ミスーレ帝国 ①
あれから数日を経て、やっとミスーレ帝国の首都にたどりついた。
あの貸別荘での出来事以降、ファンさんのことをよく考えてしまう。彼女を見ていると、気持ちがはずむような、そんな感情がひとりでに湧いてくる。
僕と目が会うと、恥ずかしそうにしながらも、ニコッと笑顔を向けてくれるのだが、元々、すごい美人ではあったが、僕の中には、かわいいという思いが入ってくるようになった。
まあ、ファンさんは年上で魔女だし、かわいいなんて言ったら怒られそうなので絶対に言えないけれど。
そうだ、そういえばファンさんは魔女だったよな。
僕がこんな気持ちになっているのって、ひょっとしたら魔法をかけられているのではないかな、なんて思ってしまう。
そんな風に思えてしまうくらい、ファンさんが僕の心を大きく占めているのだ。
さて話を戻すが、ミスーレ帝国の首都は境界を塀で囲われた都市になっていて、警備が厳重となっている。この国に入国するときに検問所で検査を受けているはずだが、首都に入る際は更なる検査が必要らしい。
今、検問所で、その検査を受けているところだが、僕たちの素性を話すと、担当の検査官に別室へと移動させられた。
「実は国境付近での貴殿らの活躍が、中央の目に止まったようで、首都に入るようなことがあった場合は必ず連絡しお連れせよと、お達しが届いていたのです」
国境付近の活躍というと、人形使いの3兄弟を逮捕した件なのだろう。確か首都から指名手配が出てたと言ってたし。
「当方としましても、ここで拒否をされますと事が大きくなりますゆえ、こちらの指示に素直に従っていただきたいのですが」
「ええ、別に反抗する要素もないのでかまいませんが、中央っていうのはなんなんです?」
「ああ、これは説明不足で申し訳ない。中央とは、中央政府のことで、このミスーレ帝国の政治を担っているところであります」
本来、この国に来た目的は、ミスーレ帝国の帝国第一ホテル総料理長、ブレッド氏からもらった包丁の件で、お礼を言うと共に近況報告することだった。
そのことは、緊急性があるわけでもないので急ぐ必要もないし、トラブルは御免こうむるので、相手の言う通りにした方がよさそうだ。
「それで、僕たちはどうようにすればいいのですか?」
「はい、あなたたちがいらした場合に備え、どの検問所にも早馬車が配備されているので、そちらにて中央政府まで行っていただきたいのです」
こうして、旅の目的にワンクッション入ることになってしまった。
ミスーレ帝国の首都は、かなり大きな都市だので、早馬車でも3時間かかるらしい。
中央政府が僕たちに赴けというからには理由があるのだろうが、向こうについたらなにがおきるのだろうか?
楽観的に考えると、人形使い3兄弟の逮捕に対する礼なのかな?なんて思われるが。
とにかくも、僕たちを乗せた早馬車は中央政府へと向かい、整備された街中を突き進んでいくのであった。




