表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
彼方の剣~最弱無能の冒険者が幼馴染みの聖女を助けるため命を懸けたら、突然最強になった~  作者: 陽山純樹
第一章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

30/82

魔族を倒す力

 呪いの魔力、それが明瞭にわかり始めた段階で、俺は確信めいた予感を抱いた。だから俺は、剣に力を込め……魔物へ接近し倒す速度を上げる。

 魔族クバスはこちらの行動に対し、嘲笑にも似た表情を示すのが月明かりの下でもわかった。愚かな……そんな心の声が聞こえてくる。だが俺は構わず魔物を倒し続ける。


 その時、魔族クバスは新たな行動を示す。といっても魔族自身が攻撃するわけではない。呪いを持つ魔物……それを一斉に、俺へ差し向けた。

 どうやら敵は、俺にどうしても呪いを付与したいようだ……魔神を倒した実績を考慮し、あえて搦め手を用いて攻撃を仕掛ける。そういう目論見なのだろうと、俺はおぼろげながら理解する。


 それに対し俺は、構わず魔物を倒し続ける。やがて周囲に呪いの魔力を持つ個体ばかりとなり……それを一蹴した時、呪いが周囲に充満し、俺の体を覆った。

 対策はしている……が、それをすり抜けそうなほどの濃密さだった。どうやらこの呪いの力、かなり特殊な魔力が込められている。それが何であるのか判然としないが……俺はまとう魔力越しに、もし触れたらどうなるのか、明瞭に理解した。


 だからこちらは……魔物を倒し続ける。その時、とうとう呪いの魔力が俺の体に触れた。どれだけ警戒しようとも、呪いの魔力は貫通してくる……対策はこの魔力に近づかないことだけみたいだが、戦いとなったらそうもいかない。

 つまり、実質回避不能な攻撃……だが、俺は一つの確信があったからこそ、魔物を倒し呪いの魔力に触れた。


 結果――俺の力は呪いの魔力をも、弾き飛ばした。


「……何!?」


 それを察知した魔族クバスが、驚愕の声を漏らす。


「馬鹿な……魔法そのものを防いだだと!?」


 正直、相変わらず俺の得た魔力は正体不明。しかし呪いの魔力を受けてわかったことは、目の前の敵……魔族や魔王を倒すために、与えられた力だということだ。

 呪いの力が効かないと相手が認識したところで、俺はさらに魔物を倒す速度を上げながら、魔族へ迫ろうとした。


 無論、相手も黙ってはいない。ここまで静観していたような立ち位置だったが、呪いの魔法が通用しないことから、選択に迫られた。すなわち、後退するか魔物と共に攻撃するのか。

 城門からはさらに魔物が出現する……俺としては好都合。とにかく時間を稼げさえすれば、ゲイル達が作戦を遂行してくれるはずだ。残る懸念は、魔族クバスが逃亡することだけだが……魔族の力が膨れ上がる。とうとう相手も本気になったか。


 とはいえまだ仕掛けてくる段階には至っていない。すると今度は悪魔が出現する。さらに魔物の厚みも増す。

 質を高め、なおかつ物量を増やし押しつぶす……呪いの魔力を付与している魔物は、それほど強くないのだろう。魔物を倒すことで魔力が拡散するのであれば、むしろ強くする意味がない。俺にフィーナにやった攻撃が通用しないのであれば、実力行使……というわけだ。


 だが、俺は……剣に魔力を込める。なおかつ全身にも……それで一閃すると、数体の魔物をまとめて消し飛ばした。

 ここで俺の戦いにも変化が。剣を振ると、剣が持っているリーチの外側にいる魔物が死滅していく。これは剣に魔力を込め、刃を形作って刀身を延長する……攻撃範囲を拡張したことによるものだ。


 魔法についてはあまり攻撃力は上がらなかったが、どうやら剣から離れなければ本来の切れ味は発揮されるらしい……リーチが伸びた俺の剣は相当な速度で敵を滅してく。そしてこの事実は、どうやら魔族クバスも面倒に感じたようで、先ほどの笑みとは一転、苛立たしげに俺のことを観察し始めた。

 特に注目しているのが、俺が持つ剣。どういう仕掛けで魔物を瞬殺しているのか……ただその間にも俺は魔物を倒し続ける。悪魔も接近してくるが、こちらは構わず一閃。容易く両断することに成功した。


 砦からどれだけ魔物が押し寄せようとも、俺の敵ではない……そこで魔族クバスも動き方を変えた。手を振ると――魔物や悪魔の動きが止まる。


「なるほどね。なぜ一人で来たのか……それが明瞭にわかったよ」


 納得したような声を上げると、魔族はさらに魔物へ指示する。指揮者のように手を振り、悪魔や魔物は俺を取り囲むように布陣する。


「呪いを防ぎ、こちらの手勢を倒しきれるだけの力……捕らえてその体を解剖でもしたいところだね」

「やれるものなら、やってみろ」


 挑発的な言動に魔族クバスはなおも苛立たしげに顔を歪める……しかし、魔物へ攻撃命令は出さない。

 これはおそらく、俺が逃げるのを防ぐための処置だろう。つまり魔物達は壁の役割……では誰が俺と戦うのかというと、当然ながら目の前にいる魔族だ。


「ともすれば聖女を超えるかもしれない力……それに対抗するには、一つか」


 ズアッ――形容するならそういう音。大気を震わせるほどの魔力を噴出し、魔族クバスは俺を見定める。


「正直、どういった経緯で力を得たか知りたいところだけど、それより優先すべきは、これ以上被害の拡大を防ぐため、さっさと始末することだね」


 ……魔族クバスもまた、魔人と同様に魔王から力をもらっている。ただこれは想定の範囲内だ。魔人でさえ力を受け取っているのに、重要拠点を守る魔族が力を得ていないはずがない。

 その動きに対し、俺は全身に力を入れる……向こうは俺の実力をつぶさに理解した。最初から、全力で攻撃してくるだろう。それに果たして対抗できるのか……呼吸を整える。相手がどんな攻撃を仕掛けてこようとも、俺にできることはたった一つだ。


 俺は身の内で魔力を練り上げる。体の奥底から……魔族を倒すために必要な力を呼び出す。その動きに対し、俺に宿った魔力はあっさりと応じた。魔族クバスが力を高め、渾身の一撃を放とうとしている。だから俺は、応じるべく今まで以上に……先ほど魔物を倒した力を遙かに超えるだけのものを、体から引き出す。


 そして――俺と魔族は同時に足を踏み出し間合いを詰めた。勝負は間違いなく一瞬。その刹那の時間に打ち勝つため、俺は雄叫びさえ上げながら魔族クバスへ接近した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ