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靴を磨く

叔母の一周忌と義父の一周忌が重なり、二日続けての法要だったのだけど、なんだかとても疲れてしまった。



一年前のこのころは、もっと大変で、叔母が無くなった葬儀の後、直ぐに義父が急逝してしまったので、兎に角、慌ただしくも心落ち着かない一年が続いた気がする。



さかのぼること、五年前、母が無くなり、そして、父も無くなり、大切な人達を失い、何のために生きるのだろうかと考えさせられた。しかしながら、そんなことを考えていては、そんな大切な人達は喜ぶことも無いなと思い、日々をしっかりと生きなければと思い直した。



靴を仕舞う前に、他の革靴も一緒にメンテナンスすることにした。



馬毛ブラシでブラッシングして埃を落とし、

クリーナーで汚れと古いクリームを落とす。


一寸くたびれた靴には、デリケートクリームを塗る。

かさついた肌にしっかり化粧水を与えるのと一緒で、化粧で言うところの乳液にあたるクリームを塗る前に保湿してやる。


デリケートクリームが乾いたら、乳化性クリームを手で薄く塗りこみ、豚毛ブラシでブラッシングする。


まんべんなく伸ばして毛穴の中にクリームを入れ込むためにブラッシングをするらしいのだけど、ここまで来るとくたびれていた靴も輝きを取り戻し、何だかピシッとした雰囲気になるから不思議だ。


最後に、布で余分なクリームを取り除きつつ、磨きこんでいくと、新しい靴はピカピカに、古い靴は味わいのある深みのある表情になってくる気がする。



普段気を使っていない靴も、自分でメンテナンスしていると、本当に愛着がわいてくる。



気になってしまうような傷も、自分で出来るだけメンテナンスしてやれば、それも味わい深い思い出となるかもしれない。



手を抜いて、いきなりクリームを塗ろうとすれば、それほど綺麗に仕上がらない。



過保護に、クリームを塗りすぎると、あとで固まったクリームが白く浮き出してしまったりする。



でも、失敗してもクリーナーでふき取ってしまえば、もう一度簡単にやり直せるのが靴磨きだったりする。



ああ、親父もお袋もそうやって試行錯誤しながら、兄貴や僕を靴磨きのように育ててきたのだろうか?



色んな失敗を繰り返して、汚れてしまった僕の人生を、なんでもないよと笑いながらブラッシングやクリーニングして慰めてくれて、とりあえず腹いっぱい飯でも食え!と丁寧にクリームを塗って磨きをかけるように育ててくれたのだなとしみじみ感じた。



そんな僕は、綺麗に光り輝いているだろうか?味のある渋みのある自分でいるのだろうか?



たいして光ってもいない息子なのに、まるで僕が一生懸命磨き続けた自分の靴のように、僕に愛着を感じて大切にしてくれていたことを、年を取るたびに強く感じる。



そんな大切な人達が旅立ってしまったのだから、これからは自分自身も、そして、自分よりも若い人たちを磨き上げて、愛情を掛けてあげられるような人間にならないといけないんだなと思った。



見違えるように光を取り戻した靴たちが、そんなことを思わせてくれたような気がした。

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