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彼方の剣~最弱無能の冒険者が幼馴染みの聖女を助けるため命を懸けたら、突然最強になった~  作者: 陽山純樹
第二章

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後悔の念

 見つけた骸骨騎士と即座に交戦しようとした直後、敵は突如大きく後退を始めた。その動きは先に戦った二体と比べてもはっきりしており、俺はその動きであることを直感する。


「もしかして、魔物達は思考を共有でもしているのか?」


 一体目より二体目の方が対応が早かった。そして三体目……俺が追随する魔物はなおも後退する。仕留めなければと強く感じ、俺は全力で骸骨騎士へ肉薄する。

 相手はそれでもなお、逃げようと動く。その周囲では悲鳴を上げながら右往左往する町の住人達。人的被害が出ていないのか……不安になりながら俺は、とうとう骸骨騎士を間合いに入れる。


 即座に剣を一閃するが、敵はそれを巧みにかわした。剣で受けることはない。俺の攻撃を防いでも問答無用で両断されてしまうと悟っているようだった。

 それで間違いなく俺の情報が伝わっていることを察する。どういう原理かわからないが、少なくとも確実に言えるのは戦えば戦うほどに強くなる魔物、ということになる。


「無茶苦茶面倒な魔物を生み出してくれたな……!」


 俺はそう呟きながらさらに魔力を引き上げる。骸骨騎士はそれでもなお逃げようとしたが――今度は、俺の方が速かった。

 斬撃を叩き込み、今度こそ魔物は消滅する。これで、どうにか……そう思った矢先、さらに轟音が響く。


「四体目か……!」


 既に町に被害が出ている。魔物の特性から考えると放置はできない。

 俺は即座に音がした方角へ足を向けようとした時、俺に駆け寄ってくる人間の姿――ゲイルだ。


「大丈夫か!?」

「こっちは平気だ。でも、魔物が……」

「相当ヤバい魔物なのはわかる。俺はどうにか騎士と連絡をとって避難してもらうようお願いしたが――」


 まるで落雷のような町を震わす大きな音が、響き渡った。何事かと見回した時、町中にあるいくつもの建物が倒壊していた。


「無差別に破壊して回る気か……!?」

「そんな雰囲気がひしひしとするな」


 ゲイルは苦々しい口調で俺に応じると、


「とにかく、放置していたら町がなくなるな。今の攻撃で犠牲者もおそらくは……」

「すぐに、止めないと。ただ、あの魔物はどうやら学習しているみたいだ」

「学習?」


 ゲイルへ説明すると彼は「なるほど」と告げ、


「それはかなり面倒だな。魔王もやり方を変えつつこちらに攻撃を仕掛けているというわけか」

「俺の剣なら一撃だから、とにかく魔物を見つけて倒さないと――」


 と、そこへ再び空から気配。見れば、五体目の黒い点が見え始めていた。


「……俺は、全力で魔物を倒す」

「わかった。俺の方は町の人の保護と騎士と連携して対処にあたる」


 ゲイルは頷き、動き出す。俺もまた全速力で駆け……骸骨騎士の下へ向かうべく突き進む。

 だが、魔物の気配が変わった。それと共にまだ俺の姿が見えてもいないのに魔物の気配が遠ざかり始める。


「徹底的に逃げる気か……!?」


 それと共に、さらなる轟音。町を破壊しながら俺から逃げるということか……!?

 魔物の目的がなんなのか判然としないが、この状況だと間違いなく破壊そのものを目的にしているのは間違いない。ではなぜそこまで――疑問はあったが、考えている暇はないと俺は全速力で突き進んでいく。


 しかし相手もまた逃げているため、追いつくことができない。その間にも破壊音は聞こえ、さらに五体目の魔物が――


「……このっ!」


 怒りの声を発すると共に、俺はさらに足へと魔力を集め――駆けた。魔物の気配を探り、文字通り最短距離を突っ走り……それでようやく、俺は骸骨騎士を肉眼で捉えることに成功した。

 魔物は確かに学習しているが、スペックそのものに変化はないため、向こうが全速力で逃げたとしても追いつくことができる……そして一気に間合いを詰めて一閃した剣戟を、魔物を避けることができなかった。


 四体目の魔物が、そうしてようやく滅び去る……後に残ったのは瓦礫となった町並み。悲鳴が多数聞こえ、生き埋めにされた人を助けようと男性の声が聞こえてくる。

 俺は剣を強く握りしめ、五体目の魔物が落ちてくるであろう場所へ走り出す。とにかく、被害を少しでも出さないために、即座に倒すようにしなければ……!


 そうして俺は頭上を見上げ――そこで、一つ気付いた。


「……あ?」


 五体目の黒い点。それが近づいてくると共に、さらに空から気配。降ってくるのは、いくつもの黒い点。一つや二つではない。まるで戦う俺をあざ笑うかのように、多数の黒点が飛来しようとしている。

 その瞬間、俺は思わず立ち止まった。それと共に、敵が何の目的でこの町を……考えられるのは、


「俺のことに気付いたのか……?」


 魔人や魔族との戦いを魔王がどこかで見ていたのならば……もし、俺がこの場所を訪れていなかったら、おそらく魔物が降ってこなかっただろう。そう思った途端、後悔の念が胸の内に湧き上がった。

 けれど、次の瞬間立ち止まってはいけないと剣を握り直して走り出す。とにかく、少しでも被害を少なくするために動かなければ――五体目の魔物が地面へ着弾する。即座に出現した骸骨騎士は無差別に魔力の刃を放って町を破壊していく。


 それを俺は押し留めるべく、全力で肉薄した。魔物の能力についてはおおよそ理解できた。ならば、どれだけ逃げても追いつけるだけの力で応戦するまで……正直、どこまで体力がもつのかわからない。けれど、相手が無茶をやるなら、俺もまた相応に無茶をするだけだ。

 そして、五体目の魔物を瞬殺した時、いくつもの黒点が町の周辺に相次いで着弾した。それと共にさらに上空から気配。状況はもはや絶望的。町の被害をこれ以上減らすというのは、俺一人では無理だ。


 ならば、速やかに敵を倒すしかない――苦い決意を携え、轟音が響く中で俺は全力疾走する。もう、空を見る余裕もない。

 けれど、一度だけ……六体目の魔物を倒した後、俺は一瞬だけ空を見上げた。さらに追い打ちを掛けるように飛来しようとする魔物。


 それを見た瞬間、思った……この町にとって、まさしく世界の終わりであろうと。


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