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料理はめんどうくさい

今日のお昼ご飯は、豚の生姜焼きと卵サンドとハムサンド。



ちょっと取り合わせがおかしい気もするけど、豚の生姜焼きは昨日の残り。



朝仕事場に着き、コーヒーを淹れつつ茹で卵を作っておく。お昼くらいには茹で卵も冷め、剥きやすくなっている。朝の仕事が一段落したところで、茹で卵を潰し、マヨネーズと塩コショウで味を調え、トーストしたパンにはさんで四つ切のサンドイッチを作る。



ハムサンドはキュウリを買い忘れてしまったので、残っていたキャベツの千切りをサウザンドレッシングと和えて二枚のトーストの上に敷く。その上にハムを乗せ、合わせて四つ切にし、ラップで巻いておく。20分もあれば終わるから、忙しい時でもなんとかなる。



昼ご飯は僕が作る。



クリニックは午前中の診察が終わる時間が読めない。そんな時はサンドイッチやオムレツなど手軽に作れておいておける物がいい。おにぎりもゆかりや菜飯などの混ぜご飯で作り、沢山凍らせているから、もっと忙しい時は解凍するだけで食べられる。



以前は、年老いた義両親のために晩御飯も僕が作っていた。仕事帰りにスーパーに寄り、一人一人食べられないものに気を付けながら献立を作る。結構大変な作業だったけど、3年間は何とか頑張った。



しかし、クリニックの仕事は自分の本来やりたい仕事ではないし、長年一人暮らしをしていたから料理をするのは上手な方だとは思うけど、だからと言って、料理をするのが好きなわけでもない。



そんな感じで3年が過ぎ、自分のやりたいことも出来ず、実家の両親が亡くなったことでぷっつりと糸が切れる。なんだ、俺、ただの召使みたいじゃないか。



まだやりたい仕事に専念できていれば、別にどうということも無かったんだけど、何一つ自分がやりたいことと思えることが出来ていないことに気が付いて、震えが止まらなくなった。



「ごめん、俺、もう料理は作らないよ。いや、作れない。」



僕の震える手を見て、奥さんは謝った。



「ごめんなさい。みんなで嫌な仕事を一人に押し付けていたね…。」



それから僕は晩御飯を作らなくなった。



と言っても、昼ご飯は作るし、休みの日に奥さんが作るとしても、僕も手伝うのだから1日として料理をしない日はない。



スタッフに聞くと、みんなの旦那さんは料理が出来ない人ばかりだという。家にいても、なにも手伝ってもくれないらしい。そして、一人では何も作れないから放っておけないらしい。こんなに簡単で、奥さんを手助けできる料理をしない手は無いと思うのだけど。



料理は一人暮らしをし始めた頃からやり始めた。男友達と家に集まって、サバの味噌煮やアスパラの肉巻き、カレーなんかを作っては女の子を呼んでワイワイ食べたりした。誰かのために、少なくとも食べられるようにレシピを読んで、少しずつ調理になれて、具材も必要な分だけ用意してと、だんだん上手になっていく。



美味しいと言ってもらえれば、もっと頑張ってみようと思うし、自分ももうちょっとこういう味にしたいと思えば工夫もするし勉強もする。結局は、誰かの笑顔と好奇心さえあれば、誰にでも出来ることだと思う。



心残りなのは、自分の両親にご飯をあまり作ってあげられなかったこと。実家に帰った時、僕が料理を作ると両親は美味しい美味しいと言って食べてくれた。義両親には毎日作ってあげていたのに、一番世話になった両親にはほとんど作ってあげられなかったのが残念だ。



正直、料理はめんどうくさい。出来れば、やりたくもない。



でも、誰の世話にもならずに自分で勝手にご飯を作れれば、誰かの手を煩わせなくて済むし、誰かが忙しい時には代わりに作ってあげられる。なにより、自分自身、自分の好きなものを好きな時に食べたい。健康を考えて、たんぱく質や脂質をメインにして、炭水化物を減らすことも自由自在だ。



食べる人が喜んで笑顔になって、そして、自分自身も笑顔になれたなら、ご飯を作ることはそれほど大変じゃない。



一つだけ、食べる人のルールがあるとすれば、作ってもらったのに文句を言ってはならないということ。作った人がまた作りたいと思えるようにしてあげないといけないということ。しょっぱい、薄い、などはそっと伝えて、けっして批判してはいけない。だったらお前が作れと言われて然りではないだろうか。



そこだけ守って、あまり凝り過ぎず、自分の許す時間と労力の範疇の中でやることが出来れば、それはそれで楽しいと思えることもある。



でもやっぱり、親父とお袋に、もっと美味しいものを作ってあげたかったな。



今度会うときには、ゴメンねと言って、沢山作ってあげたいと思う。

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― 新着の感想 ―
[良い点] たくやさまの料理、すごく凝ってそう。 [一言] 私も毎日朝晩の食事を作っていますが、時々本気で作りたくない時があります。 独身時代はいやになるとお弁当買ったりしてたんですが、今はいやいやで…
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