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彼方の剣~最弱無能の冒険者が幼馴染みの聖女を助けるため命を懸けたら、突然最強になった~  作者: 陽山純樹
第二章

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現状把握

 エイラ王女と出会い、魔王との戦いは新たなフェーズへ進むことになった……現在の情勢としては魔王城への道を塞いでいたルダー砦を制圧し、騎士達が防衛の準備を始めている。さらにエルーシア王国を脅かす魔人二体も潰えた……しかも犠牲者がゼロ。前哨戦と呼べる現段階でも、奇跡的な戦果であるのは間違いない。


 しかし、その多くが女神リュシアから力を受けた俺が戦った結果……聖女であるフィーナだって貢献はしているけど、実質俺達に頼った戦いをしている。これではまずいとエイラ王女は語っていたが、魔王が何かをして魔族を強化していることから考えると、戦力差をすぐに解消する方法はないかもしれない。


 とはいえ、王女はあきらめるつもりなどないらしく……駐屯地の砦で騎士達を統率し、まとめあげてから二日後、会議室に俺が呼ばれた。

 そこにはすっかり回復したフィーナに加え、王家の遠縁にして王女とも知り合いであるゲイル。そしてフィーナの側近である騎士パトリの姿が。部屋の中にはそれだけであったため、俺は王女へ質問をする。


「他の人は?」

「騎士エッドについては既に方針を伝えていますし、他の方は……いなくても問題ないでしょう」


 スベン王子とかはまだルダー砦とかにいるわけだが、彼にも伝えるのだろうか……いや、雰囲気からしてなさそうだな。


「さて、フィーナも無事復活しましたし、今後の方針を決めたいと思います。とはいえ、事の次第の多くは重臣と協議して決めています。今から話すのは詰めの部分です」


 詳細については現地に赴かないとわからないから、って話だろう。


「現在ルダー砦周辺に騎士を派遣し、渓谷全体を守るべく陣容を整えています。魔王軍には空を飛ぶ悪魔などもいますから完全にとはいきませんが、山脈沿いに騎士団を派遣して敵の動向を注視しており、もし動きがあればすぐに感知できるはずです」

「これは魔人を倒したことが大きいな」


 ゲイルが言う。エイラ王女は「はい」と明瞭に返事をした。


「エルーシア王国に属する山岳地帯に大きな脅威がなくなったことで、自由に動けるようになりました。ゼルシア周辺も魔物が少なくなり、物資の輸送なども効率よくできています」

「そこは朗報だな。とりあえず物資が不足するなんて可能性は低そうだ」

「ですね……さて、ここまでの戦いは非常に順調ですが、それはあくまで見かけ上の話。実際は英雄アレスと、聖女フィーナ……この二人の力がなければ、魔王はおろか魔族にも太刀打ちできません」


 硬い表情で告げるエイラ王女。真実を知る彼女からしたら、心苦しい部分だろう。


「魔王が何か動いている兆候を発見し、先手を打つ形で私達は攻撃を仕掛けたつもりでした。しかし実際は既に魔王は策を終えた後。魔人や魔族は圧倒的な力を得た。もしさらに力を持つ存在が同じようにいたら、ルダー砦にいる騎士達はたちまち全滅するでしょう」


 王女は語るが……その顔は決して悲観的なものではない。


「しかし……数日、様子を窺っていましたが、敵が動き出す気配はありませんでした。故に、魔族クバスを始め強力な力を持っている存在は、多くない……というより、最前線にいた者達に力を付与していただけなのかもしれません」

「どういう力なのか完全に解明できたわけではないにしろ」


 と、王女に続きゲイルが述べる。


「すぐにあれだけの力を付与できるってわけではなさそうだな」

「はい。現在は小康状態……というより、ルダー砦まで奪われたことから、私達の戦力分析などを行っているかもしれません。私達としては、これを逃す手はない」

「軍の強化と、女神リュシアの力を持つ人材を集める……か」


 俺が呟くとエイラ王女は「まさしく」と応じた。


「どちらも非常に困難な仕事ですし、そもそも現状がいつまで続くかもわかりません……そこでアレス様とフィーナには、当面ゼルシアに留まってもらい、敵の動向を注視してください。私やゲイルが、女神リュシアの力を持つ人間を集めます」

「ゼルシアでいいの?」


 フィーナが問い掛ける。この場所でもなく、ゼルシアに戻るということみたいだが、


「敵の動き方がわかりませんし、そもそもこの場所に長期間滞在する予定はありませんからね……それに、魔物の大軍勢が来ても防戦できる場所は、ゼルシア以外にありません。正直、あそこが突破されれば、王都まで敵が来る可能性すらあるかと考えています」


 まさしく最後の砦ってわけか……物資を集積する場所でもあるし、ゼルシアが心臓部だと言いたいわけだ。


「よって二人には、ゼルシアに滞在してもらい、各々鍛錬を重ねてください」

「わかった」


 フィーナは承諾。彼女が返事をしたので俺もまた頷いて同意した。


「では、他の方々については――」


 ゲイルは王女が言ったとおり、女神リュシアの力を持つ人材を集めるのを手伝う。パトリについてはフィーナの護衛……と、役割についてはあっさりと決まった。

 騎士エッドについては、駐屯地に留まってもらうらしい。話し合いが終わり、さて動こうかという段階となって……エイラ王女は最後に告げた。


「次の戦い……ルダー砦への攻撃か、あるいは村や町の侵略かわかりませんが、それが訪れた時こそ、間違いなく魔王との戦いが本格的に始まります。それまで己が目的を果たすべく、努力を重ねるようお願いします――」






 その後、俺とフィーナはパトリと共に滞在していた砦を離れ、ゼルシアへと帰還した。ただ聖女フィーナのことに加え、俺についても色々と噂があるらしく……もし町中で見つけられたら大騒ぎになりかねないとして、俺とフィーナは馬車で護送されて城に入った。


「なんだか堅苦しいな……」

「そうだね」


 俺の呟きにフィーナは慣れたように答える。


「あー、聖女ってことでこういう扱いも多かったのか?」

「移動するときは、馬車移動ばっかりだったね」

「まあそれもそうか……俺も慣れないといけないのかな。あ、でもこの戦いが終わったら……」


 ふと呟いた俺の言葉に対し、フィーナは視線を向けてくる。


「どうした?」

「……戦いが終わったら、どうするの?」


 まだ気の早い話ではあるけど……俺は少し考えてから、彼女へ向け口を開いた。


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