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4-14 パラライズパラダイス



 立ち上がり駆けだしたレアニールは一気に男との距離を詰める。


「あっ!?」

「たあっ!」


 走り込むレアニールの気配に気が付いた男が振り向いたのと、駆け込んだ彼女がジャンプし男の胸元へと飛び蹴りを叩き込んだのは同時だった。


「ぐはぁっっ!」


 まともにその一撃を喰らった男は数メートル飛ばされ昏倒する。


(うーん、咄嗟に何かしようとするとやっぱりこうなるのよね・・・)


 まるで呼吸するかの如くとはこのことか。何も意識せずに攻撃したらやっぱり飛び蹴りとなった事にレアニールは頭を抱えそうになる。全く、ライドが見ていたら絶対に笑い転げるだろうな・・・などと思いつつ倒れた男に歩み寄る。


(いや、待って。平気で馬車から飛び降りるような男が一撃で沈む?)


 確かに綺麗に蹴りが入ったけれど・・・狸寝入りかもしれないなと思いながら男に歩み寄るレアニール。


『耐性強化』


 念の為、小声で各種耐性を強化する神聖力、その神語を唱える。そしていつでも防壁を展開できるよう心構えをしておく。

 そして男の傍らに片膝を付いて跪き何か身元を確認できるものは?と、男の所持品を確認しようとした。その時だった。

 突然男が動き出し、懐から黒い小さな箱状の物を取り出してレアニールへ押し付けてきた。


(やっぱり!)


 慌てて避けようとした素振りで男が付き出してきたその黒い物体を一番衣服が分厚い場所、腰のベルトの上へと誘導する。


バチッ!

「うっ!?」


 予め行使しておいた耐性強化の神聖力の甲斐も有ったか、それとも衣服の一番厚い場所だったからか、小さな雷のような痛そうな音とは裏腹にほんの少しだけチクリとした。発した音からして、本来は相手を麻痺させる道具なのだろうと当たりを付ける。幸いな事に今までそうした物を受けた事が無かったが、知識としてそうした攻撃を受けたらどうなるかは知っていた。


ドサッ。


 レアニールはその知識に従って身体が麻痺したように石畳へと倒れる。


「ううっ・・・くっ・・・」


 身体が麻痺しているけれど何とか動こうとしているような演技をするレアニール。


(今度はこっちがやられたフリをする番ね)


 問題なのはこの先どうするか?だった。麻痺させる魔道具を用いたという事は生かしたまま捕らえ、何処かへ連れ去る事を目的としていたのだろうとレアニールは考えていた。暴走する馬車に閉じ込めるのは下手したら死んでいたと思うけれど。もしかしたら生死問わずだったのかな?それはともかくとして、このまま連れ去られて敵の中に侵入するべきだろうか?・・・

 いや、それは危険だ。以前ウェイバー伯爵に監禁された時のように神聖力を無効化されたら厄介だ。自力でどうにもならない状況に陥ったとしても誰かが助けてくれる保障はない。やはりこの男を捕らえて背後関係を調べた方が得策だなと思い直す。

 そうこうしていると暗闇の中から、馬車が向かっていた方角から2人の人影がこちらへと走ってやって来た。いかにもな黒いマントを羽織り、そのフードを被った男たちだった。


「ご苦労。ビリビリを使ったか。だが防寒着の上からだから効きが弱いぞ。もう1・2発、そうだな足癖の悪い女だ、両足に1発ずつ追加で打っとけ」

「あぅ・・・あぁ・・・(ん?この男、私の事知ってる?)」


 後から合流した男は御者だった男にそう指示する。その口ぶりはまるでレアニールを知っているかのようなものだった。相変わらず麻痺しているフリをしているレアニールは男の顔を見ようと身を捩る。だがフードを被っている男の顔はよく見えない。耳を澄まして辺りの様子を伺うが今しがた合流した2名の他に向かって来ている者はいないようだ。

 ビリビリとは例の魔道具の事だろう。御者だった男は指示どおり追加の電撃を喰らわせるべく、レアニールの下半身側へ回り込むとコートの裾、次いでスカートを捲る。そして露になった彼女の左太腿に電撃の魔道具を押し当てようとした。


(今だっ!)


 反撃のタイミングを計っていたレアニールは右膝で魔道具を押し付けようとしていた男の手を押し退けた。そして素早く上体を起こしつつ、その手首を掴み男の喉元へと魔道具を押し付けた。


バチッ!


「ぎゃっ!」


 その瞬間、スイッチが入ってしまったのか魔道具の力が発動する。先ほどと同様に電撃が瞬間的に放たれる。それは男を麻痺させ一撃で行動不能へと追い込んだ。


「うわぁー、結構良い感じに麻痺しちゃうのね」


 耐性強化を掛けてなかったら自分がこうなっていたのかも・・・と、背中を冷や汗が流れた気がしたのを軽口を叩いて誤魔化すレアニール。


「なっ!?お、お前っ!」


 御者の男が倒されたのを見て、彼に指示を出した男は狼狽しながらもレアニールと距離を取ろうとした。


「ほいっ、と」


 だが男が距離を取る前にレアニールは御者の男の手から零れ落ちた魔道具を拾いつつ立ち上がると彼の懐へと飛び込んだ。そしてその首元にそれを押し付けスイッチと思しきボタンを押した。


バチッ!


「ホゲェ!」


 思ったとおりそれは発動のボタンだった。男は一瞬の呻き声と共に腰が抜けたようにその場に膝から崩れ落ちた。


「く、くそっ!」


 仲間2人が無効化されたのを見て残った男は逃走する事を選んだ。逃走というより情報を持ち帰る事を選んだ・・・と言った方がむしろ正解なのだろうと思う。

 だから男を追おうと駆け出しそうになったレアニールではあったが、深追いは危険だと思い止まった。


「仕方ないな、もう・・・たぁっ!」


 レアニールは逃げる男に向かって魔道具を、大した思慮もなく投げ付けた。その際に偶々発動のスイッチが押された。彼女は全く意図していなかったのだが、そのスイッチのボタン、それを押し込んだままスライドさせると発動したままになる仕掛けとなっていた。投げる時に偶然そうなってしまった。

 青白い光を発したまま飛んでいった魔道具は逃げる男の後頭部に、その光る側から直撃した。


ゴンッ!バチッ!

「おぉぉっっっっ・・・」


 投げつれられた魔道具の直撃を受けた男は派手に転ぶとゴロゴロと石畳を転がった。そしてそのまま動かなくなる。


「えっ・・・ええっ?」


 まさかの結果にレアニールは数秒の間、間が抜けたように立ち尽くしてしまった。


「なんと言うか・・・ごめん」






実は盛大に運の無さが発動したままになっているレアニール、その反動なのか彼女らしからぬ運の良さが続いています。


*************************


今回も読んで頂きありがとうございました。

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