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赤毛の神官騎士レアニール ~その女、無自覚につき~  作者: ふぁるくらむ
第2章 赤毛の騎士、最果ての島へ
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2-9 帰国へ



 メキア帝国親衛隊第5部門ファンライン・ヨーレイン大尉との面会を終えてロンデリオに戻って数日が経過した。その後レアニールはフォースワイア島へ上陸した時の決意を今さらながら実践していた。有り難くも推薦を貰えることになった猟兵資格取得の為の試験勉強を司令部の片隅に設けられた資料室兼図書室兼休憩室で、神官騎士団の制服ではなく野戦服を纏って存在を消すかのようにしてやっていた。おかげで筆記試験は絶対に失敗しないという自信を身に付けるまでに至った。もちろん人目に付かない時間を狙い訓練施設で身体を動かす事も欠かさない。


「レア、ここにいたか」


 自分を探していたのか、部屋に入って来たベルントを見てレアニールは手にしていた教本を閉じて机に置いた。ベルントは椅子を一つ引っ張り出すとレアニールの前に座った。


「何かありましたか?」


 姿勢を若干正してレアニールは尋ねる。


「1時間前にリオビオ側から、そしてつい先ほどメキア側から連絡が有った。停戦の妨害工作を行っていた者を摘発、本土へ送還したそうだ」

「随分と早い対応ですね」

「我々にバレているのに放置するわけにはいかなかった、という所だろうな」


 そう言ってニヤリと笑うベルント。


「確かに。今は監視しているだけの我々が実力行使へ移る口実を与えたくなかったのもあるのでしょうね」


 ベルントの笑顔を見てレアニールは彼が島へ派遣されたのは実力行使へ移る場合の準備だったのでは?と思った。その表情を見るとそうならずに済んだ事を喜んでいるようにも見えたが。


「メキアは殊の外お前に感謝しているぞ。「フィオラーノ連邦神官騎士団中尉レアニール・ニューロス殿の働きによって停戦交渉を妨害していた一派が摘発された」などと書いてある」


 人の悪い笑みへと変わったベルントはメキア側から書類をレアニールへ渡す。コクリと頷きそれに目を通したレアニールは言われた通りの事が書いてあるのを見て表情が引き攣りそうになる。そして内心盛大な溜息を吐いた。


(うげぇ・・・あいつ逃げたわね)


 外にその感情が漏れないようにしたつもりだったがベルントは容易に気付いたようで盛大な笑い声を上げる。


「ははは、こう書かれた以上は監視団司令部宛に報告書を書かないと駄目だな」

「こんな事もあろうかと用意はしてあります。もちろんベンも共同報告者としてありますので後ほどサインを」


 レアニールは満面の作り笑いを浮かべて答えた。それを見てベルントは笑いを大きくする。


「ははは、このやろうめ」


 そう言ってベルントはレアニールに拳を突き出す真似をした。


*****


 監視団司令部宛の報告書はベルントが適当に遅れた言い訳をして出してくれた。自分のチェックが遅れたとかなんとか、とにかくレアニールの責任ではないと言ってくれたらしい。

 再び何事も無く数日が過ぎた。その後リオビオ・メキア両軍の間では一切の戦闘が発生していない。本土では停滞していた停戦交渉がようやく前進する運びとなったらしい。



 6月38日、ベルントやアダムたち数名が本土へ引き上げる事になった。迎えに来た海軍の巡洋艦、島へ来た時に便乗したエリオスの同級艦であるロッツオへ乗り込む彼らを船着き場で見送った。港湾が整備されていないロンデリオでは大型艦は沖止めにするしかなく、ベルントたちは沖合300メートルほどに停泊したロッツオに小舟で移動する。


「ベン、お世話になりました」

「こちらこそ、だ。レア、神官騎士団を辞める事が有ったらウチに来いよ。なんなら今すぐ転属してもらっても良いぞ」


 笑いながらベルントは右手を差し出す。レアニールも笑顔でその手を取った。


「お前は3日後だったか?」

「はい、この後リオビオ側のコルグへ移動してあちらの船に便乗させてもらう予定です」


 一昨日到着したロッツオが運んだ物資の中に騎士団本部からの指令書が有った。その指令書、要約すればフォースワイア島北部のリオビオ王国側の街、コルグから同国の船で本土へ。リオビオ王国首都リオビオにて同国要人などと面会、同国軍の視察を行い陸路でメキア帝国へ。メキア帝国でも同様の事を行った後に帰国せよ・・・となっていた。


(私は試薬か何か?)


 その指令書を見た時にレアニールは思わず天を仰いだ。面会せよと書かれてはいるがそれが誰かは書いていない。停戦に対し功績を上げた事になっているが中尉風情に過ぎない自分に、誰が会うかによって両国の思惑を探ろうという魂胆が見えてしまった。神官騎士団や国防省ではない、恐らく外務省辺りの思惑のような気がした。


「うむ、折角の機会だから色々と見聞を広めてくるのも良いだろうな。ロザリアへ戻ったら遊びに来いよ」

「はい、そうさせていただきます」


 敬礼を交わした後、ベルントは島から離れて行った。見送りを終えたレアニールは自身の出発準備に掛かる。この旅程で使わないと思われた装備、野戦服などは先ほど出港したロッツオに積んでもらっていたから島に来た時よりは減っていた。その代わり、これからの旅程に使えと大型のトランクケースが送られてきていた。それと旅費の前渡しという事で5千シーグの支給も有った。行軍用の背嚢担いで各国を巡る・・・確かに恰好としてどうか?ってことだなと、レアニールはそれを送ってくれた誰かに感謝した。


*****


 6月41日、コルグに移動したレアニールはそこからリオビオ王国の貨客船に乗ってフォースワイア島を離れた。1か月はこの島に滞在すると思っていたがそれよりも早い離脱となった。しかしリオビオとメキアを経由するから結局ロザリアへ戻れるのは1か月を経過した頃になるだろう。


 リオビオ王国首都のリオビオに上陸したのは6月43日だった。リオビオ王国軍司令部たる王城への訪問、国防大臣との面会などを行い6月47日にリオビオを立ち陸路で南下する。メキア帝国に入ったのが7月2日、そこから更に南下し7月6日に首都メキアに到着した。


*****


 時はレアニールがメキア帝国に入った頃に遡る。神殿警護隊副隊長室でグレイヴ・ショール大佐はルファール王国とメキア帝国の動静についての報告書を読み・・・その細面を盛大にしかめていた。


「レアのやつ、メキアのいいように利用されたな」

「暇過ぎたのがいけなかったのでしょうね」


 その報告書を覗き込んだグレイヴの副官、クレアはレアニールの性格からして余計な事に首を突っ込んだのだろうと湾曲に表現した。そうだなと、グレイヴはそれに同意する。


「外務省の要望も有ったわけだが、ベルガー団長も親心出さないですぐにロザリアへ戻してくれれば良いものを・・・」


 グレイヴはボヤくように言う。各国の反応を探りたいからと、レアニールをリオビオ、メキア経由で帰国させるようにと要望してきたのは彼女が予想したとおり外務省だった。それに同意した神官騎士団のシースニア・ベルガー団長、レアニールに見聞を広めさせてやったり知己を得る機会を与えようという思いもあったわけだが・・・


「こうも国土を怒らせるとは思わなかったな。沸点低すぎるぜヤツら」


 動静報告にはルファール王国の諜報機関、国土開発室がレアニールに対して何かしらの報復を行う可能性有りとも書かれていた。全く野蛮な奴らだなとグレイヴは呆れたように報告書を執務机の上に投げた。


「レアはメキアに入る頃か・・・誰か付けよう。今から送ればメキア帝都到着の頃には合流できるだろう。すぐに動ける者は?」


 グレイヴはまだ知らなかった。レアニール自身の気まぐれで、メキア帝都への到着が予定より1日早くなっているという事を。






リオビオ王国ではさしたるイベントも起こらず割愛。と言うか同国の設定を殆ど考えておりません(^_^;


*************************


今回も読んで頂きありがとうございました。

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よろしくお願いしますm(__)m

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