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彼方の剣~最弱無能の冒険者が幼馴染みの聖女を助けるため命を懸けたら、突然最強になった~  作者: 陽山純樹
第二章

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勝利と業火

 ――そうして、戦いが終わったのは夜を迎えてからだった。全ての魔物を俺は倒しきり、それでもなお女神の力によって体力は問題ない。

 ついでに言えば、一度骸骨騎士の攻撃を食らったが、問題はなかった。この町へは防御力強化のために訪れたが、骸骨騎士クラスの能力でも問題はないということは、防具そのものも必要ないかもしれない――などと思った。


「いや、それでも魔王との戦いなら……かな」


 その呟きは夜空へと溶けて消えていく……多数の火と魔力の明かりによって町が照らされる。救援に駆けつけた騎士達は、町の状況を見てまずは瓦礫に埋まる人々の救助から始めていた。

 戦いには勝利したが、それはひどく苦々しいものだ。魔物達は無差別に破壊をもたらし、町に再起不能とさえ思えるほどの打撃を与えた。多数の死者が出ていることは既に俺も認識している。どれだけ力を持っていようとも、一人では……そんな思いが胸の内に宿る。


 それでも、こうして倒しきることができたのは良かったのかもしれないが……物思いに耽っていると、ゲイルが近寄ってきた。


「そちらは大丈夫そうだな」

「まあ、な……被害については――」

「建物の被害だけを考慮しても、相当だな……全体像がわかるのはもう少し経ってからだろう」

「……キーリさんは?」


 俺の問い掛けにゲイルは苦い顔をした。それと同時に心のどこかでやはりか、と思ったりもした。


「……最初、俺を狙いに来たのかと思ったけど」

「ここに俺達がいたことで、差し向ける魔物の数を増やした可能性はある。ただ、やはり女神の力を所持しているキーリさんを狙ったと考える方が自然だとは思う」

「魔王はそうした力の持ち主を倒すべく……?」

「可能性は高そうだ」


 ――その後、俺とゲイルはキーリの店へと向かう。そこは瓦礫によって完全に埋まっており、話によるとキーリ本人も――


「防具についてのことはともかくとして」


 と、ゲイルは俺へ向け発言する。


「敵はどうやら女神の力を有する人間を狙っている……そこは間違いないようだ」

「人間から情報を得ているのか? それとも――」

「どういう解釈だってできるとは思うが、魔王はおそらく女神リュシアの力を感じ取れる……のかもしれない。どういう理屈にせよ、魔王がどういった目的で行動しているのかは、この町への襲撃で理解できた」


 そこまで語るとゲイルは夜空を見上げた。


「聖女様の力以外にも、厄介な存在が出てきた。それを踏まえ、女神リュシアに関する能力を保有する人間を始末していく……そういう方針なんだろう」

「先日のゼルシアへの襲撃はどう考える?」

「あれについては、今回の布石かもしれない」

「布石?」

「様々な種類の魔物……さらに言えば質を含め、作成している。前回の戦いでは質より量。そして今度は量より質……そういう解釈もできる。これはあくまで推測だが」

「……なら今後、女神リュシアに関連する人間達が狙われるのなら――」

「もし魔王がさらに魔物を使って襲撃するのであれば、今後も同様に町が狙われる危険性がある。なおかつ、何の関係もないような町へ攻撃を仕掛けたら、相手は女神リュシアの力を把握することができると考えてもいいだろうな」

「……魔王は、俺達でも把握できていないような人間を見つけていることになるためか」

「そういうことだ……と」


 騎士が近づいてくる。そして俺達に向かって、


「一つご報告が」

「どうした?」

「その、夜に到着した商人によると、ゼルシアの方角から――」


 騎士の言葉に、俺達は即座に町を離れた。






 ――到着した時、全てが間に合わなかったと察した。町が燃える炎が夜空を焦がし、さらに堅牢な城壁はところどころ崩れている。その惨状を見れば戦いがどうなったのかは一目瞭然であり――


「……同じ魔物が、襲撃したということだな」

「俺達をあの町へ釘付けにして……」


 俺の言葉にゲイルは頷いた。


「もしかすると主目的はそこだったのかもしれない。さすがに魔物が襲撃しているのに町を見捨ててゼルシアへ戻ろうとは思わないからな」


 俺達は町へと入る。業火によって熱気が充満し、俺は顔をしかめつつ城へと急ぐ。


「人がほとんどいないな……」

「襲撃時に避難させたんだろう。ここには多数の兵士がいる。大丈夫だとは思うが……」


 ゲイルがコメントする間に城へと到着。気配を探るが、魔物はいないようだ。

 城内に入ると、多数の怪我人が収容されていた。兵士、城で勤務する人や、一般の人まで……逃げ遅れた人や動けない人を城に避難させたのだろう。


「――無事でしたか」


 それはパトリの声だった。俺達の下へ駆け寄ると、彼女が発言するより先にゲイルが口を開いた。


「悪いな、離れていて」

「状況は聞いています。あなた方が町を見過ごすことはできなかったでしょうから、仕方がない……エイラ王女がお待ちです。案内します」

「王女が? 大丈夫なのか?」

「安全は確保していますから」


 ――フィーナはどうなったのか。俺は問おうとしたのだが、パトリは有無も言わさず先へ進んでいく。その後ろ姿に問い掛けるようなことはできず、俺とゲイルは黙って彼女に従った。

 やがて会議室へ辿り着き、入るとそこにはエイラ王女に加えてフィーナとジェノの姿が。両者とも無事だったか、と安堵しつつも二人はいくらか負傷しており、激しい戦いだったのだと察せられた。


「お二方、町の防衛ありがとうございました」


 開口一番エイラ王女は言う。ただそれに対し俺は、


「あの場に行かなければ、町が襲撃されていなかった可能性も――」

「キーリの存在がいた以上、どちらにせよ襲撃は行われていたことでしょう」


 エイラ王女は言う。どうやらそう語るのには根拠があるらしかった。


「早馬で情報が来ました。合流しようとしていた女神リュシアの力を持つ戦士……その人物が魔物の襲撃に遭ったと。対処はして被害はありませんでしたが、それと引き換えに戦士が命を失いました……相打ちだったとのことです。魔王は女神リュシアの力を持つ存在を狙って攻撃を仕掛けている……それは、間違いないようです」


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