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彼方の剣~最弱無能の冒険者が幼馴染みの聖女を助けるため命を懸けたら、突然最強になった~  作者: 陽山純樹
第二章

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一つの機会

 朝食後、俺はフィーナを探して城内を回る。彼女には俺が冒険者となった理由については明示していなかった。盗み聞きとはいえ、今日俺の口からそれについて知ったことになる。

 普段なら訓練のために近づいてくるくらいなのだが、今日はないってことは俺に対し思うことがあるはずで……ただ、結局見つからなかった。


「どうした?」


 で、城内で途方に暮れていた時にゲイルが話し掛けてきた。彼は俺を見つけると訓練もせずにウロウロしていることから気になったらしい。

 彼に対しこちらは理由を説明すると、


「ほう、聖女様には言っていなかったのか」

「というか、言える内容じゃないだろ?」

「うーん……そこまで気にする必要はないと思うんだが……」

「そうか? さすがに実力もないのに会うためにというのは――」


 そう返答するとゲイルは腕組みをする。


「無謀なことをしているのは事実だな」

「だろう? フィーナは……口には出さないにしても、俺を含めた故郷の人を守るためとか、そういう意味合いでも聖女になったと思うんだよ」

「人を守るために、か」

「そうだ。だとすると、俺の無茶は彼女の考えに反する可能性だってあるわけだ」

「それは言い過ぎだと思うが……まあ、そちらの言い分も理解はできる」


 そこまで言うとゲイルは周囲を見回した。


「俺も聖女様を探そうか?」

「……手伝ってもらえるのか?」

「聖女様のことを心配しているわけじゃないが、この状況をそのままにしておくと面倒なことになるかもしれないからな」


 面倒、かどうかはわからないけど連携に支障を来す可能性はゼロじゃないし、ありがたい……というわけで、二人して動き回ることにする。とはいえ、フィーナが普段いる場所なんてわからないので、とにかく城内をくまなく探すことくらいしかできない。

 で、一通り城を見て回った結果……いなかった。もしかして外に出たのだろうか? そんな疑問を抱いた時、俺は騎士パトリと顔を合わせた。


「あ、パトリさん」

「どうも……もしかして、フィーナ様をお捜しですか?」


 こちらが無言で頷くと、彼女は少し困った表情をする。


「その、フィーナ様本人から少し一人にしてくれと言われまして」

「……確認だけど、今日の訓練は中止?」

「そういう形でお願いします」


 う、うーん……これはやっぱり俺が原因だよな。


「俺に、何かできることは?」


 問い掛けにパトリは渋い顔をした。様子からすると、あんまり状況はよくなさそうだな。

 とはいえ、こちらから何かできることがあるかというと……パトリは「私にお任せください」とだけ告げ、この場を立ち去った。


 その後、ゲイルと合流して騎士パトリの発言について伝えると、


「聖女様としても思うところがあったってわけか」

「問題になるかな?」

「正直わからないな。ただ、憂慮しているような事態にはならないと思うぞ」


 肩をすくめ、どこか楽観的にゲイルは話す。


「彼女自身、納得がいかない部分はあるかもしれないが……ま、互いが互いのことを思い合っているわけだし」

「そうだといいんだけど……」


 俺にできることとしては、もし話す機会があったなら今度は正直に伝えることくらいか……隠していたわけじゃないにしろ、俺のことを言うのは控えようと考えていたのは事実だし。もしかするとフィーナはそこが引っかかっているかもしれない。


「ふむ、こういうタイミングだし、これを一つの機会と捉えて行動するか」


 と、ふいにゲイルは発言する。何の話かと思っていると、


「実はエイラ王女から、アレス君に対してあることをやっておいてくれと頼まれてだな」

「あること?」

「装備の強化だ。といっても武器については問題ない……というより、人間が手の施しようがないというのが実情だ。女神の仕業なのは間違いないにしても、正体不明の力であることに代わりがないため、研究で改良するとかは無理だ」


 俺はそれに同意する。そもそも調査して解明できるかどうかも怪しいと思う。


「しかし、それ以外に強化すべき部分はある。例えば防御面。武器と同じように魔力をまとっているし、君は『炎の魔人』からの攻撃を防いだ実績もある。よって、剣と同様の防御能力を持っている……と考えることもできるけど」

「そこについては、不明瞭だな」


 ――力をもらった際、俺は魔人の攻撃受けたけど無傷だった。ただ、それ以降の戦いでは敵の攻撃を食らわないように立ち回っているため、どれだけの防御能力があるのか検証し切れていない。

 魔族クバスの呪いを弾き飛ばしたことからも、魔力は相当な防御力を有しているし、強化する必要性はないかもしれない……が、相手は魔王。魔人や魔族に強大な力を与えている存在。それを考慮すれば、備えはいくらあっても足りないだろう。


「つまり、防御面を強化するために何かすると?」


 質問するとゲイルは頷いた。


「そうだ。ゼルシアから少し離れた場所に、女神リュシア由来の力を持った人間がいる。そこへ連れて行って、防具を作成してくれと王女から指示を受けた」

「この近郊にも同様の力を持っている人が?」

「ただし、当人は高齢で戦うことができない。よって、サポートをすると確約を受けた後、魔王との戦いに備えて仕事を頼んでいた。で、その一環としてアレス君の防具作成というわけだ」

「なるほど……」


 話に納得しつつ、俺はさらに質問する。


「でも、仕事を頼んでいるのなら俺の防具も同じようにできないのか?」

「君の力は特殊だし、安易に依頼して作成した防具が効果を発揮するかもわからない……実を言うと、女神リュシア由来の力を持ってはいるけど、同胞……俺や君、あるいは聖女様のような同質の力を持った人間の武具はまだ作成していないんだ」

「それが可能かどうかを含め、試す意味合いもあると」

「その通り。俺やアレス君の力で防具を作成できるのか。その検証をするってわけだ」


 なんだか実験体にされている気分でもあるけど……必要なことではあるし、訓練も立ち消えになったからこれはこれでいいか。

 フィーナのことは気になるけど、魔王との決戦は待ってくれない。今はやれることを少しずつ進めていこう


「ジェノの同行は?」

「彼については別の仕事を頼んだから別日だな。まずは俺と君だ。準備ができ次第、現地へ向かうとしよう――」


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