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彼方の剣~最弱無能の冒険者が幼馴染みの聖女を助けるため命を懸けたら、突然最強になった~  作者: 陽山純樹
第二章

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女神のごとき存在

 魔王から様々な情報を得たことで、俺は天霊という存在について調べることにした……のだが、最初にやるべきことは夢の中で訪れた場所。そこへ赴いて俺に剣を渡した存在と会うことだ。


 とはいえ、あの場所に俺は任意で行けるわけではない……のだが、ここで魔王は一つ提案をした。


「天霊の力を接触、もしくは魔族と干渉した場合、出てくる可能性はある。あくまで可能性の話であるため断定したことは言えないが。もしそちらが良いのであれば手を貸そう」


 ……俺は魔王の提案を受け、魔力を付与された。といっても表層に魔王の魔力を滞留させるだけでなのだが、この魔力が俺の持っている天霊の力と干渉して、天霊側が動く可能性があるらしい。


「天霊は俺のことを見ていないのか? もしこの状況を観察していたら、さすがに天霊が顔を出すことはなさそうだけど」

「その心配はない。天霊は常に力を与えた存在を監視しているわけではない」


 魔王の言葉が本当かどうかはわからないが、少なくとも今の俺の状況を見ていたら確実に俺を花畑のある領域へ呼ぼうとはしないだろう。

 よって、夢を見ればどうなのかがわかる……俺は魔王城の中にある部屋を利用して眠ることにした。不用心だと最初は思ったが、中途半端な場所で野営をやるとそれもまた危ないらしい。


「忘れたか? 貴殿は魔族を鏖殺した……恨みを持っている生き残りもいる。眠っていても貴殿が持つ力は発揮し続けるため、攻撃されても傷を負うことはないだろうが」


 では魔王城で眠って問題ないのかという疑問が生まれるわけだが、


「夜襲して決められるようであれば、貴殿がゼルシアの町に滞在している内にやっている」


 それだけだった。俺は魔王を全面的に信用したわけではないが……少なくとも危害を加えることはないと理解したため、部屋を借りることにした。その内装は最高の待遇という表現が合うものであり、俺に対し気を遣っているのがわかる。


 待遇に俺自身思うところはあったが……口に出すことはせず、目をつむり眠った。魔族の領域に入って、ひたすら無我夢中で戦い続けた。よくよく考えればこうして眠るのは……いつ以来だろうか。


「魔王が魔物を飛ばしてきて以降、まともに休んだ記憶がないな……」


 にも関わらずここまで全力で突っ走ってきた。よほど天霊の力が俺を支えているのだろうと考えつつ……目をつぶると、あっさりと眠りに入った。


 天霊のいるあの領域に辿り着くかは、賭けではあったのだが……魔王の提案を受け入れたためなのか、俺は花畑のある、あの空間へと辿り着いていた。


「……行くか」


 俺は一つ呟くと全力で駆け出した。その目的地は奥にある城。そこに、俺に力を授けた存在がいるはずだ。もしいなくても……山を登って周囲の状況を確認し、ここがどこなのか情報を得ることにする。

 飛ぶように駆け、一気に城へと近づいていく。夢から覚める可能性もあったけれど、戦い続けて疲労も溜まっている今ならば、そうそう覚めることはないだろうという考えもある。


 実際にその通りだったのかはわからないが……結局恐ろしい速度で道を突き進み、俺はあっさりと城の近くまで辿り着いてしまった。

 見た目は白亜の城ではあるのだが、ゼルシアのように城壁があるわけでもないし、城の大きさとしては小規模だ。俺は無言のまま城へと入る。門は開いている上に、中への扉も鍵は掛かっていなかった。


 中には魔法の明かりが存在しており、昼間のように明るい空間が広がっていた。カツカツと大理石のような建材で作られたエントランスを歩く。すると、


「……あ」


 真正面にある廊下。そこに、女性が立っていた。間違いない、俺に力を授けた……あの女性だ。

 俺は最初、この女性こそが女神リュシアなのではと考えたのだが……魔王の言葉が正しければ事実は違う。


「……あんたに、聞きたいことがあってここに辿り着いた」


 口を開く。それに対し女性は……コツコツと足音を立て、俺と数歩分の距離に近づいた。

 俺は次に告げるべき言葉を頭の中で考える。向こうは質問を待つ構えであり、こちらが何かを言わない限りは声を発することはないだろう。


 もし魔王から得た情報について尋ねた場合……天霊側が強制的に俺を夢の中から追い返したら、天霊側はクロということになる。なぜなら魔王の語ることが嘘であれば、それを否定して事情を説明するだろう……仮に事情を説明せずとも否定はする。けれどそれをせずに追い返したとすれば、逆説的に魔王の語っていることが正しい可能性が高くなる。


 ならば、俺が問い質すべきものは……女性は佇み、俺が口を開くのを待ち続ける……それに対しこちらは、


「……あんたに力をもらったこと、それは感謝している。おかげで、大切な人を守ることができた」


 その言葉に、女性は微笑を浮かべる……それはまさしく、女神のごとき微笑みだった。


「だが、その上で……俺自身が答えを得るために、質問させてもらう」


 そう前置きをして……俺は天霊へ向け、言葉を紡いだ。


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