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彼方の剣~最弱無能の冒険者が幼馴染みの聖女を助けるため命を懸けたら、突然最強になった~  作者: 陽山純樹
第二章

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山中の建物

 一直線に目的地へ進むことで、俺の予想以上に早く当該の場所へ辿り着くことができた……まあ、山道なんてものは本来は坂を避けるようにしたり、山道を進んだりするもので、俺のやり方は無茶苦茶なんだろうけど。


 ともかく今の俺は単独行動であるためそれができる……近づいてわかったのはかなり大きい屋敷のような場所。そして、建物の前には規模が小さいながら土で固められた大地が存在しているのだが……、


「魔法陣……ということは、あの魔物はここで空へ飛ばされたのか?」


 地面には多数の魔法陣が描かれていた。とはいえ、あくまで描かれているだけで魔力は感じられない。おそらく魔力を装填して魔法発動と共に放出するタイプなのだろう。もしゼルシアなどを襲った魔物がここで生み出されて攻撃したのであれば、ひとまず次の攻撃までは時間が掛かるのかもしれない。

 そして肝心の建物だが……屋敷であるのは間違いないし、人が建造する物と外観はそれほど違いはないのだが、まとう気配はやはり異質。というより、


「あの魔物の気配がこびりついている……?」


 そう形容するのが正解かもしれない。あの魔物がどういった経緯で生み出されたのかは不明だが、少なくとも相当な無茶をやったのだろうと、屋敷に漂う魔力を見て予想することはできた。

 ただ、この様子から魔物を生成した魔族側も何かしらリスクを背負っている可能性がありそうだ……俺は屋敷へと入る。入口に仕掛けはなく、かといって気配もない……まあ魔族の領域に人間が入るなんて到底考えられないので罠の類いがないのは理解できる。ただ、魔族がいる様子がないというのは……?


「いや……待て」


 俺は入口付近で立ち止まる。屋敷内は魔法の明かりによって照らされ歩くには不自由ない。構造そのものは人間が暮らすものとそう変わりはないように思えるのだが……屋敷なんてものに入った経験があまりないので、判断が難しい。

 そして俺が立ち止まったのは……屋敷の下方向に気配を感じ取ったためだ。


「どこかに地下室があるのか……」


 呟きつつ俺は剣を握り直す。ここは敵の本拠だ。警戒を緩めてはいけない。そう思いながら屋敷の探索を開始する……魔物の気配もないが、屋敷内にも外で感じた時と同様に漂う魔力が異質なのは変わりがない。むしろそうした気配が充満しているため、肌にまとわりつく感触が不快な気分にさせる。

 ただ、なんとなく息苦しいだけで実害はない……足音を完全に殺すことができないので、侵入者がいるのはすぐにバレるだろうけど、俺は構わず奥へ進んでいく。


 ――もし仲間がいたら、探索することも避けるべきだと言うかもしれない。調査をするにしても何の援護もなく敵陣へ踏み込むというのは自殺行為だ。

 けれど、今の俺は……少しでも二度目の襲来を防ぐために尽力しなければという思いで、先へ進んでいた。名目は調査にしても、少なくとも魔物を飛ばした魔族は倒さなければいけない……そうした思いはあり、だからこそこうして屋敷の中へ踏み込んだのだ。


 やがて――俺は地下へと繋がる階段を見つける。その先は異質な魔力が濃くなっており、なおかつ魔族の気配もある。


「敵がいる……な」


 情報をとるだけなら、屋敷内を調べて終わるだけでいいが……敵が次の行動を起こすより先に、ここで魔族を倒せるなら倒すべき。

 俺はそのように判断して……足を前に出した。階段を少しずつ進み、警戒を怠らず……階段を下りきると両開きの扉が現れる。


 気配を探ると、明らかに魔族がいるのがわかった、よって俺は剣を強く握り――扉を蹴破り、踏み込んだ。

 それと同時に部屋の状況を確認する。そこはかなり広い空間。なおかつ床には巨大な魔法陣。そこから骸骨騎士と同じ魔力を感じ取ったため、この場所こそ魔物を生成した場所なのだと察することができた。


 そして、部屋の中央に……俺を見て驚愕する黒い髪を持つ男性魔族が。


「なっ……!?」


 なぜ人間がここに――というのが言葉を発さずとも表情でわかった。よって俺は即座に間合いを詰めた。

 目の前にいるこいつが全ての元凶なのか不明だが、少なくとも魔物を生成していた魔族であるのは間違いない。だからこそ、ここで――


 魔族はまったく動けなかった。戦闘能力は低いのだと想像できる。そして俺は容赦なく剣を振り、魔族へしかと刃を当てた。


「あ……」


 小さなうめき声と共に、魔族は消滅する。あっけない勝利……ではあるが、これで終わりかどうかはわからない。


「とにかく、調べないと。ここが魔物を生み出していた場所なのか――」


 そう呟いた矢先、足下の魔法陣から魔力が生まれた。即座に剣を振って魔法陣の破壊を試みるが、既に発動してしまったか魔力が一気に放出された。


「っ……!!」


 そして次に見えたのは、およそ十体ほど生成された骸骨騎士。どうやら今まさに、新たな魔物を生成していた様子であり……俺は即座に手近に出現した魔物を斬った。

 その一撃で、魔物を倒すことには成功したが、次の瞬間他の魔物達が一斉に襲い掛かる。こちらの動きを見てなのか、その動作は俊敏であり、前に戦った時と同様にどうやら情報が共有されるらしい。


 とはいえ、向かってくるなら話は早い……! 俺は全力で剣へ魔力を込めた。多少強引でも構わない。一気に攻勢に出て、この場に出現した魔物は全て破壊する!


 飛びかかってくる骸骨騎士に対し、俺は全力の剣を解き放った。それと共に魔物は一気に両断され、数を大きく減らすが……さすがに全て、というわけにはいかない。

 これで逃げられると厄介だが……と、魔物はそれでも俺へ向かってくる。ここが魔族の領域であるためなのか、それともここが自分達の陣地であると認識しているのか、とにかく押しの一手。ならば、


「はあああっ!」


 声と共に俺は俺はさらに剣を薙ぐ。それでさらに魔物の数を減らす。

 魔族が援軍として現れることもない。ならばここにいる魔物を倒して終わりにする……そういう目論見を抱き、俺はなおも剣を振り続け……やがて、全ての骸骨騎士を倒すことに成功した。


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