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彼方の剣~最弱無能の冒険者が幼馴染みの聖女を助けるため命を懸けたら、突然最強になった~  作者: 陽山純樹
第二章

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負の側面

 ゲイルの指示によって俺は宿をとり、その後に彼と合流して明日店に来てくれと指示されたため、今日のところは滞在することに。


「フィーナのことはどうするかなあ……」


 昼間ではあるが酒場に入り、適当に注文して雑談をすることに。俺の呟きに対しゲイルは、やれやれといった表情を示し、


「大層な話でもないだろ?」

「……尾を引く可能性があるというのは、懸念事項じゃないか?」

「心配いらないと思うけどな」


 あくまで楽観的に語るゲイル。まあ、騎士パトリとかエイラ王女とか、フォローできる人はいるだろうし、解決への道筋はあると思うのだが――


「そこに注意を払うなら、もっと別のことに目を向けるべきだと思うが」

「……何?」


 ゲイルの言葉に俺は眉をひそめる。


「別のこと? 他に懸念すべきことがあるのか?」

「そうだ……その様子だと、考えついてもいないか。ついでに言うなら、気付いているのは俺だけっていうオチもあり得るか」

「そんな、まずい事実が隠されているのか?」

「ああ、別に裏切り者がいるとかそういうことを言っているわけじゃないんだ。今後、魔王と戦っていく中で大変な戦いを強いられていくわけだが……実績から考えて一番負荷が掛かるのは君だろうと思う」

「それは、至極当然の話じゃないか?」

「……俺としては、君自身が何かしら体に影響があるだろうと思っている」


 ――フィーナが戦うことで記憶をすり減らすように、俺も戦いの中で何か影響があるって話か。


「ちなみにだが、キーリさんだってとある問題を抱えている。本人は別に構わないとして、その問題を受け入れているみたいだが」

「……どういう問題があるんだ?」

「本人は別に話していいと言っていたから説明するが、端的に言えばこの町から出ることが難しい」

「は?」

「道具に魔力が染みついていると言っただろ? その影響なのかわからないが、キーリさんは仕事道具が身近にないと著しく体調を崩してしまう。これは女神の魔力が体内に入り込んだことで、それに近しい物が近くにあって魔力の影響を受けていないと問題が生じるということらしい」

「女神の魔力が……」

「これだけ聞くと、なんだか呪いのようにも聞こえてくるな」


 呪い――記憶を削るフィーナのように、女神の力は代償となるものが存在するというわけか。


「他の魔力保有者も何かしらあるだろ……エイラ王女が連れてきたジェノって人も、話を聞いているとどうやら制約があるし」

「制約……?」

「あの人は、自分自身を強化することが難しいらしい。女神由来の力だとわかって以降は、特にその性質が顕著になった」


 ……彼自身が言う通り、最前線で戦うのは向かないというわけだ。


「アレス君の場合は、女神から直接力を賜った……そればかりでなく、夢の中で遭遇までした。そこまで深く関わって……だからこそ代償がない、というのはできすぎた話だと思ったまでだ」

「代償が力の大きさに比例するなら、俺が一番問題が出ておかしくないよな」

「でも、何もないだろう?」


 確かに、体調面に変化はない。むしろ、力を手にする前と比べて元気すぎるくらいだ。

 ただ……俺は一考する。


「……女神の力は、普通の人が持てばデメリットもある……という解釈でいいか?」

「力が大きすぎて、体に無理を強いると言いたいわけだな。ああ、エイラ王女もそうした見解だ」

「俺に影響がない理由は……力を得た経緯を考えると、俺は一度死んだと言って差し支えない形でこの力を手にした」

「つまり、本当は自分は死んでいて、力によって生きながらえていると?」

「そういう可能性もある。力をダイレクトに渡したことで、生命が維持されている……魔王を倒したら、力が抜けて俺は死ぬ可能性がありそうだな」


 ゲイルは渋い顔をした。俺としてもあまり想像したくない話だが、可能性としてはゼロじゃない。


「もう一つ、推測できるとしたら……莫大な力を女神は与えたけど、その代償は既に効果を発揮していて気付かないだけ」

「気付かない……」

「代償の話で思ったんだが、フィーナを含め自分自身を対象にしているけど……キーリさんの場合は少し違うよな?」

「というと?」

「あの人は、周囲に女神の魔力がなければいけない……結果的にあの人は鍛冶という仕事をしていて、道具に魔力が移った……それは見ようによっては、外部に影響をもたらしていると言えるよな?」

「まあ……確かに」

「俺が気付いていないというのはそこだ。俺が得た力は、不可思議で観測も難しいけど、膨大なものであるのは確かだ。とすれば、実際他者に影響を与えてしまう可能性がある」

「なるほど、君の場合は自分自身に影響があるだけでなく、他者にも……と考えるわけか」

「そうだ」


 ゲイルは沈黙する。現時点ではあくまで推測しかできないが……ゲイルに言われたように、気付かなかった部分ではあるがリスクのある話だ。

 もし他者に影響を与えてしまうのであれば、俺はどうすればいいのか。フィーナやキーリと言った面々のことを踏まえれば、影響を与えるというのは決して良いものではないはずだ。むしろ力の影響で負の側面がある――


「……エイラ王女にこの辺りのことを話して、しっかりと対策を講じた方がいいかもしれないな」

「そうだな……と、そういえばエイラ王女やゲイルは大丈夫なのか?」

「そういえば説明していなかったか? 俺や王女はキーリさんが作成した武具を利用しているんだが、女神の力による影響は軽微だな」

「軽微……ってことは、何かしらあるのか」

「まあな。力を長時間行使すると体が痛くなる……筋肉痛だと思えばそれまでだが、それにしては痛みの種類が違う。具体的に言うと、刺すような痛みが走る」

「大丈夫なのか?」

「あくまで道具を使用しているだけだからな。とはいえキーリさんの事例もある。これまで以上に戦いが進めば武器の力をさらに行使することになる以上、悪影響だって出るだろう。まあそこは俺も王女も承知の上さ」


 どこか淡々とした物言いで語るゲイル……そんな様子に、俺は何も言えなかった。


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