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彼方の剣~最弱無能の冒険者が幼馴染みの聖女を助けるため命を懸けたら、突然最強になった~  作者: 陽山純樹
第二章

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女神について

「正直、どうするかは考えられていないって感じかな。目の前にある戦いに集中して、そちらに思考を振り向ける余裕がないと言えばそうかもしれない」


 俺の発言に対しフィーナは沈黙する。ただ瞳の色は、共感の意味合いを含んでいるのがわかった。


「この戦いの中で何かやりたいことを見つけるかもしれない……と、ここで一つ疑問がある。女神リュシアの力は俺を強くしたけど、魔王を討伐することで、力が消えたりしないのかな?」

「そこまでは正直わからないけど……」


 フィーナとしても明確な答えを出すのは難しいが、言及はする。


「私は消えないと思うよ。そもそも力を付与したからといって、それをもう一度引き戻すみたいな特性にはなってないと思うし」

「……女神リュシアが何らかの形で存在していて、力の一端を俺に渡したってことなら、当人は介入できないのかな?」

「私を含め、力を所持する人間がいることや、アレスに間接的に関わることでしか干渉できないのだとしたら、そういうことなんだと思う」


 女神リュシアについては、考えれば考えるほど疑問が増えるな……これについて、放置していて問題はないのだろうか?


「……いっそのこと、調べてみるか? できるかどうかわからないけど」

「女神リュシアのことを?」


 俺は頷く。正直調べたからといってどうにかなるような話題ではないかもしれないけど。


「正直、国が保有している以上の情報を得るのは難しいんじゃないかな……」

「フィーナは俺にシステムの説明をしたよな? それは国が保有している情報なんだよな?」

「そうだよ。だから私はアレスに伝えた」

「そっか……今更俺が調べてもどうにかなるようなものでもない、か」


 とはいえ、気にはなるんだよな……俺は魔王の配下を倒せる力を得たし、十分だと思うけど、力の源泉というか、きっかけとか調べられないだろうかと、思う。


「……夢のこともあるし、真実がわかる可能性はゼロじゃないと思う」


 やがてフィーナは俺にそう告げた。


「こちらから率先して調べても成果は上がらないだろうし、待つのが無難じゃないかな」

「そっか……うん、フィーナに従うとするよ。俺達は城の中で、ひたすら鍛錬だな」

「そうだね」


 ここまでの戦いの中で、訓練は一緒にやってきた。騎士エッドなどはいないけど、問題なくこなせるだろう。


「改めて、よろしく」

「うん。アレス、移動で疲れているかもしれないけど、今日から大丈夫?」

「ああ、問題ないよ。それじゃあ早速始めるか」


 ということで、俺達は気持ちを新たに、訓練を開始したのだった。






 ゼルシアの城に滞在する間に、少しずつ情勢が変化していく。まず魔王側についてだが、俺達が戻って以降も動きはない。例えば『刃の魔人』のように敵情視察という名目で動くということもなかった。

 元々魔王は専守防衛という感じが強く、時折魔族が単体で動いてエルーシア王国へ攻撃を仕掛ける、といったパターンが多かった。そのため、動いていないというのは不思議ではない。


 ただ今回の場合は魔人や魔族がやられたことで警戒している……という形だろうか。国としては、騎士しかいないルダー砦に攻め込まれたらひとたまりもないという見解みたいだが、とりあえずまだ奪還はされていない。

 しかし、俺やフィーナのように魔王に強化された魔人や魔族に対抗できる人員を確保できなければ、厳しいことになるのは間違いない……で、肝心のエイラ王女を主軸とする人材探しについては、


「交渉を始めた?」


 城へ戻り数日後、俺は朝食をとりながらフィーナの話を聞く。いつのまにか二人で食事をするようになったのだが、俺のことは知れ渡っているせいか、向かい合うように座っても見咎められることもなくなった。


「うん、エイラは目星をつけていた人に交渉を始めたって」

「あっという間に……いや、捜索活動はずっと前からやっていたってことなのか」

「そうだね……魔王と女神リュシアの構築したシステム……それを解明して、ならばとエイラは動いている。全ては、魔王を倒すために」

「……なんというか、気合いの入れようが違うな」


 スベン王子のように栄誉を得るために動いているという雰囲気はあまりない。それより、とにかく魔王を倒すために……という意識が強いように思える。


「エイラ王女がそこまで魔王討伐にのめり込んでいるのは、何か理由があるのか?」

「私も詳しくは……聖女として鍛錬をする間に、私はエイラと顔を合わせて友達になったけど、あまり自分のことを話さないから……王族にまつわる理由だとしたら、私にでさえ喋れないというだけかもしれないけど」

「まあ、それもそうか」


 聖女とはいえ、王族からしたら部外者だからな……。


「ただ、魔王を倒すために全力を注ぐ……それは目的を果たすまで続けるのは間違いないよ。エイラはそれこそ、目標と決めたことを手段を選ばず突き進むからね」

「手段を選ばずって……」

「あくまで合法の範囲内の話だからね」


 注釈を付け加えるフィーナ。ただその表情にはどこか苦笑に近しい空気感があった。

 なんだか色々やっていそうだな……会って少ししか話していない俺でも、強い意思を秘めているのはわかったし。


「……それで、ルダー砦の方は何か聞いているか?」

「現状は変化なし。悪魔どころか魔物すらも砦に近寄ろうとはしないみたい」

「明らかにおかしいな。さすがに魔物の一体くらいは近寄ってもいいだろうに」

「近づくなと命令されているってことだね。攻撃準備を始めているのかも」

「魔王側の動きを観測できないのが辛いな」

「一応魔王なんかで調査できないか試しているみたいだけど、さすがに難しいみたいだね」


 敵も流石に対策をするって話だな……フィーナを呪いによって倒そうといった計略を踏まえれば、敵は相当に狡猾だ。何をしてくるかなんて予想は、どれだけやっても覆してくるだろう。

 とはいえ、魔王は現状動く気配がないのなら、当面の間は何事もなく済みそうだな。次の戦いに備えて鍛練を重ねる……ただ、ここで一つ問題があった。


「フィーナ」


 俺はどうすべきか――目の前にいる彼女へと声を掛けた。


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