表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
83/117

ウルフマン ⑨

 チビ男がやられてしまい、デブとノッポが慌てている。


「ワンワーン!」

 今度は子犬に変身しているミルフが、タタタタっと風のように走り、動揺しているデブのタクトに噛みついて手からもぎ取った。

「ママ―!」

 そのまま首を振ったミルフ。ミルフの口から放たれたタクトはクルクルっと回転しながらパシっとファンさんの手に収まった。

 おっ!ミルフのやつもやるじゃないか。

 そう思ったのもつかの間、ノッポが手をグッとのばし、ミルフの首をむんずとつかむと、そのまま高く持ち上げた。

「こ、この犬め、叩きつけてやる!」

 闇夜に響くノッポの声。高く持ち上げられたミルフは、苦しそうに暴れるが脱出にはいたらない。

 もがくミルフの小さな体が、月明かりによって照らし出される。すると、なぜかミルフの動きがピタリと止まった。その目は月を見つめているようだ。

 そして突然カッと目を見開いたミルフは、全身を震わせ鳴き声を発した。

「ウオーーオォーーン」

 それはまさしく狼の遠吠えであった。その鳴き声は森を揺らし、寝ていた鳥たちがおこされ、慌ててババババっと飛び立つほどである。

 ものの2~3秒で子犬だった姿が、直立する狼へと姿を変えた。その大きさは、ノッポの背丈をはるかに超えている。

 ミルフの子犬の姿は、ウルフマン、狼男に姿を変えたのだ。

 白銀に覆われた体毛は、月明かりに照らされキラキラと美しく輝いている。犬とは違うその凛とした狼の顔は、激しさと知能の高さを内に秘めているかのごとく感じられる。

 いきなりの狼男の出現に、デブとノッポは地面にへたり込んでミルフを見上げガタガタと震えている。

 ミルフは両手でデブとノッポの後頭部をつかんで持ち上げ、拍子木を打つかのように、そのままガツッと顔面同士をぶつけ合わせ、気絶した二人をドサッと地面に落とした。

「ママ―、ペーリーおねえちゃん、大丈夫~?」

 狼男の格好でファンさんとペーリーさんに近づき心配するミルフ。姿とセリフのギャップがなんとも言えない。

 ミルフはそのまま二人を抱え上げ、僕とガイターさんのところに戻って来た。そして二人を降ろすとバク転をし、人間のミルフに戻った。

 ファンさんに頭をなでられて、ミルフは嬉しそうに目をつぶる。

「ミルフ、助けてくれて有難う。ママうれしかったわ。ミルフは月明かりで狼男に変身できたのね」

「うん。でもボクもっとすごいの見ちゃったの」

「?」

「ライスお兄ちゃん、透明になれるなんて最強だよ!」

 えっ!ぼ、ぼくのことなの・・

「ちがうんだよ、ミルフ。このマントは魔力があっては透明になることができないんだ。つまり透明になれるのは弱い証拠なんだよ」

「そうなの?でもすごいよ透明人間なんて。ボクあこがれちゃうよ!」

 自分の能力ではない透明化の力にあこがれを抱かれてしまい、恥ずかしさに本当に透明になってしまいたい僕がいて、そんな様子を見て、皆が可笑しそうに笑っているのであった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ