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彼方の剣~最弱無能の冒険者が幼馴染みの聖女を助けるため命を懸けたら、突然最強になった~  作者: 陽山純樹
第二章

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援軍

 そこから、延々と戦いが続き……先端が切り開かれてから一時間が経過した時、敵は第七波がやってきた。


「キリがないな……」


 とはいえ、戦う他に選択肢はない……それと共に、俺はなおも敵がこうして攻撃をしてきた意図を読もうとする。


「フィーナ」


 俺は支援魔法により騎士を強化し終えたフィーナへ声を掛けた。


「敵は、何のためにこうして攻撃を仕掛けたと思う?」

「……魔人や魔族を倒したことを踏まえると、この攻撃で勝てるとは思っていないはず。なら考えられるのは、何かの実験か、あるいは魔物の検証か……」

「実験? 検証?」

「今回攻撃している悪魔や飛竜は見たことがないから、新たな魔物を生成する実験で戦闘データをとろうとしているとか」

「だとすれば……敵は戦争を仕掛けているレベルですらないって話になるな」

「魔人の強さを踏まえれば、そういう話でもおかしくないよ」


 確かに、敵は目前に現れる敵よりも遙かに強い魔物だって生み出すことができるはずだ。けれど、そうはなっていない……悪魔や飛竜しか敵がいないことを含め、何かしら実験でもやっていると考える方が自然かもしれない。

 それは逆に言えば、このゼルシアの町……人類の防衛拠点であり、最高の防備を備えた町であっても、その程度の価値しかないと言っているのかもしれない。


 思考しながら俺は魔物を撃滅する。ただ、数が一向に減らなくなった。魔物の増援は一度目よりも二度目……六度目より七度目の方が数が多い。それに加えて、味方の疲労も溜まってきた。

 正直なところ、一時間全力で戦い続けられている現状は奇跡に近い。俺やフィーナはまだ問題なく戦えているが、周囲の騎士が明らかに疲労しており……彼らが戦闘不能になれば、防衛どころではなくなる。単純な物量による攻撃……魔人を倒すことができる俺やフィーナにとっては、非常に有効な策だ。


 とはいえ、俺にできることはとにかく目の前の敵を倒し続ける以外にない……正直、戦況を変えられているという実感はない。悪魔や飛竜が城壁に到達しても即座に迎撃できているが、それはあくまで敵の進行を妨げているだけ。このまま物量で押し込まれたら、どうなるかは目に見えている。

 ならば、どうすべきか……俺は剣を強く握りしめながら考える。際限のない敵の軍勢が途切れるまで耐えるのか、それとも――


「もし魔物を生成しているとしたら」


 フィーナの近くで剣を振りながら俺は一つ言及する。


「それが収まるまで耐えるしかない、ってことだよな……」

「あるいは、用意した敵を全て倒すか、だね」


 フィーナは苦い表情で語る。彼女は魔法により一度にかなりの数を倒しているのだが、それでも厳しい状況になろうとしている。

 何か……現状に対し効果的な策がなければ、いずれ限界を迎えて戦線は崩壊するだろう。だが、今の俺にできることは――


 その時、城壁の内側で何やら音が聞こえてきた。どうやら城内にいる騎士達が動いているみたいだが、何かあったのか。


「フィーナ、後方に……」

「わからないけど、少なくとも敵ではないと思う――」


 彼女が応じた直後、城壁に新たな人物がやってきた。それがエイラ王女であるとわかった瞬間、俺とフィーナは同時に彼女へ首を向けた。


「間に合ったようですね」


 その言葉は、戦場を見据えまだ手遅れではないと断言するものだった。


「皆様、よく持ち堪えてくれました」


 続けざまに王女が述べる。それだけでフィーナがやってきた時と同様に士気が目に見えて上がったのがわかる。

 ただ、それでも――俺が視線を向けていると、彼女の続いて新たな人物が。それは、


「初陣がこんな戦場とは、さすがに規格外過ぎるだろ……」


 何事かぼやく、男性だった。冒険者風の装いをした二十代半ばくらいの優男。黒い髪もボサボサで、こんな死線間際の場所に来るとは思えないような風体だが、


「あなたの力を示すには十分な場所でしょう?」

「ま、確かにそうだな……でも、俺の能力は理解しているだろ? あまり無理はさせないでくれよ」


 王女に対しざっくばらんに応じる男性。周囲の騎士が困惑する間に、彼は片膝をついて床に両手を当てつつ、俺やフィーナを見た。


「自己紹介は……後にした方がよさそうだが、これだけは言っておくか。俺はあんたらと同じような性質を持った人間だよ」


 それはつまり――飛竜や悪魔が迫る。すかさず迎撃態勢に入った直後、


「魔力を装填し、攻撃を!」


 エイラ王女が叫んだ。すかさず騎士は号令を掛けて、魔法陣が光の矢を発射しようとする。その時、


「はっ!」


 男性が、魔力を込めた。途端に一瞬だが城壁の上が揺れた――気がした。それは錯覚だったかもしれないが、それで男性の魔力が城壁へ注がれたのがわかった。

 何が起きるのか――そう思った矢先、光の矢が射出される。刹那、その光がこれまでとは比べものにならないほど輝いているのに気付いた。


 しかも光の矢は、さらに太く大きいものに変わっていて……直後、その光の矢が閃光を発したかと思うと、まるで花が咲き乱れるように拡散した。しかもその全てが通常サイズの光の矢と同じ大きさを持っており、俺もフィーナも、ただただ瞠目する。


「……俺の能力は、魔法陣とかの強化が特徴でね」


 男性が語る。その間に光の矢が……いや、光の雨が飛竜や悪魔に注がれ、その一切合切を飲み込んでいく。これまでの攻撃とは訳が違う。大量の魔物を一度の攻撃により一気に……二度三度当てなければ倒せなかった飛竜も、雨のような攻撃を受ければあっさりと身体をえぐり取られるしかなく……あれだけいた魔物が、一瞬の内に消えてなくなった。


「こういう風に、魔法の能力を大きく引き上げる……が、俺の能力にあんたらのような魔人を倒せる力はない。だからまあ、挨拶代わりと言っても、後方支援役になるのが適任だとは思うんだが」

「それはこちらが決めることです」


 エイラ王女が容赦なく応じる。それに男性は苦笑しつつ、


「ま、ともあれ俺の能力が役に立って何よりだ……魔王討伐、その戦いに協力するから、よろしく頼む」


 その言葉に俺やフィーナは小さく頷くしかできなかった。


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