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彼方の剣~最弱無能の冒険者が幼馴染みの聖女を助けるため命を懸けたら、突然最強になった~  作者: 陽山純樹
第一章

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夜空の下で

 軍議については文字通り紛糾したらしい。王子も魔人の力を目の当たりにして消極的となったため、結局再び砦へ……という状況ではなくなってしまった。騎士アジェンや騎士エザもまた沈黙を守り、議論については平行線に終わってしまった。

 おそらく一両日中には進展しないだろうということは間違いない。こうなってしまっては王都から援軍が駆けつけ、フィーナの呪いが解けることを祈るしかなくなった……本来ならば、そういう風に考えるに違いない。


 けれど、時間が経ったことで冷静になった俺は、ある選択肢を思いついていた。それは普通ならば荒唐無稽……いや、常識では到底考えられない選択であることは間違いない。それでも俺に今、できることがあるとしたらこれしかないと、行動を移すことに決めた。


 時刻は深夜。俺は砦内で食事をした後、この時間まで仮眠をとっていた。体調については問題ないのを確認してから、外へ出る支度をして、部屋を飛び出した。


 廊下から建物の外を見る。門は固く閉ざされ、なおかつ巡回している兵士もずいぶん多い。魔族がここへ来る可能性を危惧してのことだが、俺はきっと来ないだろうという予感を抱いていた。根拠はないが……策によりフィーナに呪いを付与した魔族クバスの表情を見るに、俺達が右往左往する姿を観察していたい、という願望が見え隠れているような気がしたのだ。

 少なくとも、明日の朝までは魔族も動かないだろう……そう思いつつ、俺は城壁の上へ。夜空には満月が出ており、視界には困らない。


 城壁に巡回する兵士の姿はないのだが、物見の櫓があるため、そこにいるのだろうと見当をつける。別に見つかっても問題はないけど、なんとなく可能であればコッソリ行きたいという思いを持っていたので、ここで――


「どこに行くんだ?」


 突如、背後から声が聞こえた。振り返ると、そこにはいつのまにかゲイルが立っていた。


「……いつの間に?」

「ちゃんと足音も立てていたんだがなあ」


 と、ゲイルの後方にはもう一名。騎士パトリの姿も。


「ま、そちらが色々考えながら歩いていたってことだろ」

「そうか……」

「で、どこに行くつもりだ?」


 ――俺の行動を咎めるという雰囲気ではない。それはまさしく、純然たる問い掛けだった。


 とはいえ彼の方は予測しているのだろう……なんとなくそんな気配がする。


「……俺にできることは、一つだけだ」


 やがて俺は語り出す。


「ルダー砦へ行く……俺一人なら、潜入して情報をとれるかもしれない」


 ――正直、分の悪い賭けではある。そもそも俺が得た力は無茶苦茶だが、隠密行動とかに適しているものではない。

 ただ、フィーナを救えるとしたらこの方法しかないと確信している……俺の言葉を聞いてゲイルとパトリは沈黙を守っていたが……やがてゲイルが口を開いた。


「ま、君ならこのくらいはやるかもしれないって推測はしていたけどな」

「……やっぱり、引き留めるか?」

「俺が騎士エッドなら、無茶はするなと説得しているところだ。でも俺は違う」


 ゲイルは笑みを浮かべた。それはどこか、悪戯っぽさを含んだもの。


「一人で挑むより、二人、三人で挑む方が確率は上がるだろ?」

「ゲイルさん……もそうだけど、騎士パトリも?」

「完全に独断行動です。今の私は、フィーナ様の従者ではなく、彼女を救いたいと願うただの剣士です」


 そう述べる彼女の表情は、夜空の下でもはっきりわかるほど引き締まっていた。


「足手まといになったら見捨ててもらって構いません。どうか、同行させてください」

「確認だが、聖女様はいいのか?」


 ゲイルが問い掛けると、パトリは少し俯いて、


「現状、私にできることはありませんから……それに、お二方では砦の中で情報を見つけても、魔法に関するものなのか判別できないでしょう?」


 ――言われて、気付いた。そこまで頭が回っていなかった。

 どうやらそれはゲイルも同じだったようで、闇夜の中で笑い始めた。


「ああ、違いないな……それじゃあパトリさんの助力は必要不可欠ってわけだ」

「お二方に、頑張ってついていきます」

「それでアレス君、作戦はあるのか?」

「正直、俺の能力でどうにか姿を隠せないか考えている程度だよ。勝算のある戦いじゃない」

「なら、こっちから一つ提案がある。ただ、アレス君……君が一番苦労することになるぞ」


 その言葉を聞いて、俺は何が言いたいのか思い至った。


「俺の力を使って……というわけか」

「正解だ」

「むしろ、その方がいいかもしれないな……存分に使ってくれ」

「わかった。それじゃあ、行くとしようか。門はさすがに開かないだろうから、このまま城壁から飛び降りるってことでいいんだよな? アレス君はそのつもりでここに来たんだろ?」


 こちらが頷くと、彼はニヤリとした。


「よし……この三人なら、砦へ向かって戻ってくるまでで、明日の朝には帰れるだろ――」






 そして俺達三人はルダー砦へと向かう……馬は使えないので魔力で体を強化して走ることに。その道中、ゲイルは俺へと解説を行う。


「作戦は極めて単純だ。アレス君が囮になって城外に敵を引きつける。魔物や悪魔を倒していれば、必然的に魔族クバスも出てくるだろう。その間に俺とパトリさんが砦に潜入して情報を得る」

「隠密行動……二人は大丈夫そう?」

「どこかのタイミングでバレる可能性はあるが、アレス君が暴れればそっちに気をとられるはず。よって、俺達の命は君の頑張り次第」


 と、語ったところでゲイルは笑う。


「なんて、言うつもりはないぜ。心配するなって。俺だって結構腕には自信がある。騎士パトリを守りながららも、作戦は成功させてみせるさ」


 ――彼の能力、そこについてはやっぱり気になるけど、今問い掛けるようなタイミングではないので、口は挟まずにおく。


「アレス君が砦に近づけば、敵が反応するのは間違いない。聖女様と共に魔神を倒した剣士だからな。可能な限り派手に動き回ってくれ。その方が敵の注意を引くことになるし、情報を探しやすくなる」

「時間を稼ぐ、でいいんだよな?」

「別に、魔族クバスを倒してしまってもいいぞ?」


 それができるかわからないが……俺はゲイルの言葉に、小さく頷いたのだった。


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