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彼方の剣~最弱無能の冒険者が幼馴染みの聖女を助けるため命を懸けたら、突然最強になった~  作者: 陽山純樹
第二章

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旅の終わり

 天霊の女性は俺に情報を伝え、やがて溶けるように消えていった。そして彼女から教えられた情報を基にして俺は鍵を見つけた。

 形は言葉通りの鍵だったのだが……俺が触れた瞬間、吸い込まれるように体の中へ消えていき、同時に体の内に熱が湧き上がり……すぐさま、消えた。


「……人間を辞めるのは一瞬なんだな」


 そんなどうでもいいことを俺は呟いた。なんというか……人を捨てるなんてこと、何かしらとんでもない出来事が起こるのかと思ってしまった。

 けど苦痛も何もなく、ただ淡々と……けれど、鍵を手に入れたことで俺は領域……つまり、女性が管理していた領域のことを完璧に把握する。


 この領域において俺はどうやら全能に近い存在となったらしい。魔力を行使すればこの領域内でおよそ自分にできないことはない。植物を自由に育成することも、あるいは魔物のような存在を生み出すことも可能。それこそ、人を生みだし世界を形作ることも――


「……とはいえ、そんな冒涜的なことはしないけどな」


 さすがに生命を自らの手で生み出すなんてことは勘弁願いたい……と、ここで俺は一つ気付いたことがある。それはおそらく、天霊の女性ですら予想しなかったことだと、俺は思った。


「人を辞めたにしろ、肉体はそのままか」


 魔力を吸収することで体の維持はできるようになったのだが……肉体構造はそのままである。つまり、俺は内に人としての魔力を抱えており……その魔力は、自然と回復していく。

 それと共に、もう一つ……人間の魔力はどうやら天霊の魔力にも影響を与えており――


「……まったく、とことん例外的な存在だな、俺は」


 間違いなく、俺はこの領域の外でも活動できるし、なおかつ人間の魔力が天霊の魔力をも回復させる……つまり、魔力が尽きることはない。

 人間と天霊の融合……さらに言えば、俺が魔王や天霊を倒せるほどの力を得た存在だからこそ到達した、極めて例外的な存在というものになってしまったのだろう。


「世界を変える力……か。確かに、俺の存在を含めてそうだな」


 では、これから俺はどうすべきなのか……けど、やることは変わらない。まずはフィーナのことを救う。そこからだ。


「聖女であることを辞めることはない……そして、代償について消すことは難しい……ならば、他の力を付与することで……でも、フィーナはあくまで人間だ。天霊の力をそのままあげるだけでは、その余波で新たな代償が生まれかねない」


 ……相応の時間が必要になるだろう。数ヶ月、数年……フィーナは今も聖女として戦い続けているだろう。なら、急がないと。


「……けど、ここに来るかもしれない天霊とか、邪魔立てされないよう処置はしておく必要はあるな」


 それに、魔王の動向なども……俺は動き始めた。とにかく自分にできることを、そしてフィーナを助けるために……そうした思いを胸にして、俺は作業を開始した。






 天霊になって力を持ったにしろ、それをきちんと扱えなければ始まらない。鍵を得た時点で様々な権能を行使できるようになったが、それをきちんと制御できるようにならなければ、フィーナを救うなど夢のまた夢だ。

 そう思いながら作業に没頭する……食事や睡眠の必要性すらないため、俺は昼夜問わずひたすら作業を続けた。丸一日全てを費やすことができたから、作業は思った以上に進展した。フィーナを救える……そういう可能性に至った時、俺はさらに意識を集中させ、ひたすら作業をやり続ける。


 そうしてあっという間に二ヶ月が経過した。その間に天霊の紳士みたいな存在がここを訪れるケースもあった。とはいえ、俺は持ちうる天霊の力を行使してお帰り願った。おそらく、天霊同士のコミュニティとかあるだろうし、俺のことは噂されていてもおかしくはないが……干渉されたのはそのくらいで、後は静かなものだった。


 魔王の動向についても、持ちうる力によって判明した。俺へ言ったように、山奥深くに隠れ力を蓄えるようだった。少なくとも百年単位でどこかへ攻撃するようなこともないだろう……俺も手出しするつもりはなかった。魔王はエルーシア王国の人々を殺め続けたが、俺もまた虐殺を行った。だから、何もしなかった。

 そして俺は、まったく変わらない花畑を見つつ、とうとうフィーナを救う手法を確立した……ここを訪れておよそ半年後の出来事だった。これでようやく彼女を……そして、俺の旅の目的が終わる。


「……後は、どうするかな」


 俺は空を見上げながら呟いた。身の内に抱える力は、それこそ魔王などを滅し自分が全てを支配できるかもしれない。だが、俺はそんな器じゃない。ならば、


「……フィーナ」


 そして最後に残った感情は、幼馴染みであり共に戦った最愛の女性の姿。それを思いだし、


「どうか、幸せになってくれ」


 そう呟いた後――俺は、権能を利用した力を開放した――


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