ウルフマン ⑧
「さて、ぼちぼちオレも動くとするか」
チビ男は黄金色の棒を振り回す。
直後に森の木々がガサガサと音を立て、音を立てた木々が今度はバキバキと折れ、そこから動く巨大な石像が出現した。
「うおーーー!」
ガイターさんが気合の雄たけびを上げ、巨大化すると同時に、石像に拳で一撃をくらわせた。
ボリッ!と石が砕け吹っ飛んだが、こちらも砕かれた石が転がり集まってきて元の石像に戻っていく。
「ほう、こりゃあ厄介だあ」
ガイターさんの言う通り、石像を崩しては戻り、崩しては戻るを3度繰り返した。
「ほほう、巨大化するわ、石像を壊すわ、貴様は一体なに者なんだ?まあいい、オレの底力を見せてやろう」
チビ男は、更に棒を振り回すと、森の木々をへし折って、今度はレンガでできた巨像が現れた。
2体の巨像に襲われたガイターさんは、応戦はできているものの、同じことの繰り返しでキリがない。
それは、ファンさんとペーリーさんも同じであった。魔法で、いかに人形を壊そうが、無限によみがえってくるので始末に負えない。
「フー、フー」
この反復作業のような戦いに、さすがのガイターさんも呼吸が乱れている。
「ははは、どうやらこの勝負はオレたちの勝ちのようだな。どれ、ひとつ教えてやろうか。オレたちが人殺しをしていたのは、死人を操るための実験をしていたのさ」
チビ男が笑いながら話すと、デブとノッポもそれに続く。
「そうそう。墓場の死体では崩れてて役にたたねえ。新鮮な死体をつくって操れるか試していたのさ」
「死体が操れるとなりゃあ無敵だぜ。死体が死体を生み出す。誰も手出しはできねえぜ」
「そういうことだ。おまえたちも死んだら実験に使ってやるぜ。実験が成功したら、このミスーレ帝国を乗っ取ってやる。これがオレたちの狙いだ」
言いたいことを言うと、ハハハハと高笑いをするチビ、デブ、ノッポ。
その高笑いしているのが、敵の油断だった。
いきなり、チビ男の持っていた黄金色の棒が、その手から離れ空中をふわふわと移動していく。そして、沼のふちまで来た棒は、クルクルクルっと弧を描いて沼にポチョンと音をたて吸い込まれた。
「なんだ、なんだー!オレの操者のタクトが勝手に飛んでったー!タクトがねえと、壊れた巨像を元にもどせねえー!」
と、あわてふためくチビ男。
そう、実はやったのは僕なのだ。
以前、鬼にもらったマント(泣いた赤い鬼 ⑫より)を身に付け、体を透明にして気づかれないよう接近し、棒を取り上げ沼に投げたのだ。
ガイターさんはそこを見逃さず、左右のストレートパンチで、巨像を破壊した。そのとき、砕かれた破片の一つが勢いよく飛んでチビ男の頭に直撃し、倒れこんだチビ男はそのまま動かなくなった。




