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赤毛の神官騎士レアニール ~その女、無自覚につき~  作者: ふぁるくらむ
第3章 赤毛の騎士、戦巫女になる
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3-15 戦巫女の戦死



『・・・結果的に戦巫女レアニール・ニューロス大佐がミルニアの祭礼に参加したのはこれが最初で最後となった。先月末に終結した、ルファール王国との戦争の中で彼女は壮絶な戦死を遂げた。包囲されかけた味方を撤退させるため1人戦場に踏み止まったのだった。敵の激しい攻撃魔法を食い止め、最後は敵陣へ飛び込み散華した。彼女の遺体は回収出来なかったという。

 戦巫女ニューロス大佐の尊い犠牲によって撤退した陸軍205大隊は第602猟兵大隊と合流に成功、戦線は立て直され翌週の反転攻勢を成功させるきっかけとなった。

 その功績と自己犠牲精神を称え、戦巫女ニューロス大佐には連邦最高の勲章である名誉勲章が追贈され・・・』


   ~ベネル歴1414年8月1日発行ミルニア新聞~



・・

・・・

・・・・


「・・・だから死んでないってば・・・」


 ベネル歴1414年8月5日、負傷療養の為にケーラー島の保養施設に滞在していたレアニール・ニューロス少佐は見舞いの品の中に紛れていたミルニア新聞を握り締めワナワナと震えていた。確かに彼女の戦死情報が流れた。それが誤報であり、実際には生存していたと後に訂正の情報も流れたのだが、戦争終結の記事に埋もれてしまった。おかげで今だにレアニールが戦死したと信じている者たちは少なくない。


「あはは、律儀に二階級特進させているのね」


 レアニールが乗る車椅子を押していたカームがその新聞を覗き込み心底愉快そうに笑い声を上げる。戦死公報では二階級特進して大佐となっていたが、生存が確認されて当然のように昇進は取り消されている。


「どうせなら戦時昇進の少佐だって取り消してくれれば良いのに・・・」

「それは無理ね。だって正確には8月1日付けで大尉に降格し即日少佐へ昇進しているもの。ほら、その辞令」

「うへぇ・・・」


 レアニールはカームが雑に差し出した辞令を両手で受け取ると露骨に嫌そうな顔をした。


「嫌そうな顔をしないの。もっと嫌なお知らせがあるのだから」

「・・・聞きたくない」

「聞・き・な・さ・い。同日付で連邦名誉勲章の受章が決定されたわよ」


 先ほどの嫌そうな顔が普通の表情に見えるくらい、レアニールはその端正な顔を歪めた。


「・・・いや、それこそ嘘でしょ?」

「残念ながら本当・・・ふふっ、新聞記事はそこだけ本当になったわね」


 そのような名誉ある勲章なんて自分に相応しいのか甚だ疑問であったが・・・断れるものでは無しと、レアニールは諦めたように大きく溜息を吐くと再び新聞を見る。


「それにしても、ミルニアは戦巫女を戦死させたがる伝統でもあるのかな?」

「イリスティア・マクドネルの事?例の伝承、登場人物名が史実どおりになる前はイリスティア本人も何度かミルニアへ行っていたのにね。公式記録には残っていないけれど騎士団退団後は臨時でミルニア教会の大司教も務めていたし」


 自分も色々と調べていたけれどそれは知らなかったと、驚きを隠さずに聞き返すレアニール。


「え、それ本当!?」

「私が嘘を吐いたことある?」

「・・・」


 真顔で聞き返すカームにレアニールは敢えて何も言わなかった。と、言うより何を言っても嘘になりそうで言えなかった。


「レア、今の態度でお姉さん傷付いたのだけれど?」


 そう言って握りしめた拳で両脇からレアニールの頭をグリグリと押し付けるカーム。


「痛いってば!それが怪我人にする態度なの?もうっ!」


 そして笑い合う2人。保養施設の中庭、木陰の涼しいエリアまで来てレアニールはカームの手を借りて車椅子から立ち上がる。まだ足元が少し覚束ないがここへ来た時と比べればかなり回復していた。そしてそのままゆっくりと、歩行訓練とばかりに歩を進める。こうした行為の許可は数日前に出ていた。


「それでどうするの?」

「もちろん来年ミルニアへ行くわ。このまま戦死扱いなんて御免よ」


 殆どカームに頼らず歩いていたレアニールは少しだけ残る痛みに顔を歪ませながらも断言するようにそう答えた。


「来年まで待っていたら伝説になっちゃっているわよ?お医者さんに外出許可貰って今年行ってしまえば?なんなら送迎を手配するわよ?」


 カームの言葉には妙な説得力があった。生存情報を本当に見落としていたのか、それとも意図的に見落としたのか分からないが、レアニールが戦死したものと扱っているミルニアの新聞という現実もあった。それにしても送迎とは?


「あなたを送迎したい者なら何人でもいるから。私、それなりに偉くなったからそれくらいどうにかするわよ?」


 確かにカームは偉くなっていた、その権限が何処まで及ぶのか分からないが自信たっぷりにそう言うという事はそうなのだろう。レアニールはフッと力が抜けたように自然と笑顔になった。

 ミルニアに行けば自分が戦死したという話は覆るだろう、これで余計な話のタネになることもあるまい・・・と。


 レアニールは忘れていた。イリスティア・マクドネルが伝承の中で5回死んで5回生き返っているということを。

 つまり、レアニールが()()()()()、ではなく()()()()()と、彼女が期待していた方向ではない別の方向へと向かって話が膨らみかねないということだ。

 それはかなりの高確率で発生しそうな未来の話だった。






今回も読んで頂きありがとうございました。

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よろしくお願いしますm(__)m

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