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彼方の剣~最弱無能の冒険者が幼馴染みの聖女を助けるため命を懸けたら、突然最強になった~  作者: 陽山純樹
第二章

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新たな気配

 魔物を撃破後、俺は屋敷地下にあった魔法陣を徹底的に破壊した。それで魔物の生成手段が喪失するのか……専門的なことはわからないので、これで機能を失うことを願うしかない。

 そして、屋敷内をくまなく調べたが、地下で遭遇した魔族以外に敵はいなかった。元々家主しかいなかったのか、それとも屋敷という形だがここは魔物の生成場所で、元々魔族が住んでいる場所ではなかったか……理由は不明だが、他に気配はなしだ。


「とりあえず、目的は達成したと考えていいのか……?」


 魔物を生成していたのは間違いなく、だからこそ当初の目的は……いや、目的以上の成果を上げたと言ってもいい。

 とはいえ、ここまで短時間で結果が出るとは思っていなかったため、果たして本当にこれで終わりなのかと疑問がよぎるのだが……俺は屋敷を出る。地面にある魔法陣もひとまず剣で両断し地面を抉って破壊する。


「ここが魔物を空中へ飛ばしていた場所なら、魔族側は同じようにできなくなるはず……」


 俺は気配を探る。骸骨騎士と同等の気配がないのか……それを探してみるが、


「周辺にはないな……」


 俺は屋敷の周りを確認。ここは盆地の一角であるため、木々に囲まれた山岳地帯を見通すことはできない。


「どこか山頂に赴いて、目視をしながら気配を探る……しかないか」


 帰る気は毛頭なかった。魔族が棲まう領域は思った以上に閑散としているため、これなら他にも色々と動くことができる……そういう思いから、作戦を続行する気だった。

 よって俺は適当な山の頂を目指して走り始める。体力的に問題はないし、道中で魔物と相対しても一撃なのでこちらも問題はない。懸念は俺を見つけ敵側がどう動くのか……報復のために魔族が山を下りたら、全速力で戻る必要がある。


 やがて俺は屋敷のあった場所近くの山の頂へ到達した。魔族の領域に踏み込んでそれほど時間は経過していない。夜が来るまでどれだけ行動を起こせるか……いや、逆に夜の方が視界が利かなくなるので良いだろうか?

 山肌を見回しながら気配を探る。骸骨騎士と同じ魔力があるのかどうか……山頂でしばし探してみるが、反応はまったくない。


「屋敷の施設を破壊したことで……終わりか?」


 呟きつつ俺はなおも気配を探り続けるが……そもそも魔族の気配もない。


「ルダー砦周辺は魔族がほとんどいないな……」


 俺は方角的に東を見る。魔力――それが明らかに多いのは東側。逆に言えば西側にはほとんど気配がない。

 その中で、とりわけ黒い魔力があるのを俺は感じ取る。今はまだ距離があるので判然としないが、それは間違いなく――


「魔王の魔力、だよな……」


 骸骨騎士と同質なのかなど、細かい情報はまったくわからない。けれど、どうやらあっちに魔王がいて、俺がいる周辺に魔族がいないことはわかった。


「本来ならこれで作戦終了と考えてもいい……施設を破壊できたわけだし……」


 と、そう呟いた時だった。屋敷付近――先ほどいた場所に突如魔力が。


「これは……転移魔法か?」


 一瞬で移動をしてきたのであればその可能性が高そうだ……ああ、そういう魔法があるなら人口密度のなさなんてほとんど意味を成さない。どこか一ヶ所に固まっていても問題はない。


「どうする……?」


 屋敷の惨状を目の当たりにすれば、敵は何事かと動き出すだろう。それとも異常を感じて魔族が来たのか? どちらにせよ選択しなければならない。出現した魔族に対処するのか、それともここは一度退却するのか。

 もし転移してきたのであれば、それを利用して敵の本拠へ乗り込むことも可能だろうか……? リスクの高い考えではあったが、俺の足は屋敷へ再び向けられた。


 全速力で屋敷へと向かう。その間に索敵を行い、周囲に魔物などはいないこと。そして現れた魔族は複数だということが判明する。

 こちらは可能な限り気配を押し殺して……どれだけ抑えてもここは魔族のテリトリーなので限界はあるだろうか? ただ魔族達は屋敷の中へ入っていったのがわかった。それなら、


「倒せる、か?」


 そこで俺も屋敷へ戻ってくる。周囲に他の敵はいない。なら建物の中に入って戦うこともできる――

 そう思った矢先、屋敷の窓を貫いて魔法が飛んできた。途端に聞こえる轟音と濃密な魔力。俺は剣で魔法を弾き飛ばし……その瞬間、屋敷の外に魔族が現れる。その全てが男性で、一様に黒衣を身にまとっている。


「人間か……ここを制圧したのはお前か?」


 問い掛けに対し俺は何も声を発さず、剣を構える。魔族は三人。なおかつ背後には別の魔力があるけれど……それはどうやら、魔族達がやってきた転移魔法陣か何かの魔力らしい。

 俺はそこでいけると考えた。感じられる魔力の大きさは先ほど交戦した屋敷の魔族と変わりがない。ならば、対処できるはずだ。


 魔族達は俺を警戒しながらさらなる問い掛けをしようとした――みたいだが、それよりも先に俺は魔族へ踏み込んだ。相手は魔力を発して威嚇をしていたが……意味を成さなかった。

 向こうもまさか一人で突撃してくるとは想定していなかったようで、三者は一様に驚いたが、即座に臨戦態勢に入った。けれど、仕掛けるのはこちらが早い。


 一人目を倒すことはそう難しくない。一撃で倒せる以上は……しかし、残る二人は俺の能力を見て逃げる可能性がある。それを防ぐには、次の行動を移す余裕がないくらいに猛攻を仕掛ける必要がある。

 けれど、それをやるしかない……! 一番近い魔族に対し俺は剣を一閃する。向こうは魔力によって結界を構築し防ぎに掛かったが……俺の斬撃は、それを容易く破壊する!


「なっ……!?」


 驚愕した魔族に俺は剣戟を叩き込んだ。それで相手は声もなく消滅し、俺はすぐさま残る魔族へ目を向ける。

 魔族達は俺を見て驚愕していた。そして戦うのか逃げるのか……決断するより先にこちらは踏み込んだ。相手はそれにより応戦の構え。まるで図ったかのように俺に対し同時に踏み込んだ。


 どうやら連携できる様子だが……俺は剣に魔力を込め、大振りの横薙ぎを放った。魔族の動きをしっかりと捉えた剣。それは相手の防御を容易く貫通し……向こうに何をさせることもなく、滅することに成功した。


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