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4-15 救援到着



 せいぜい背中に当たれば良い程度で投げたのに・・・その前に証拠物品を投げるって考え無し過ぎだなと、レアニールは無意識の内に頭をポリポリと掻きつつ逃走を果たせず倒れた男の元へと行く。他の男たちと違って彼は当たり所が悪かったのか失神しているようだ。それとも効果の個人差だろうか?その途中で石畳に転がっていた魔道具を拾う。落下の衝撃で発動状態のままになっていたスイッチは元に戻っていたようだが・・・


「これ・・・魔道具かと思ったけれど消失文明期の遺物だ」


 確かスタンガンとか言うものだったか?こうした電気製品で実働の物は珍しいな・・・と感心しつつもそれを持った組織とは?と考える。それをコートのポケットに仕舞いつつ倒れた男の所持品を手早く確認する。当然身分を確認できる物は所持していなかったがレアニールを拘束する為に用意していたのだろうか、手錠を2組所持していた。その手錠を拝借して男を後ろ手に拘束し最初の男たちの所へとレアニールは戻る。


(んんっ?この男、確かウェイバー伯爵が連れていた兵士?)


 麻痺した身体を何とか動かしレアニールを睨み付ける男、この顔には見覚えがあった。リチェロで自分を捕らえようとしたウェイバー伯爵、その時彼が連れていた4人の兵士の1人だった。何人目に彼を蹴り飛ばしたかまでは覚えていなかったけれど。

 彼らの所持品も確認したが先ほどの男と同様の物しか持っていなかった。これまた同様にそれを使って彼らを拘束した頃、現場に馬車が近付いて来る音が聞こえてきた。馬車の残骸は燃え尽きようとしていて辺りは暗闇の中に再び溶け込もうとしていた。それを迫って来る馬車に取り付けられた照明が再び光の中へと浮かび上がらせる。それは結構な照度を持つ魔導灯だった。こんな照明を用いるとしたら一般の馬車ではないなとレアニールは思った。だとしたら今さら逃げ出してもバレている。馬車は1台、御者を入れて多くても5名といったところか?


(一暴れして逃げる・・・か。そうしよう)


 そうだ、いざとなったら上空へ逃げるという手も有った。そこで思わず頭上を確認する。街路上であれば張り出した枝などは無い・・・


(いやいやいや、それはいくらなんでも駄目でしょ)


 首を横に振りそれを打ち消す。神聖力についてレアニール自身は常識だと思っていた事を、神官騎士団に入団してからは非常識だと言われ続けていた。それについて不満が無いわけではないし、やっぱり自分では非常識だと思えなかった。でも『神の御手』を用いて空を飛ぶのは自分でもさすがに非常識だと思った。ここは相手を確認したらさっさと自分の足で走って逃走するのが常識的だ。とにかくそう決めた。


 接近してくる馬車は魔道灯で進行方向を煌々と照らしていた。だがレアニールの姿を認めると眩しい光軸の中心を彼女から僅かにズラした。


(あ、良かった。少なくとも敵じゃないわ)


 こちらの視界を奪わない配慮を見てレアニールは少しだけ警戒を解いた。敵であればわざわざそんな事はしないからだ。馬車はレアニールから少し離れた場所で停車したのだが、止まり切る前に客室の扉が開き中からファンラインが飛び降りてきた。


「レア!・・・無事のようだね?」

「レイニー、助かったわ」


 ファンラインとは先ほどの打ち合わせの間に互いに愛称呼びを許していた。レアニールはコートや制服に付着した汚れを払いながら彼へと歩み寄る。


「それにしても良いタイミングね。尾行でもしてた?」

「いや、尾行を付けるにはちょっと間に合わなかった。こっちだろうと当たりを付けて馬車を走らせた。当たって良かったよ」


 そう言葉を交わしながら握手する。ファンラインたちが来たことで助かったのは事実だからそれについては素直に感謝しておく。もちろんそれはそれ、これはこれ・・・なわけで。


「それで、迎えの馬車が来なかったのは?」

「それは本当に事故が原因。それを利用してコイツらが何か仕掛けるって情報を得たのも急な話だったから対応が遅れたよ。連絡も出来なかった。本当に申し訳ない」


 遅れて到着したもう1台の馬車、第5部門の課員たちが拘束した男たちを連行して行くのを見送りながらレアニールは腰に両手を当てて尋ねた。ファンラインはレアニールと正対し心底申し訳無さそうに応える。


「分かったわ、貸しにしておく。その代わり、利子も含めて後でしっかり取り立てるからね?」


 危ない目に遭ったのは事実だが、急な話だったのだろう。申し訳無さそうにしているファンラインに仕方ないなとレアニール思う。それでもこれくらいの軽口は叩いても許されるだろうと茶目を含んだ笑みを浮かべる。

 当のファンラインもそれを理解したのかニヤリと笑ってコクリと頷く。


「じゃあ、利子分だけ先に返すよ」

「この3名の素性?ウェイバー伯爵の私兵か第3部門の人かと思ったけれど」

「どちらも正解。第3部門の人間でウェイバー伯爵の()()()()()()()()だね」


 私兵みたいなもの、ファンラインは苦虫を噛み潰したような顔でそこに侮蔑の発音を混ぜた。なるほど、組織として褒められた行動をする者たちではない・・・ということかと理解をしレアニールは微苦笑を浮かべた。

 貴族の存在しないフィオラーノ連邦では馴染みのない話だが、メキア帝国など貴族が存在する国では軍の要職に就いた者が自分の私兵ともいうべき者たちを掌握する組織に入れる・・・という話が珍しくなかった。


(名前からしてレイニーは平民出身だよね・・・色々と辛酸を舐めさせられてきたのかな、やっぱり)


 聞いた話でしかなかったが、そうした私兵出身の者たちは階級以上に威張り散らしたり命令を無視したりと、とにかく良い話を聞いた事が無い。殆どの国で禁止されていないという事は何かしらの益も有るのだろうが・・・今だ微かに苦々しい顔を浮かべるファンラインを見ながら、自分の国では無縁の話で良かったと思うレアニールであった。






今回も読んで頂きありがとうございました。

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