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彼方の剣~最弱無能の冒険者が幼馴染みの聖女を助けるため命を懸けたら、突然最強になった~  作者: 陽山純樹
第二章

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命懸けの冒険者

 翌日、エイラ王女は新たな仲間を勧誘すべく町を離れた。一方で俺とフィーナ、さらにジェノは修行を開始する。

 王女は言った。二人には二人に適した戦場がある……俺やフィーナがありとあらゆることをやる必要はない。あくまで自分の能力を磨くこと……それが魔王討伐の近道になるのだと。


 それを聞いて、悩んでいた俺も踏ん切りがついた。俺の能力は確かに魔人をも一撃で倒せるだけの力を持っているが、欠点もある。それを補うのは仲間の役目で、俺は自分の能力を存分に生かすために、修行に取り組む……という形となった。

 とはいえ、やることが変わるわけではない。フィーナと共に剣を振って、少しずつ技術面を強化していく。魔力面の強化は、技術を高めれば自然と向上していくとして、フィーナはとにかく俺に技術強化を施すことに決めた。


 で、俺は彼女と幾度となく打ち合うわけだが……技量面についてはまだまだだし、学ぶところは多かった。これを続ければ着実に強くなれる……という確信を抱くくらいに、強くなる実感があった。

 一方でジェノも俺が渡したペンダントの特性をつかみ、戦場で見せた能力をさらに強化できる目処が立ったとのことだった。やはり女神は魔王との戦いに介入している……そうした確信を得つつ、俺達はひたすら修行を重ねる。


 そしてエイラ王女が町を離れておよそ十日後……その日は身体を休める日、ということで城の中でのんびりしていたのだが、


「二人で町に行ったりはしないのか?」


 朝食時、ふいにジェノが近づいてきて俺に問い掛けてきた。


「ほら、今日は休みだろう?」

「……彼女が外に出たら大騒ぎになるし」

「姿を隠蔽する魔法なんていくらでもあるだろ」


 その言葉に俺は肩をすくめる……まあ、確かにやりようはいくらでもある。


「ただ正直、魔王との戦いが差し迫っているし……俺もフィーナも、関心がそちらへ向いているから……」

「ふうん、そうか」


 ジェノは頷きつつパンをかじる。俺とフィーナの関係については王女から聞いているとはいえ、やはり気になるのだろうか。


「……何か質問があれば答えるけど」


 俺はなんとなく話を向けてみる。


「ん、話してもらえるのか?」

「個人的な内容はさすがに無理だけど」

「別に深くは聞こうと思っていないからいいけどさ……それじゃあ遠慮なく質問させてもらうが、幼馴染みという間柄で共に戦っている……というのは、近しい人だからってことか?」

「俺がフィーナの隣で戦っているのは、別に幼馴染みという面はあまり関係ないと思うよ。その、たまたま力を得た人間が俺だっただけ、というのが正解だと思う」

「でも、その力を得た際に君はいたわけだろ?」

「その口調だと、俺が力を得た経緯については知っているのか?」

「まあな」


 ……どこまで話すべきか。ただ、俺としては別に喋ってもいいとは思う。そもそも隠す必要性もない。


「なら、話をさせてもらうけど……正直なところ、俺が冒険者として戦っていたのは、それしか選択肢がなかったからだ」

「ん? どういうことだ?」

「俺の経歴については知らないようだけど、俺は一応冒険者として戦歴はあるけど、ロクに魔物を討伐できない落ちこぼれだった。怪我なく終えた仕事はそれこそ数えるほどしかないくらいに……魔物と相対すれば、それこそ命懸けだった」

「そのくらい弱かった、と」

「その通りだ。でも、勇者と共に行動していたため、俺は魔人討伐のメンバーに選ばれた。もちろん、主役なんて立ち位置じゃなくて、支援役の一人として。まあ、それもほとんど役立たずだったけど」

「そうまでして冒険者として活動していたのは……聖女のためか?」

「……そういうことになるのかな。でも、正直なところ俺の自己満足だよ。例えばの話、フィーナに近寄れば気付いてもらえるとか、そういう意味合いなわけじゃない。なんというか、その別れ方……聖女としての魔力を持っていたとわかって、目の前からいなくなったフィーナにもう一度会って話をしたい。本当にそれだけだ」

「……それだけで、命懸けの冒険者になったと」

「理解できないかもしれないけど、俺にとっては自分の命と引き換えに成し遂げたい偉業だったって話だ」

「なるほど」


 納得の声を上げたが、本当に理解したのかわからない……こちらが沈黙していると、今度はジェノから質問が飛んできた。


「単純に幼馴染みという間柄で聖女の近くにいたと思っていたんだが、違うんだな」

「そんなことを言って近づこうとする輩を国は寄せ付けなかっただろ」

「あー、確かに言われてみれば……で、最終的に女神から力を得て今に至ると」

「結果的に俺は彼女を守る人間として戦えているけど……偶然もらった力だし、それこそ俺は魔人を前にして一度は死んだようなものだから、なんだかしっくりこない話ではあるけどさ」

「……あんたはそれこそ、聖女が危なくなったら身を挺してかばおうとする雰囲気があるな」


 図星だった。とはいえそれを肯定することはなかったが……ジェノは沈黙する俺に対し、全て合点がいくような顔をした。まあ、言わなくてもわかってしまうか。


「そうまで聖女を守ろうとするのは、理由があるのか?」

「幼馴染みだから、という理由じゃ駄目なのか?」

「うーん……雰囲気的にそれが全てのように思えるけど……」


 と、ここでジェノは言葉を止めた。というより、ここから先は個人的な領域に踏み込んでしまうから、ということだろう。

 そりゃあ俺のエピソードからしてフィーナに対し特別な感情があると思う方が自然だろう。でも、そこについて俺は言及しない。というより、それをしたらきっと彼女が面倒事に巻き込まれるだろうから。


 今の俺は、単なる幼馴染みであり力があるから共に戦っている……そういう立場だから、問題なく彼女と近くで戦えている。けれど、もしそれが変わってしまったら――


「お、元気そうだな」


 と、後方から声。聞き覚えのあるものであったので、振り返ると――ゲイルが立っていた。


「帰ってきたのか?」

「まあな……そちらがジェノさんか。名前は聞いているか?」

「ゲイルさんだったか? ああ、知ってるよ」

「それなら話は早い。俺も一緒に食事を……と、さっき聖女様がここへ来ようとして踵を返したんだが、何かあったか?」

「え?」


 それはもしかして会話を……俺は気になりつつも、結局席を立つことはできなかった。


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