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三賢者の教え

うちに来ている銀行担当者が交代になるらしい。



僕ともよく打ち解けて、仕事ぶりも本人の性質も好ましく、良好な関係を築いてきた。しかし、通例通り、二年以内に担当者は変わることになり、この地区はあまり大きな企業も無いため、新人の外回りの修行の場となっているから致し方ない。



今時珍しく、僕と同様、趣味が車やバイクという現担当さんとは話が合う。親子ほども年の離れた人だけど、プライベートでも是非遊びに行こうと話しているので、今後もお付き合いは出来るだろうと思っている。



一つだけ懸念材料がある。二十代中盤の若者なのだけど、彼女がいないのである。それも、長い間。



性格は悪くない。大人と話をしても物怖じもしないし、かといって調子に乗る感じもない。話しているときも、その人となりが見えて、表側を飾り立てるような感じもない。ルックスだって、物凄く良いかと言われたらそうではないが、とても雰囲気の良い好青年だ。見た目が良くて中身も良ければ言う事は無いが、そんな人間は天然記念物級に少ないだろうし、ルックスのいい人間が自分の歳になってもモテるかと言われれば、それはルックスよりもその人の人間性によるところがほとんどだったりする。



なので、僕の周りにいた三人のモテ男達の話をすることにした。彼らを横で見ていた僕なりの分析を教えた。



一人目は、ある日のナンパ成功率100%の男。



4月の学生の交流が始まる時期。色んなサークルなどが新入生を勧誘する中、僕と友達の3人は、サークルでも何でもないのだけど、どさくさに紛れて色々な大学の女の子に声をかけまくり、一緒に飲みに行こうと誘うことにした。三人のうち、僕と一人の友人は、話しやすいだろうと思って少しなれなれしく話し掛けて女の子たちとアポを取り付けていったのだけど、成功率は60%程だった。そんな中、もう一人の友達は、声を掛けた女の子全員とアポをとりつけ、100%の成功率をたたき出した。その友人がやっていたのは、僕ともう一人とは違い、ちゃんと敬語を使って、おおよそ学生とは思えないような丁寧な話し方で女の子を勧誘していた。若者らしく、チョットちゃらちゃらした雰囲気の方が話しやすいと思っていたけど、それを見て実際は違うのかもしれないなと驚いた。その友達は、その後、大手オフィス機器メーカーの営業職になり、入社二年目にして、日本でトップセールスを売り上げ表彰された。そして、独立して、今は沢山の従業員を抱える社長として、日夜働きまくっている。



二人目は、ルックスは全然なのに女の子があっちから寄ってくる男。



その人は、見た目は並以下と言えた。身長も160cm無いし、ルックスはラーメン大好き小池さんにそっくりだ。だけど、いつも女の子と一緒にいて、その上、男からも人気があった。そんな彼は、兎に角、面倒見が良かった。女の子が悩みがあると言われれば、いつまでも話を聞き、失恋したと言われれば、朝まで慰め楽しい雰囲気を作る。それは女の子だけではなく、男に対してもそうだった。一緒にみんなと悩みを共有して、勇気づけ、仲間を一人にさせない頼もしさがあった。顔は小池さんなのに、


「何かあったら俺に言えよ。」


と、いつも渋い声で言っていた。小池さんの顔でも、彼の性格はとてもかっこよく、彼の周りには沢山の人が集まるのも頷けた。



三人目は、恥ずかしさを知らない原人のような男。



見た目は原人のようだった。髪は長く、風貌はワイルドで、格好が良いというより、ヤンチャな感じで明るい雰囲気、でも性格は穏やかで優しい男。彼は物怖じをしない人だった。男だったら、可愛い女の子を見たらとりあえず話でもしてみたいと思うだろう。しかし、声を掛けられる人間はなかなかいない。男だって、女の子に声を掛けるのは本当に恥ずかしいものだ。それも、誰かが一緒ならばまだしも、一人で声を掛けることが出来るのは、10人中1人いるかいないかくらいだと思う。


その友人はそういう恥ずかしさを感じない。誰彼構わず、声を掛けたいと思えば、すぐにでも声を掛ける。女の子に振られても、何度でもあきらめがつくまでチャレンジする。そんな彼に何度も告白されていた女の子がいたが、何度告白されても振るのだけど、だからと言って疎遠になるわけでもなく、次の日も普通に顔を合わせていた。多分、その彼の性格がカラッとした感じだからだったのかもしれない。女の子5人のグループにでも一人で声を掛けに行って、全員連れ帰ってくるなんてこともする。誰かと一緒に遊ぶこと自体を楽しむオーラがとても明るくて、そして、誠実だったように思える。そんな彼は、無垢な子供を相手にする小児外科医として頑張っている。彼の言葉は、きっと子供の心にも届くような気がする。



それにプラス、僕の体験も一緒に話した。沢山の人と毎日顔を合わせる仕事をするようになってから、僕自身も老若男女問わず色んな人と話をすることになり、あまり人と話すことに物怖じはしなくなった気がする。確かに、若い女性と話をしたりするのは恥ずかしいし、聡明そうな大きな会社の社長さんとお話をするのは、自分の程度を露呈する気がして恥ずかしかった。でも、自分らしく、飾らずに素直な言葉で会話すれば、その人と関係を築くきっかけを作ることは出来るものだと思う。



その三人の友達に共通するのは、三人とも下心を感じさせないところかもしれない。いや、下心は多分ある。だけど、その下心もさらけ出してしまう明るさがある。もっと仲良くなって一緒に楽しみたい、で、二人の気持ちが合えば、お付き合いも出来たら良いなというような誠実さかもしれない。こっちのいいように扱って遊んでやろうなんて気持ちは無く、どちらかと言えば楽しませたいという気持ちに溢れているような気がする。



誰かを笑顔に出来た時、多分、笑顔になった人は、その人の事を好ましく思うだろう。



人に好かれるというのは、誰かのために何か役に立ち、自分の好意が伝わったお返しなのではないかと思う。



もし、現担当の彼が、誰かを笑顔にして一緒に楽しそうにしている姿を見ることが出来たのなら、きっと、僕も同じように笑顔になれるような、そんな気がする。

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― 新着の感想 ―
[良い点] とってもいいお話でした。 たくや様も含めて、皆、人としての魅力に溢れている気がします。 いいですね。 相手を大切に思い考える誠実さがベースにあれば、どんな感じでも気持ちは伝わる気がしま…
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