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彼方の剣~最弱無能の冒険者が幼馴染みの聖女を助けるため命を懸けたら、突然最強になった~  作者: 陽山純樹
第二章

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未踏の領域

 ――正直なところ、ここから先の話は蛇足だ。魔王との戦いは終わった。決して、スッキリした結末ではないかもしれないけれど……エルーシア王国が魔王の脅威に晒されることは、もうない。


 国がそれを察するのに時間は掛かるだろうけど、俺が伝えるのも変だし、放置することにした……いずれ、無人の魔王城へ踏み込み戦いが終わったと宣言する時が来る。そうなったらフィーナは……胸中で考えつつ、俺は船で大陸を渡った。


 そこから旅を続け、俺は少しずつ目的地へと歩んでいく。旅の途中で様々な人と出会った。けれど、記憶が消えるからと――深く関われば記憶が消えた際に不都合が生じると思い、極力交流することはしなかった。もし接することはしても、それはあくまで仕事の関係で。


「――君は、他者と関わろうとしないな」


 そんな風に戦士から言われたこともあった。こちらは曖昧に応じるしかできなかったけれど……俺の旅は続いた。道中で路銀を稼ぎつつ、ひたすら目的地へと向かう。この旅に意味があるのかどうか……宿の一室で不安に思う時はあったが、これしかないと俺はひたすら歩き続けた。


 その最中に、俺はエルーシア王国の状況を知った。魔王が消え去り、平和を取り戻した……王女含め、なぜいなくなったのかと疑問に思っただろうけど、とにかくもう魔物によって蹂躙されることはない。残っている魔物などもいるし、もしかしたら魔王が残した魔人とかいる可能性もゼロではないけれど……フィーナやゲイルがいる。きっと大丈夫だろうと考え、俺は旅を進めた。


 さらに大陸を渡り、やがて人が住まないような辺境へと辿り着く。地図を何度も確認し、俺は人類がほとんど足を踏み入れたことのない領域を進み始める。天霊は人のいない場所に居を構えている……という予想はしていたし、想定はしていた。道中、幾度となく魔物と遭遇する。魔王に仕えることのない、はぐれ魔族と呼べる存在とも顔を合わせる。


 俺はその全てを瞬殺できたのだが……中には俺のことを物珍しく見て話し掛ける存在もいた。はぐれ魔族というのは基本、魔法の支配下から何かしらの理由で逃れた者らしく、俺が話をした魔族は魔王のやり方についていけなかった、とこぼした。


「へえ、エルーシア王国近くにいた魔王が、ねえ」


 こちらは遠慮なく話をすると、魔族は興味深そうに発言した。俺のことを警戒してもよさそうなものだが、結局最後まで拒絶されることはなかった。


「人間を滅ぼそうなんていう輩の結末としては、ふさわしいかもしれないな」

「……そっちは人間を滅ぼすのに否定的なのか?」

「魔族は基本、荒っぽい性格で多種族を支配しようと考える輩が多いのは認めるさ。だが、それが全てじゃない。俺みたいな存在もいる……が、結局は少数派だし、こんな辺境で隠れ住むしか選択肢はないんだが」


 そう語る魔族の家は、自分自身でこしらえたのかずいぶんとボロかった。ただ他ならぬ魔族は暮らしに満足しているようで、不平不満はないらしい。


「ま、因果応報ってことじゃないか? 自分のやってきたことが跳ね返ってきた……ただそれだけの話さ」

「……そこまで割り切る魔族は――」

「いないだろうな。そもそも魔王に従っている魔族は、魔王の意見は正解だと決めてかかっている。でなければさっさと抜け出している……エルーシア王国を侵略しようとしていた魔王については、まあなんというか天霊に対し攻撃していた節もあるだろうから、同じようにとんでもない力で反撃を受けるのは……ま、自分のしてきたことが跳ね返ってきたって話だろう」


 ずいぶんと辛辣なコメントだが……魔族にも様々な考えを持つ者がいる、ということだろう。

 そうして変わった出会いをしながら俺は目的地へと進んでいく……そこは人間が足を踏み入れたことなどほとんどないような領域。俺が訪れる場所についても、探索した冒険者が名付けた幻想的な場所、ということで地図などにも記されているのだが、人里からは恐ろしいほど離れている。ここを目的として訪れる人間の存在など、物好きでもいないレベルだ。


 だからなのか、俺の歩みも必然的に遅くなる……どこまでも続く森。そして人間という存在が珍しいことで突っかかってくる魔物……数え切れないほど魔物を倒し、俺は進み続ける。これがフィーナを救うことに繋がることを願いながら……俺は、ようやく森を越えた。


 そして、俺の目の前に花畑が現れた。それはまさしく、夢の中で見た光景そのまま。少し歩むと不思議な感触があった。おそらく天霊が張り巡らせている結界を越えた……優しい風に包まれながら、俺は目的の場所である城を目にする。


 ――こうして俺は、旅の果てに辿り着いた。ゼルシアを離れてから、およそ一年の歳月が経過していた。


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