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彼方の剣~最弱無能の冒険者が幼馴染みの聖女を助けるため命を懸けたら、突然最強になった~  作者: 陽山純樹
第一章

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女神

 少しして俺は、フィーナがいる部屋へと入った。完全な二人きりで、扉の外にも騎士達はいない。一応見張りとして騎士パトリがいるくらいで……完全に信用されている感じだな。

 フィーナは横になっていたが、目が開いていた。近寄って傍らにいる椅子に座ると、彼女はこちらを見た。


「……話、聞いたよ」

「無茶したって思ってるか?」

「まあね。でも……アレスのおかげで、私は助かった」


 微笑む彼女。それで……その姿を見て、俺は間違っていなかったのだと確信する。


「公的には騎士の帯同もあったってことになるみたいだけど」

「俺が単独で全部やったなんて、さすがに荒唐無稽だからな」

「でも事実だよね」

「……それだけの力を、女神リュシアは託したんだろ」


 確信を伴った言葉であったためか、フィーナは訝しげな表情を見せた。


「何か、わかったの?」


 そこで俺は夢の出来事を話した。もちろんこれだけで女神リュシアが関わっていると断言することはできないが、関連性があるとフィーナも感じた様子だった。


「そっか……もしかすると私が近くにいたから、アレスに力を託したのかもしれないね」

「そう、なのかもしれないな……なあ、フィーナ。素朴な疑問があるんだが」

「どうしたの?」

「その、俺自身女神リュシアのことについて言及したけど……そもそも女神リュシアは、古の魔王を倒した存在であるのは間違いないけど、人間だろ? エルーシア王国が奉っているのは確かだけど、人間として生を終えて本当に女神になったのか?」

「……そうだね」


 あっさりと答えた。ただその声音は推測というよりは、何か確信している様子でもあり、


「何か、知っているのか?」

「アレスになら、話してもいいかな」


 ――俺は沈黙する。そしてフィーナは、


「女神リュシア……元々は人間だった存在だけれど、魔王を倒した結果、彼女は選ばれたらしいの」

「選ばれた……?」

「この世界には、魔王がいる。エルーシア王国はその存在と戦い続けている……そうした存在を討ち滅ぼすために、ある人が世界を土台にしてシステムを作り上げた。それが、神域の世界と呼ばれるモノ」


 俺にとっては当然初耳であり、また同時にこの世の真理に触れるような話であるため、彼女を凝視する。


「魔王というのは、一度倒してもいずれ復活する……その魂はこの世界から消えることなく、力を引き継ぐ存在が生まれ出る。それに対抗するために、人が……女神リュシアが古の魔王を倒したことで解明し、対抗するために人間も力を継承できるシステムを作り上げた」

「それが神域の世界……?」

「アレスが夢で目にした場所は、まさしくその世界なんじゃないかな」


 神域……確かにあの花畑は幻想的だ。それと同時に、世界を土台にしたシステム……きっかけはどうあれ、俺はとんでもないものに触れて、力を得たってことになるのではないだろうか?


「それは女神リュシアが作ったのか?」

「そこまではわからないけど、たぶん関係はしたと思う。だって最終的に、女神リュシアの魔力がこの世界には存在している」


 そこで俺はフィーナを見た。彼女の力は、女神リュシアと同質のもの。


「魔王は、倒しても復活する……つまり、それと同じように――」

「そう。私の体に女神リュシアの力が宿った。でも、アレスみたいに神域の世界に行けたわけじゃないよ。私はあくまで、力を持っていただけ。でもこの力は本物で、聖女と呼ばれるだけの資格は持ってる。でも」


 と、苦笑いを彼女は見せた。


「ここまでの戦いぶりを考えても、役に立てているかどうかはわからないけどね」

「そんなことはないさ」


 俺はかぶり振る。確かに魔人や魔族を倒しているのは俺の能力かもしれない。だからといって、聖女である彼女の存在が無意味なんてはずがない。


「フィーナがいたからこそ、こうして軍として活動できているんだ。それと、力については……俺と同じ女神リュシア由来のものであれば、やり方次第で強くなれるはずだ」

「どうなんだろうね……でも、私だってこのままやられてばかりじゃいられないからね。体調が完全に戻ったら、今まで以上に鍛錬しないと」

「……まだ、戦うんだよな?」

「もちろん」


 即答だった。ならば、


「もちろん俺も、それに付き合うよ。魔王を倒せるかはわからないけれど、全力で戦う」

「ありがとう……アレス」


 互いに笑い合う。そこで次に彼女は、


「でも、これからどうするかは国次第だと思う。私とアレスだけで戦争ができるわけじゃないし」

「もし攻撃を中断するとなったら……」

「わからないけど、ここで戦争を中止することはないんじゃないかな。魔王の恐ろしさは、身をもって知った……そして、時間が経てばこの力が他の魔族や魔物に付与される危険性がある。そうなったら、私達に勝ち目はない」


 魔王……今の魔王が持っている力が古の魔王由来の力だとしたら、対抗できるのは女神リュシアの力だけか。

 現状では俺とフィーナの二人だけ……というのは――


「選択肢は二つある」


 フィーナはさらに続ける。


「ルダー砦を補強し、態勢を盤石にして攻撃をする……でも、私とアレスだけでは心許ないと考えているはず」

「国側も、対抗できるだけの戦力を増やしたいよな」

「うん、だから仲間を探すのも選択に入ると思う」

「仲間?」

「魔王との戦い……その歴史の中で、英雄とか勇者とか呼ばれる存在が現れたけど、そうした人は女神リュシア由来の力を持っていた可能性が高い……で、そういった人の周りには、同質の力を保有する存在が見受けられた」

「つまり、俺やフィーナと同じように、女神リュシアの力を持つ人間が……?」

「いる、かもしれない」


 そういった人が加わってくれれば、頼もしいけど……探すにしたってとっかかり一つない。


「探している間に時間を浪費したら意味はないから、魔王討伐の準備を進める間、国に動いてもらう必要がある。実はパトリにはそのことを連絡するように伝えてある。私の提言を含め、国は方針を決めると思う」

「そうだな……なら、今は待つだけか」

「うん……」


 そこで、フィーナが表情を改める。何か、言いたいことがあるらしい。


「……アレス、ここで一つ言っておかないといけないことがある」


 意を決するように、彼女は話し始めた。


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