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ファンさんの手料理 ①

 その後、人形使いの3人は、僕たちの通報により街の保安官によって逮捕となった。そもそも、この3兄弟には、ミスーレ帝国の首都より指名手配の通知が出ていたそうだ。

 そのため、楽々と逮捕の報告が出来たこの都市の保安部としては、大喜びだったのである。

 ミルフのほうも、おばあさんが生き返るわけではないが、犯人を逮捕までこぎつけたことにより、心の整理が一区切りついたかのように見える。

 さてミルフの今後についてだが、結論から言うと、僕たちと一緒に旅をすることになった。

 狼男の血脈を持つ、魔の係属の者として、ここにいる皆と一緒のほうが過ごしやすかろうと皆で話し合ったのだ。

 ミルフは、ホントの子供のようにファンさんに甘えている。今まで親切なおばあさんに育てられていたとはいえ、甘え盛りの子供としては、母親のように接してくれるファンさんの存在は嬉しいのだろう。

 それはファンさんのほうにも言えたことで、ミルフに対し本当の子供のように接していて、母として充実を感じているような姿がいかにもほほえましい。


 ところでミスーレ帝国に入国はしたものの、首都はまだまだ遠く、いくつもの街を経過しなければないらい。

 今日は、今後の日程を考えた末に、とある町の宿泊施設に早々に一泊することにしたのであったが、この施設は貸別荘であるため食事の用意は自分たちで行わなければならない。

 まだ昼前であり、今は貸別荘のキッチンで、僕とミルフで昼食づくりに取りかかっているところだ。

「すごいや、ライスお兄ちゃん。魔法みたいだね」

 僕の包丁を使うところを見て、ミルフは目を丸くしている。

「はは、僕は仕事がコックだからね。君くらいの年齢から毎日料理の練習をしていたんだ。いいかい、ミルフ、これは料理の世界のことだけじゃないけど、毎日の努力ってとても大切なんだよ」

「うん、レストランのおばあちゃんもそう言ってた」

「そうか、いいおばあちゃんだったんだね。どれ、ミルフもこのタマネギを切ってみてごらん」

 僕の指示に従って、包丁を手にしたミルフはコンコンコンっとリズミカルにタマネギを切っている。

「へ~、なかなか包丁使いが手馴れてるね」

「へへ、ボクね、よくレストランの厨房お手伝いしてたんだ」

「それはすごい。タマネギが均等に切れててとても上手だよ」

 ミルフは、ほめられてとても嬉しそうである。


 昼食に、ミートソースパスタとスープとサラダを用意した。

「今日は、ミルフがほとんど一人でつくったんです。レストランで料理を結構やってたみたいで、とても上手なんですよ」

 みんなにすごいすごいと言われ、赤くなったミルフは、ライスお兄ちゃんが大事なところは全部やってくれたのと謙遜した。

 みんなで昼食をいただいていると、ミルフがファンさんのほうを見つめて

「ボク、ママの料理食べてみたいな~」

 と、フォークでサラダのトマトを刺した。

考えると、結構長い時間を一緒に過ごしているが、僕がシェフということもあり、ファンさんが料理をつくったところは皆無であった。

 もし、料理をしたならば、グルメであるファンさんは、どんな手料理をつくるのであろうか。僕は興味津々であった。



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