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彼方の剣~最弱無能の冒険者が幼馴染みの聖女を助けるため命を懸けたら、突然最強になった~  作者: 陽山純樹
第一章

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魔人との攻防

 『刃の魔人』が狙ったのは、手近にいた男性騎士。しかし俺は彼をかばい立てるようにして魔人の剣を受けた。風が生じ、俺と魔人は一時せめぎ合いとなる。

 魔人が明確に目標を変更したことで、周囲の騎士達の動きも変わった。なおかつフィーナが魔力を発し、魔人へ向かおうとする。挟撃すれば、俺は確実に剣を当てられるのではないか……そんな考えを抱いたが、


『では、こうしよう』


 俺の剣を『刃の魔人』は受け流す……次いで、さらに横へ跳んだ。しかも足下から悪魔を生み出しながらの行動で、かなり器用なことをやっている。

 俺は即座に魔人へ追いすがり、別の騎士へ狙いを定める刃を防いだ。動きにはついていける。魔人が放つ剣の軌道も把握できる。だから、


「お前の思い通りにはさせない……!」

『どこまでも追いすがるか。であれば、こちらも相応に動こう』


 魔人の両足に魔力が集まるのを感じ取る。刹那、さらに横へ跳ぶ。ただそれは騎士を狙うのではなく、


「町を狙う気か……!」


 俺は即座に両足に魔力を収束。魔人の高速とも呼べる移動についていく。そして目論見を防ぐべく、並走する形で切り結ぶ。

 旋風が舞い、移動しながらであるため相手の剣によって押され、体勢がぐらつく。その隙を突いて『刃の魔人』は町へ侵入しようと足を動かす……が、俺はどうにか体勢を戻して無理矢理阻む。


『やるな、貴様……!』

「お前……!」

『怒っているな。まあ無理もない……が、我が目的は強者と戦うこと。そのためには、いかなる手段も用いよう』


 俺の剣は幾度となく弾かれる。剣同士が触れ合おうとする寸前に風が生じ、刃が届かない。


『魔力に揺らぎがあるな。このまま人間や町を利用すれば、貴様に刃を入れることができそうだ』


 そうした言葉を聞きつつ、俺は魔人となおも並走しながら剣を振り続け――突破口がないかと必死に考える。

 魔人相手に力で上回っているが、現状を打開するにはもう一つ何かが必要だ……! そこで、俺は魔人の動きを見極めるべく、意識を集中させた。


 先ほど以上に剣の流れを、魔力を読もうとする……結果として、それは功を奏した。相手の挙動、体の動き方、剣の振り方とそれに付随してどう魔力が動いているのか……それをしかと理解する。

 とはいえ、一目見ただけでどう動けばいいかわかるほど俺は器用じゃない。でも剣筋や流れを参考にしてこちらの技量を引き上げる……それしか、勝つ道はない!


 そんな風に決意した矢先、早速効果が現れた。魔人が放つ剣を俺は的確に弾いて反撃に出る。それは相手が受けることもできない僅かなタイミング。

 間隙を縫う剣戟に対して『刃の魔人』は距離を置いた。そうしなければ確実に当たるためだ。


『貴様……』


 剣技を模倣されていることを理解したようだ。よって俺は攻勢に出た。足に力を入れ、大地を踏み抜くと同時、足から跳ね返ってきた力を利用し、勢いよく剣を放つ――それは俺がこれまで学んできた技術と、魔人から得た技術の融合だった。不思議な魔力を得たことにより、俺は飲み込みも早くなっている――

 魔人は俺の攻撃に対し、剣で防ごうとした。当然、風によってこちらの剣は阻まれてしまうが……いける、と確信した。


 直後、剣の勢いを維持しながら振り抜く。それにより風を押しのけ、とうとう俺の刃が『刃の魔人』の剣を両断する!


『っ……!』


 相手は条件反射的に半ばから折れた剣を引き戻し、先ほど以上に距離を置いた。俺達は一度立ち止まり、にらみ合いの様相を呈す。


『風が途切れれば、抵抗は一切なしか……!』


 魔人が叫ぶ。その言葉通り、手応えはなかった。やはり『炎の魔人』に続き、目の前の相手であっても俺が持つ剣は一切関係ないらしかった。

 これで『刃の魔人』が怯んでくれればありがたかったのだが……相手の反応は、まったく違うものだった。


『面白い……! だが』


 魔人は右手に魔力を込める……と、半ばから断ち切られた剣が再生した。


『我が剣は自ら創り出したもの。破壊したからといって終わりではない』

「わかってるさ、そんなことは」


 剣を構え直す。それと同時に周囲を確認。

 並走しながら切り結んだことで町へ辿り着いてしまっていた。俺から見て横手に町へと繋がる城門が。魔人の登場によって住民達は避難を始めているが、敵が間近まで迫っていることから混乱している様子だった。

 城門を閉じてくれればこちらとしてはありがたいが……兵士が騒いでいるため、作業中らしい。門の外側にも人はいるが、そちらはとにかく町から遠ざかることで対処できる。


 俺としては魔人の意識をこちらに向けさせるしかない……そう決意しつつ戦略を考える。先ほど俺は風を押しのけた。いや、風を切ったと形容するべきか。この要領なら、魔人の体に剣を叩き込むことは十分可能なはずだ。ならば、


『……さて』


 魔人もまた剣を構え直す。仕切り直しといった案配だが……俺は剣に魔力を込め、次こそは決めるという気概で踏み込んだ。

 先ほどと同じく、足から伝わる力を利用して一閃する――しかし『刃の魔人』はそれを避け、ならばと俺は追撃の一手に出た。


 さらに足を前に。この速度はどうやら相手の想定を上回っており、魔人を捉えたと確信した――その時だった。


『ふっ!』


 魔人は回避に転じた。かなり強引と呼べるものであったが、紙一重でこちらの剣をかわすことに成功した。


「っ……!?」


 驚く間に反撃が来る。俺は剣を盾にしながらどうにか受けた。風により刃が触れ合うことはないが、俺は一歩距離を置く。

 そこで――魔人はあろうことか、突撃してきた。唐突な反転攻勢。無理すればこちらの刃が届く可能性があるとわかっていながら、何が目的だ……!?


 俺は困惑しつつも体は動いた。差し向けられた刃を受け、風が舞い……その瞬間、魔人の剣から魔力を感じ取った。それで相手の目論見を理解する。

 刹那、風が炸裂した。暴風とも呼べるそれを俺は真正面から受ける。魔力を込め踏ん張ったことで吹き飛ばされる事態にはならなかったが……明確な隙が生じてしまう。


 もちろん相手の攻撃を食らうようなことにはならないが、身を守ったことで魔人の動きが変わった。明らかに他の何かを狙う素振り。

 何をするか悟った瞬間、魔人は俺から離れるように走り出す。


 そちらには、ようやく閉じ始めた町へ繋がる城門が。


「こいつ……!」


 俺は即座に追随し、爆走する『刃の魔人』へ向け剣を放とうとした。しかしあと一歩、間合いに届かない。明らかにここまでの戦いぶりから、速力を見切っての動きだった。

 門番が悲鳴を上げて城門から逃げる。そして魔人が城門を抜けた直後、さらに加速した。俺は反射的に足へ魔力を全力で注ぎ、動きについて行く。


 背中が隙だらけではあったが……剣を振る。けれど移動に魔力を費やした斬撃は魔人の肉体をまとう風によって弾かれた。

 なら……! 俺は強引に魔力を引き出す。それと共に体力が少しずつなくなっていくのを自覚するが、まだ余力はある。よって、さらに速度を引き上げて魔人の背へ剣を放った。


 今度こそ――だが、魔人の体がさらに速くなる。それは瞬間的なものではあったが……気付けば相手は体を反転させて俺と向かい合った。


『では、改めて始めようか』


 町中――周囲に悲鳴が響く中で『刃の魔人』は宣言する。それと同時、俺は身の内で煮えたぎるような怒りが湧き上がっていた。


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