の夜会服と違う?」

「さすが目ざといね」


 ファンラインは鑑賞するような眼差しで夜会服姿のレアニールをしばし見つめると感嘆したよう小さく息を吐く。


「似合っているし格好良いね・・・それと、レアが化粧しているのは初めて見るから・・・ありきたりの言葉で申し訳ないけれど、綺麗だよ」

「あはっ、あなたでもお世辞を言うんだ」


 思わず笑ってしまうレアニール。それを聞いたファンラインは複雑な表情を浮かべつつ彼女を馬車へと案内する。そしてレアニールに聞こえない程度の声でポツリと言った。


「お世辞じゃないのだけれどな・・・」


*****


 ファンラインに案内されて受付を済ませ会場、皇城の大ホールに入ったのは17時近く、開宴間際だった。パーティー参加者を送る馬車で皇城付近が少々渋滞していた為だった。

 会場にはメキア帝国陸軍や親衛隊の軍人たち、それと各国の駐在武官たちがグラスを手に談笑していた。その数ざっと500人ほどはいるだろうか?もしかしたらそれより多いかもしれない。殆どがメキア軍人だから黒か灰色の夜会服を着ている。白を着ているのはレアニールも含めて数える程度しかいない。

 さて、どうしたものかと給仕からスパークリングワインが入ったグラスを受け取ったレアニールは思案していた。それとなく会場を見渡し目標を探す。


「あそこにモルトケ大将、バトラー大佐はあそこだな。ミューラー少佐は・・・ああ、モルトケ大将の向こうだ」


 同様に会場を見渡していたファンラインが教えてくれた。それに小さく頷き軽く笑みを浮かべ謝意を伝える。いきなり彼らへ向かって行ってはあからさま過ぎると、しばし間を置くことにした。そうなると偽装の意味も兼ねて誰か当たり障りのない人物に挨拶でもしておくかと、お奨めは誰かファンラインに尋ねようとした時だった。数人の若い軍人がレアニールに近づいてきた。


「ロザリア神官騎士団のレアニール・ニューロス大尉殿ですか?」

「はい、ロザリア神官騎士団大尉、レアニール・ニューロスです」


 すると彼らは次々と自己紹介を始める。


「フォースワイア島での一件でレアは帝国軍内でも有名だからね」


 そう耳打ちしてきたファンラインを「原因はあなたでしょ」とばかりに睨む。


「貴女とこうして同席出来るとは光栄です」

「いいえ、こちらこそ。貴殿らと知己を得られる機会を持てたことを嬉しく思います」


 功績を上げた者には称賛を、国は違えど軍人は皆同じだなと、先にそれを成し得たレアニールに称賛と羨望の眼差しを向ける彼らを見て彼女はそう思った。本音で言えば祭り上げられた功績だから称賛されるのは甚だ居心地が悪くなるのだけれど。

 若い帝国軍人たちに取り囲まれながら、レアニールは彼らと会話を楽しみつつ会場内に視線を泳がせた。


(げっ・・・)


 遅れて会場内へと入って来たウェイバー伯爵の姿を見つけた。今のところレアニールには気付いていない。こちらとて関わりたくはないと、視線を外したレアニール。外した視線の先、モルトケ大将の姿を捉える。彼は大振りなジェスチャーを織り交ぜながらルファール王国の駐在武官と談笑している。


(人望が無い・・・って本当ね)


 他の将官を見れば階級が高い者ほど挨拶待ちが控えているものだが彼の周囲にはそれらしき姿が少ない。それに対してバトラー大佐は直接その姿が見えないほど多くの者に囲まれている。


(女子爵の爵位を賜るほどの功績を上げ方だものね。性格も悪くなくて美人ときたら大人気も当たり前か)


 バトラー大佐の評判は今回資料を見る前から聞いていた。レアニールも任務抜きで是非挨拶をしたいと思っていたメキア軍人の1人だった。例えその功績の1つが我が国相手の紛争で上げたものであってもだ。


(でも待ち時間長そうだね・・・後にしよう)


 先ほどまで話をしていた若い軍人たちも去り、今傍らにいるのはファンラインだけ。大勢の者たちに囲まれているバトラー大佐を見て先にモルトケ大将へと向かおうかと思った時だった。人垣の間、一瞬だけバトラー大佐と目が合った。レアニールの姿を認めた彼女は話を止めるとその人垣を掻き分けるようにしてこちらへやって来た。薄い灰色のメキア帝国陸軍の男性用とさして変わらない夜会服を纏った、短いこげ茶色の髪、深い緑色の瞳を持つ美しい女性がレアニールの前に立つ。齢39歳と聞いているが凛とした佇まいが若々しいな・・・とレアニールは思った。


「あなた、もしかしてレアニール・ニューロス大尉?」

「はい、大佐殿」


 姿勢を正して敬礼を捧げるレアニールにバトラー大佐も姿勢良く答礼する。


「やっぱり。帝国陸軍第7師団のカーリー・ロフ・バトラーよ。先日あなたのお父様に大変お世話になったの。会えて嬉しいわ」

「ありがとうございます。私も憧れの大佐殿にお会いできて嬉しいです」


 バトラー大佐は柔らかい笑みを浮かべると右手を差し出した。レアニールはその手を丁寧に握り返す。聞けばバトラー大佐の赴任直後、第7師団駐屯地内で事故があり重傷者が複数出たそうだ。それを偶々越境してシュトルムの教会を訪れていた養父ニコラが救護に当たったという。

 養父が救護したという事はどんな重傷であっても負傷者は全て快癒しただろうなとレアニールは思った。話が進んで行くと実際そのとおりだったという。


「これから我が国とフィオラーノ連邦は新たな関係を築いていくのでしょうね。それを実感したわ」

「はい、より良い関係が構築されることを期待しております」


 バトラー大佐の言葉に含む所は何も無かった。伝え聞く勇猛果敢な軍人、というよりも貴族の婦人のような柔らかい発音だった。


(バトラー大佐自身はどちらでも構わないのだろうな。国が決めた事に粛々と従う、軍人としての宣誓を違わずってことか)


 彼女の言葉、そして態度を見ているとそのように思えた。するとバトラー大佐は先ほどまでレアニールと談笑していた1人の若い士官を指し示す。


「あそこの彼、私の息子なの」

「そうなのですか?先ほどお話させていただきましたが立派なご子息です。短い時間でしたが感銘を受けました」


 それを聞いてバトラー大佐は柔らかな笑みを浮かべる。


「どう?決まったお相手がいなければ我が息子なんていかが?」

「過分なるお言葉、身に余る光栄です。ですが私はフィオラーノ連邦と国民に忠誠を誓った身、慎んでご辞退申し上げます」

「ふふっ、そう言うと思っていたわ。あなたのような優秀で可愛らしい方を娘にしたかったのだけれど残念ね」


 心底残念そうな表情を浮かべたバトラー大佐は今度我が家に遊びに来てねと、笑顔を浮かべて去って行った。

 それを見送ったレアニール、さて、そろそろモルトケ大将の元へ、と言うよりミューラー少佐の元へ行こうかと2人の姿を探す。彼らは壁際のソファーに悠然と座っていた。


「本丸攻略に行くよ」

「了解。距離を取る」


 ファンラインは頷くと離れて行った。レアニールは新たなグラスを持って彼らに近付いていった。






どうでも良い話ですが、現在レアニールが授与されている勲章は等級順に次のとおり。

銀星殊勲章・・・ルクスでの功績に対し授与(当初は殊勲勲章が授与されたが、同地での工作活動が終わった為に再評価が行われ実質的な最高位勲章である銀星殊勲章に格上げされた)

銅星殊勲章×2・・・フォースワイア島での功績、ハウヴェル一味逮捕協力の功績対し授与

戦傷病勲章・・・ハウヴェル一味逮捕時の負傷に対し授与

殊勲勲章・・・ロザリアでの任務に対し授与

フォースワイア派遣勲章・・・フォースワイア島への派遣に対し授与

特別功労勲章・・・戦巫女の業務遂行に対し授与


これらの勲章、礼服では勲章(正章)そのものを、夜会服では小型章を並べて佩用します。通常勤務服の第1種制服などでは一部例外の機会を除き勲章に付けられたリボンの色を基にした略綬を付けます。


他に戦巫女の称号授与の際に同盟国から儀礼的に送られた勲章や本編でも語られたメキア帝国からの勲章も有りますが割愛。


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今回も読んで頂きありがとうございました。

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