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赤毛の神官騎士レアニール ~その女、無自覚につき~  作者: ふぁるくらむ
第2章 赤毛の騎士、最果ての島へ
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2-7 茶番劇



 6月25日の未明、レアニールはアダム・ミッシェル軍曹、ボリス・ベルクマン軍曹と共にロンデリオを出た。陸軍仕様の野戦服を着て顔にも草の染料を用いた隠蔽処理をしている。髪はうなじの辺りで一つに纏めて先はポンチョの中へ入れた。頭はヘルメットではなくツバの大きい野戦服と同色の帽子を被った。装備は余裕を見て2日間の行動ができる水と糧食、武器は剣とボウガンとした。もちろんその武器を使う機会が無い事が最良だ。


 アダムを先頭に適宜間隔を開けて曇り空の下の暗い夜道を進む。9日間の訓練だったが行軍中の自分の動きが大きく変わったことにレアニールは嬉しい思いだった。無意識の内に痕跡を残さない歩き方、繁みを進むのに物音を立てずに進んだりと、今まではそれの真似事に近い事をやっていたが格段の進歩を感じていた。




 小競り合いが発生しそうなポイントに到着したのは9時を回る頃だった。フォースワイア島へ来てから見続けていた光景、自分の胸丈くらいの草原が風でそよいでいる。その風に乗って微かな金属音が聞こえてきた。


「レア、前方10時の方角、戦闘音らしきもの」


 同様に音を聞き取ったアダムがその方向を示す。レアニールは即座に指示を出す。


「アダム、確認を行います」

「了解。ボリス、先行」

「了解」


 レアニールの指示を受けアダムはボリスに先行を命じた。一行は彼を先頭に草を掻き分け、もちろん音を殆ど立てずに進む。次第に金属音が大きくなっていく。


カキーン・・・コキーン・・・


 剣戟の音だと確信が持ててきたが随分と間延びした音だった。近付くにつれ人の声も聞こえてくるようになったのだが・・・


「おりゃー」

「とおーっ」


 その声も随分と間延びし緊張感の欠片も無い。

 さらに進むと草原が切れ、ちょっとした広場状になっている場所が見えて来た。そこではリオビオ王国軍の薄い茶色をした野戦服、そしてメキア帝国軍の濃い灰色をした野戦服を着た一団が剣を打ち合っていた。場所は国境からメキア帝国側に500メートルほど入った地点だった。草むらの中から3人はその様子を観察する。気付かれている様子は全く無い。


「何やってんだあれ?」


 打ち合う様子を見てボリスが呆れたような声を出す。


「訓練・・・ではないな」


 アダムは困惑したような声をレアニールへ向ける。


「まるで子供の遊び・・・いや、それよりも気合が入ってないね」


 予想どおりでした、本当にありがとうございました!とばかりに溜息混じりで答えるレアニール。そこでは形ばかりの小競り合いが行われていた。双方で素振りをしているが時折カキーンと打ち合う。それもただ音を鳴らしているだけで力は全く入っていない。

 その時上空から飛竜特有の風切り音が聞こえてきた。チラと見れば航空隊の飛竜が接近してくる。それに気付いた両軍の兵士たちは先ほどよりは気合を入れて打ち合いを始めた。そして・・・


「やーらーれーたー!」

「うわーっ!斬ーらーれーたー!」


 何人かが斬られたとばかりに手や肩口を押さえながら倒れる。もちろん本当は掠ってもいない。そして航空隊の飛竜が上空を通過したのを確認して倒れていた者は何事も無かったかのように立ち上がる。両軍の兵士は互いに何かしら会話をした後、手を振り合ってそれぞれの陣地へと帰って行った。



「・・・何なのあの茶番」


 レアニールは心底呆れかえった口調で言う。こんなのを延々と繰り返していたわけなのかと。


「・・・レア、俺ら見てはいけないものを見たように思うのだけれど」


 アダムとボリスは困り果てた顔をしていた。そして自分たちは見なかった事にした方が良いという結論に達したようだ。


「そうね・・・2人とも今見た事は口外無用で」

「はい・・・」


 レアニールの言葉に両軍曹はため息を吐くように頷いた。


*****


「なるほど、レアの予想どおりだったか・・・で、この後はどうする?」


 夕刻、ロンデリオへ戻ったレアニールはベルントと宿営地の中に設けられた訓練施設の片隅で会っていた。先日レアニールをしごき上げた例の障害コースだ。


「私が受けた命令は停戦の監視です。停戦を強制させるものではありませんが阻害する者があれば関係各位に通報する必要が有ると考えます」


 遠くから見たら雑談に興じているように見えるよう、レアニールは衝立のような障害物の一つに寄りかかっている。ベルントはレアニールと並ぶようにその障害物の上に登り腰掛けていた。


「つまり?」

「はい、両軍派遣部隊司令部に通報、後の判断は彼らに委ねるのが上策と愚考します」

「俺も同じ考えだ。リオビオ側には俺が行こうじゃないか」


 レアニールは障害物から数歩離れて振り返るとベルントに頭を下げる。


「ありがとうございます」

「メキア側に行く際は引き続きアダムとボリスを連れていくと良い」


 ベルントは身の軽さを感じさせる様子で障害から飛び降りレアニールに頷いた。






今回も読んで頂きありがとうございました。

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