ペンダント
それ以降の攻撃は、全て男性が強化した魔法陣によって全て迎撃に成功。敵もその状況に気付いたのか、あるいは打ち止めになったのかは不明だが、第九波の時点で敵の攻撃はなくなった。
それで俺達もようやく体を休めることができた……警戒は続けるが、さすがに敵もこれ以上は来ないだろうとエイラ王女は判断し、俺達はようやく城の中へと入った。
「いやはや、人使いが荒い王女様だ」
と、王女と共に現れた男性が告げる……城壁の上で自己紹介は済ませた。名はジェノ=アーライト。冒険者家業をしており、最近めざましい活躍を始めたということで冒険者ギルドから一目置かれる存在になっていたらしい。
エイラ王女はその能力に目を付けて、調査したところ……女神リュシアに関連する力を所持していると判明し、今回魔王討伐に参加するよう依頼したとのことだ。
「……事情は、どこまで知っているんだ?」
俺は城内に入って一つ問い掛ける。それにジェノは、
「概要くらいは。聖女フィーナに加えて英雄アレス……君が魔人を倒したことも、二人が幼馴染みという間柄であることも」
「ある程度、事情は話したってことか……」
「今後連携していく上で、その辺りのことはしっかりと伝えるべきだと思ったんだろうな」
そこでジェノはやれやれといった様子で、
「ただ、俺が戦力になれるかどうかはわからないぞ? 俺のは魔法陣を始め、道具の強化などが主だったものだ。しかも同胞……というか、女神リュシア由来のものは強化ができないというおまけつきだ」
「つまり俺やフィーナは……」
「俺の能力で強化はできない。まあ、俺の能力がなくとも二人は相当強いからな。必要がないと言い換えてもいいぞ?」
なんだか卑屈だなあ……と思っているところへ、ジェノは苦笑した。
「この能力を手にするまで、ずいぶんと苦労したからな。低姿勢なのは性分だ。悪いな」
「そこは俺と同じだな……どういう経緯で力を?」
「んー、別に大したことはしてないさ。俺の家は元々地方都市の警備隊を務めていてな。その中で代々、王室からもらった道具を継承していた」
「道具?」
「勲章というか、功績を称えて授与された物って感じだな。どうやらご先祖様はエルーシア王国の中央騎士団にいたらしくてな。ま、それが落ちぶれて地方都市に居着く羽目になったわけだが……どうやらその道具ってのが、女神リュシア由来の物だったらしい」
「それほどの道具が、勲章として授与された?」
問い掛けたのはフィーナ。それにジェノは肩をすくめ、
「いや、その道具自体に能力はない……言ってみれば女神リュシアが祝福をした……つまり、魔力を付与した縁起物といったところかな」
「ああ、なるほど」
彼の返答でフィーナは合点がいった様子。
「そうした魔力を常日頃受けていて……」
「そういうことだ。俺はその道具を子供の頃に触れていてさ。女神リュシア由来の物だから、家宝として大事にしまっておくべきだろとツッコミが来そうだが……実際しまわれていたが、子供の心理としてはそういう物があったら触れてみたくなるだろ?」
なるほど、密かに彼は道具を手に取っていたというわけか……。
「それはペンダントなんだが、なんだか引き寄せられるような魔力を感じてなあ……もしかするとそれが女神リュシアの魔力だったのかもしれないな……子供の時、それを長く触れていたためか、その魔力の一部が俺の体に宿ったらしい。で、冒険者家業を初めてしばらくして、魔力を検査してみてそれが判明したから役立てようと訓練して……今に足るというわけだ」
ペンダント……俺はなんとなく引っかかりを覚えつつ、ジェノの話を聞く。
「だからまあ、女神リュシアから直接力を受けたとか、元々そういう力があったとかじゃない……能力の規模はどう考えても小さい。女神の力を持っていれば魔王に対抗できるのかもしれないが、俺の能力ではたぶんお二人さんについていくのは厳しいだろうな」
「能力を得た経緯を考えると、そうかもしれませんね」
フィーナが述べる。ジェノはわかってくれたか、という雰囲気で笑みを見せる。
「というわけだ。ただまあ、二人にはない能力で支援ができるのは今回の戦いで証明できたはずだ……長い付き合いになると思うが、よろしく頼むぜ」
俺とフィーナは同時に頷く……ここで俺は、なんとなく尋ねる。
「一ついいか?」
「ああ、いいぜ」
「ペンダントというのは……どんな形の物だ?」
何でそんなことを訊くのか、という顔をジェノはしたのだが……答えてはくれた。
「えっとだな、宝石が付けられたペンダント……色は青だな。ただ、魔力を感じることはできるけど、見た目はそんな派手でもないぜ?」
まさか……と、俺は内心で思いながらポケットを探り、
「もしかして、こんな形か?」
――そう述べて提示したペンダントを見て、ジェノは目を見開いた。
「……まったく同じ形だな。それはどこで手に入れたんだ?」
「えっと……」
俺はこれを手にするに至った経緯について話す。夢の中で手にした物が現実に……という話にジェノもフィーナも信じがたい顔をしたが、
「……いや、女神リュシアだ。何が起きてもおかしくはない、か」
と、ジェノは考えを改めた様子だった。
「それで英雄アレスは……夢の出来事と俺の出現がリンクしていると言いたいのか?」
「いや、そこまでは言っていない……でも、このペンダントが同じ物だとするなら、女神リュシアは……あの夢を見せている存在は。ジェノが来ることを察知していたんだろう」
「つまり、どこかで見ていると」
「その可能性はある」
頷きつつ、俺はペンダントをジェノへ差し出す。
「もらってくれないか」
「俺が? それは君が手にした物だろ?」
「俺を通してジェノへ道具を渡す……ということなんじゃないかと俺は思ったんだ」
その言葉でジェノは少し躊躇った様子を示したが……やがて頷き、ペンダントを受け取る。それと同時に、ペンダントから淡い魔力が生まれた。
「これは……」
「正解、なんだろうな」
その言葉にジェノは小さく頷きつつ……ペンダントを、強く握りしめた。




