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彼方の剣~最弱無能の冒険者が幼馴染みの聖女を助けるため命を懸けたら、突然最強になった~  作者: 陽山純樹
第二章

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破壊者

 砂埃が周囲を舞い、俺は口を手で覆いながら飛来した何かを注視する。

 轟音によって周囲に残っていた人達は残らず町の中へと入る……唯一俺だけがこの場に残り、飛来してきた何かを探る。


 やがて見えたのは、漆黒の球体。大地に激突したというのはその形は保ったままであり、損傷している様子は皆無。

 そして感じられる気配は、


「魔王の、魔力だな……」


 これは間違いなく魔王が仕掛けた何かだ……剣を抜き臨戦態勢に入った瞬間、突如ボロボロと球体が崩れだし、中身が姿を現した。

 それは、鎧を着た骸骨騎士……手には黒い剣に黒い鎧。その体も骨が持つ本来の色合いである白ではなく、黒……体が武具を構成しているありとあらゆるもの全てが黒いという、異様な風体だった。


 そして、感じられる魔力は……俺達がここまで戦ってきた魔人や魔族に匹敵するかもしれない――そんな直感を抱くほどに、異質な力を持っていた。


「っ……!」


 俺は即座に仕掛けた。こいつを野放しにすることはできない。ここで仕留めなければ大惨事になる……そう考えたが故の行動。

 骸骨騎士はそれに反応した。剣をかざし、俺の斬撃を受けようとする。


 その瞬間、俺と魔物の剣が激突し――俺の刃はいとも容易く漆黒の剣を両断した。そのまま勢いで体を斬る……そう思ったが、骸骨騎士は俊敏な動きでそれをかわして見せた。


「速い……!」


 俺は一つ呟く。非常に反応がいい。剣が両断された瞬間、即座に敵は足を動かしていた。魔物である以上、何かしらの命令を受けて動いているはずだが、武器を破壊されたら距離を置けとか、そういう指示を受けているのかもしれない。

 だとするなら、俺の力だって看破している可能性がある。ならば早く倒さなければ厄介かもしれない……そんなことを思っていた時、骸骨騎士が剣を握る右腕に魔力を集め、その刀身を再生した。


 武器は体の一部。ならば一気に決めに掛からないと――そう思った矢先、今度は骸骨騎士が動いた。剣を振りかぶり、勢いよく俺へ向け一閃する。間合いの外であるため、魔力でも飛ばすのかと思い剣で受けようとしたのだが――次の瞬間、背筋がゾクリとなった。

 根拠などなかった。けれど俺は反射的に体を傾け斬撃が放つ魔力の刃をかわした――それは俺を越え、町まで到達すると、途端に轟音を生み出した。


「なっ……!?」


 振り向く。刃は町の入口にある木製の門を破壊し、その奥にある建物に直撃して家屋をたった一撃で半壊させた。すぐさま上がる人々の悲鳴。俺はそこで骸骨騎士がさらに魔力の刃を飛ばそうとしているのに気付いて、接近した。


「このっ……!」


 剣を薙ぐ。それによって骸骨騎士の刃が再度両断されて……刀身に秘められていた魔力が弾け、周囲に拡散した。

 それは、まるで矢のように鋭く、周囲の地面に音を立てて着弾する。街道が穴ぼこだらけになり、収束していないのにこれほどの威力なのか、と俺は内心で驚愕する。


 もはや一刻の猶予もない。次の攻撃が放たれる前に仕留めなければ……俺は剣を両断した状況ですかさず切り返す。今度は避ける暇も与えない。このまま決着をつける!

 そう決意した瞬間、俺の剣が骸骨騎士の体に当たった。その鎧にも体躯にも、相当な魔力を収束させていたはずだが……俺の剣は、何一つ関係なく魔物の体を両断した。


 ガラン! と一つ大きな音を立てて骸骨騎士は倒れ伏す。それでもなお頭は動き反撃しようとしたみたいだが……やがて力をなくし、塵となった。


「……危険な魔物だな」


 そう断言できるほどの力を、骸骨騎士は持っていた。もしかするとこうした個体がゼルシアや周辺の町に……そう考えると、まずい状況なのではと考える。


「いや、今は状況を確認しよう。とにかく、町に被害が他にないか……」


 そう思った直後だった。俺は頭上を見上げる。それは先ほどと同様に、明らかに魔力を感じ取ったためだ。

 そして、黒い点がまたも……しかも今度は複数ある。


 ――その時思ったのは、なぜこの町に魔物をけしかけるのか、ということ。


「俺達のことを狙っている……?」


 あるいはこの町にいるキーリを狙って……? 疑問は多々あったが、とにかく戦わなければならない。俺は全力で飛来してくると思しき場所へ、走り始めた。






 そして、今度は反対側の街道へ着弾する漆黒の球体。加え、時間差で別所にも球体が……迅速で目の前の敵を処理して、すかさず別の場所へ、という風に行動するしかない。

 球体が土砂を巻き上げ地面に衝突すると、俺は砂埃の中へ突入して球体へ接近。その球体へと斬撃を決めた。固い感触が手に伝わってきたが、それでも俺の剣は斬ることができた……しかし、こちらの攻撃を読んだか、魔物が球体から飛び出してくる。


 しかもそれは先ほどと同様に骸骨騎士。俺はすかさず接近して追撃の剣を放つ。これならいける……そう考えた矢先、魔物は大きく後退する。


「逃げる気か……!?」


 というより俺が球体を斬ったため、魔物は警戒しているのか……俺が追おうとするとさらに後退しようとする気配を見せる。まずい、と胸中で思っていると、後方――町から轟音が聞こえてきた。

 それは明らかに、別所で着弾した球体から出てきた魔物の破壊行動。俺は剣を強く握りしめ、魔力を静かに高める。このまま仕掛けても魔物はさらに逃げようとする。ならば一瞬で魔力を高め、相手が逃げる暇もなく近づいて斬るしかない。

 背後から聞こえる轟音に、俺は必死に自制して目の前の敵へと意識を集中させる。骸骨騎士はそれで動きを止めた。こちらが無闇に仕掛けないことで、様子見の構えを見せたらしい。


 だが、それこそ俺にとって勝機――地面を踏み抜き、加速する。骸骨騎士が反応できない急接近により、俺は敵が剣をかざすより先に、斬撃をその体へと叩き込んだ。

 上半身と下半身が分離し、魔物はあっけなく倒れ伏す。そして塵と化したのを確認して、俺は踵を返す。


 建物が破壊される音が聞こえる。それに嫌な予感を抱きながら、俺は町へと疾駆する。悲鳴を上げ人々が逃げ惑う中、俺は町中で暴れ回っている骸骨騎士を発見した。


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