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営業さんたちの戦いの始まり

「去年シェアを奪われた薬品、今年は取り戻したいと思いますので、見積もりを出させてください。」



温厚で柔和な一番古株の営業さんがそう言ってきた。



ああ、あんなに優しそうで控えめな人だけど、やはり去年の事は悔しかったんだなと感じさせられた。当院開業当時から何十年もずっと担当してくれている人で、その担当さんがいてくれるからこそ、そこの卸会社と取引をしているといってもいいくらい。その方がいなくなったら、他社に乗り換えてもいいよと言われている。



「じゃあ、全部のおろしには声掛けませんので、今卸しているおろしさんだけにその旨伝えておきますので、二社でコンペ(合い見積もり)と言う形で良いですか?」


「よろしくお願いいたします!」



と言うことで、現在購入しているおろしの担当さんにもそのように伝えた。



「わかりました。では、うちもうちなりに頑張りますのでよろしくお願いいたします。」



とはいえ、



「他社全社にも○○薬品が今年はシェアを取り戻すから、頑張りますと言っているので、△△薬品さんもこれは取りたいという銘柄があったら是非見積もり出してください。でも、この薬品は頑張ってくれているから他からは入れないように約束しますね。」



といったように、他社を焚きつける材料くらいにはしたり、あるものについては動かさないと約束したりして、押したり引いたりつねったりくらいはする。



ああ、ライバル同士がしのぎを削る時期がやってきた。



なんとなく、5人の男性から言い寄られる乙女の気分。



そのうえ、



「あの方はこんなアプローチをしてくださいましたのよ。でも、あなたのここは良いところですわ。」



何て言うことをささやく悪い女の気分でもあったり。



しかし、全員良い人たちだから何とももどかしい。だから、結局価格での勝負となってしまう。



だけど、今年はシェアダントツ一位の営業さんが転勤になり、新しい人に替わったうえ、この間、ポカをして僕にこっぴどく叱られ(恫喝まがい)、先日支店長とともに挨拶に来たが、マイナスポイントは否めない。とすると、こことの取引がイマイチなんだよねと言う話を他社にすることが出来る。それを聞いた二位以下の4社はどういう風に思うだろう?



一番シェアを持つ者の信頼が崩れたとき、二位以下の悔しい思いをした者たちは二位以下同士で戦うより、一位から奪いたいと思うのではないだろうか?



いやだ、私、悪い女。



でも、交渉や駆け引きはとても労力と気力と判断力を使うので、早いところ購入先を固定したい。



そう購入額が3%違えば、200万もの違いが出る。だから、コミュニケーションと交渉はやめるわけにはいかない。



是非、みんな一番良い値段をもって、この悪い女から契約を勝ち取ってほしいものですわ。

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