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受難 ③

 えっ!なぜファンさんが!

 今しがたファンさんの名前がでたばかりで、このタイミング。普通だったら喜び勇むところだけど、ここにはソシミール陛下がいる。

 ぜんぜんやましいことなんかないと言いたいが、こんな美しい人と二人でいたところを見られたくないのも事実だ。

 ともかくも、早くファンさんのためにドアを開けてあげなければならない。

 どうするどうする!頭の中が秒速で答えを出す。

 そうだ!これだー!

 僕はバックの中からマントを出した。そう、これこそ鬼からもらったマントで、魔力がないものがこれを被ると体が透明になることが出来ると言う、珍品中の珍品だ!

「どうしましょう、ライス様。わたくしどうすれば・・」

 僕のあわてふためく姿に、陛下もオロオロと落ち着きを失っている。

「陛下、今からこのマントを被っていただくと、姿が見えなくなりますので、部屋のすみでじっとしてていただけますか?」

 言うよりも早くマントで陛下を覆った。

「まあ、これは!」

 魔力のない陛下は、案のじょう透明と化したので「では、部屋のすみで音をたてないようお願いします」と声をかけ、僕はドアにむかった。

「ファンさん、どうもお待たせしました。どうぞ、お入りになってください!」

 ドアを開けたらニコッと微笑むファンさんがいて、そのかわいらしさに、心臓の鼓動が急速に早まった。

「急に来ちゃってごめんなさい。迷惑じゃなかったかしら?」

「迷惑なんてとんでもないです!すごくうれしいです!さ、どうぞこちらへ」

 先ほどまで、ソシミール陛下と話していた応接用の椅子に座ってもらおうと、手を差し伸べたが、ファンさんは軽く首をふる。

「このあいだみたいに並んで座りたいの」

 最強クラスの美貌をほこるファンさんが、こんな可愛いセリフを口にするなんて、そのギャップが僕の心を揺り動かす。

「じゃ、じゃあ、ベッドに並んで座りましょうか」

「うん」

 いったいこの感じはなんなのだろうか。まさかファンさんが僕のことを・・?!

 いやいや、そんなはずはない。早とちりは禁物だ。

 とりあえず、並んで座ってみたが、顔が見えない分、距離の緊張感がすごい。

「あ、あの、体調は大丈夫ですか?今日はミルフをガイターさんに預けていたようでしたから心配していたんですよ」

「う~ん、みんなには悪かったんだけど、今夜はライス君と二人きりになりたかったの」

 えっ!えっ!え~!

 ファンさんの言葉に、脳細胞が破裂するかと思うくらいの衝撃を受けた。

「あ、あ、あ、あの、それって・・」

 緊張しすぎてどうしようもなく固まってしまった僕の手に、自分の手を重ねるファンさん。

 自信過剰だってなんだっていい。ファンさんは僕を意識してくれていると思う。


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