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彼方の剣~最弱無能の冒険者が幼馴染みの聖女を助けるため命を懸けたら、突然最強になった~  作者: 陽山純樹
第二章

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変わらない目的

「……フィーナが記憶を消してまで戦う覚悟を持っているなら」


 前を見ながら、俺は語る。


「俺は止める権利はない……でも、共に戦い負担を減らすことはできる」

「ありがとう、アレス」

「そういうことなら、なおさら今以上に強くならないといけないな」


 何度目かわからない決意を行う。俺の目的は変わっていない。彼女を守る……でも、それだけではきっと駄目だと心の底から思う。

 記憶――フィーナはこの戦いで、間違いなく全てを捨てる気でいるし、そういう未来が見えてしまっている。魔王との戦いまでに俺が全力を尽くして守ったとしても、彼女は魔王との決戦で、全てを費やすだろう。

 可能なら、俺はそれを防ぎたい……そう思うのは、わがままだろうか?


 少しして、俺達は町へと戻ってきた。城へ入って自室へ戻り、フィーナの決意を振り返って改めて考える。


「ただ守るだけでは駄目だ……なら、俺にできることは何がある?」


 女神の力。それを用いて魔人も魔族も倒せた。けれど、魔王はそうもいかないはずであり……俺が命を捨てる覚悟で立ち向かっても、フィーナは今度こそ止めに入るだろう。俺を犠牲にするより、自分の記憶を――そういう選択をとることは目に見えている。


「一番の難題だな……」


 俺はそう口にした後、ベッドで横になった。眠る気はないが、体を休めたかった。

 そして思考は、どこまでも魔王との戦いに費やされる……俺が目指すべきものは何なのか。課題が多すぎてどうすればいいのか迷うレベルではあるのだが――


「フィーナの言う通り、今は自分にやれることをやっていくしかないか……」


 果たしてどこまで貢献できるのか。不安ばかりではあったが、彼女の記憶をなくさせないように……それだけ強く願った時、睡魔が訪れ――眠るつもりはなかったのに、意識を手放した。






 ――そうして、俺はあの花畑に立っていた。


「これは……」


 しかもその場所は、前回夢が途切れた場所。以前の続きだと考えた後、俺は周囲を一度見回して女神の姿がないことを確認する。

 ならばと、俺は真っ直ぐ山にある城へ向かって歩き出す。距離的に辿り着く前に夢から覚めると思うけど、もし次に見る夢が続きであったなら、夢のたびに歩けばいつかは辿り着けるはずだ。


「でも、果てしなく遠いな……」


 二度三度くらいの夢では絶対に到達できないな。そもそも、城に行って何があるのかもわからないし。

 まあでも、花畑の中をウロウロしているよりはいいだろう……そんな風に思い直して俺は突き進んでいく。道中に何があるというわけでもない。とにかく歩けるだけ歩けばいい……と思っていた矢先、


「ん?」


 俺は真正面に泉を見つけた。平原の中にぽっかりと存在する小さな泉。なんとなく近寄ってみると、自分の顔が写った。

 当たり前だが、俺自身である。そういえば、夢の中で自分が何者か確認とかしていなかったな。とりあえず誰かに乗り移ったとかじゃなくて、俺自身がここに来ているのは確定らしい。


 なんとなく俺は泉の周囲を歩いてみる。どうやら地下水が湧き上がっているらしく、進行方向に対して横側に泉の水が流れ川になっていた。そこでなんとなく水際で膝立ちとなって、右手を泉の中に浸す。

 冷たい感触があった。手を抜く水面がわずかに揺れる。そうやって自分の顔をなんとなく眺めていると……あることに気付いた。


「あれは……?」


 よくよく見ると、泉の底に何かあった。太陽の光に反射しているので、金属か何かだろうか?


 深さはそれほどでもないため、取ることもできるけど……俺はなんとなく気になったので、上着を脱いで泉へ入った。どうせ夢の出来事だし……いや、最初ここに訪れた目覚めた時、剣が手元にあったから現実でも濡れた影響が出るのだろうか?

 そこまで考えて、俺はまあいいやと思い直した。影響があるといっても城に用意された自室だし、なんとかなるだろう。


 冷たい水の中へ入り、俺は潜って光る物へと手を伸ばす。それは鉱石のようにも見えたが……紐がついていたのでアクセサリだとわかる。

 俺は即座に浮上して、泉から出た。体は冷たいが日の光を受けてすぐに寒さも消えていく。夢であるためか、あるいは何か別の作用が働いているのかわからないけど、凍えるようなことにはならない。


 拾った物を確認すると、それは青い宝石がつけられたペンダントだった。じっと見据えると淡く魔力を感じ取れる。


「これは、女神が身につけていたものとか?」


 疑問ではあるのだが、とりあえず何か由来のある物で間違いはないだろう。ここで拾って現実世界に影響があるとは思えないけど、形は憶えたから調査してもいい。

 その時、キラッと城から光が。確認するが、何もない。太陽の角度によって光が反射した……とかもありそうだけど、誰かが外に出たとか?


「とりあえず、あそこへ行ってみないと……」


 俺は再び歩き出す。ペンダントを握りしめたまま、とにかく行けるところまで行こうと決める。

 爽やかな風が流れ、俺は花畑を何の障害もなく進んでいく。黙って立っていればここが天国のようにも見える。それと共に疑問が生まれた。なぜ俺にこうした夢を見せるのか。そしてなぜ、俺だけを呼ぶのか。


 フィーナはこうした夢を見たことはないらしい。女神リュシアがやったのだとしたら、俺に直接力を与えたためなのだろうか。それとも、何か他に特別な理由が――


「……さすがに、ないか」


 俺はそれを自ら否定する。何の力も持たなかった俺が、特別な何かを持っていると思えない。女神から力を受けて特別になった……そう考察するのが妥当だ。

 少しずつ城へ近づいていくが、道はまだまだある。この先も泉のように何かがあるのだろうか――そんな風に思った時、俺は夢から覚めた。


「……終わりか」


 城へ行くのにまだまだ時間が掛かりそうだ。まあ次の夢で続きの場所からスタートするとは限らないのだけれど……。


「ん?」


 その時、俺は右手に違和感を覚えて確認した。俺は手を握りしめていたのだが……何か持っている。


「おいおい、まさか……」


 手を開く。そこには、夢の中で得たペンダントが一つ。


「どういう理屈なんだ、これ……」


 まあ剣を授けてもらった経緯もあるからさして驚かないけど……とりあえずフィーナへ確認しようかと考えた時、カンカンカン――と、鐘の音が鳴った。


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