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ウルフマン ⑥

 炎のつむじ風を呆然とした顔で見つめていたミルフであったが、すくっと立ち上がるとファンさんのところに近づいた。

 優し気な眼差しのファンさんに軽くハグされたミルフ。

「魔法なのかよくわからないけど、これがボクの能力なの」

 ミルフはその場でサッとバク宙をした。すると、着地したのは一匹の子犬だった。

「ボクね犬に変身できるんだ」

 白地にグレーの模様が入った子犬は、ちゃんとした言葉を発している。

「かっわいい―!」

 ペーリーさんが子犬となったミルフを抱き上げ、ほおずりした。

「すごいわ、異空間転移を無意識にしてるのね」

 ファンさんが感心したようにうなづいている。

「異空間転移?それってなんなんですか?」

「そうね、例えばガイターって巨人になるとき、自分の体そのものが巨大化するじゃない。巨大化するためには、魔力が常に体の中になくちゃだめなのね」

「はあ、そうなんですね」

「ミルフの場合、この犬の体は普段は異空間にあって、ミルフが変身するときだけ、人間本体と入れ替わって出てくるの。この犬には魔力が備わっているけど、人間本体のほうには魔力がないから、わたしも気付かなかったの」

「へ~、じゃあ、ミルフの本体は、今は異空間にあるってことなんですね?」

「そうよ、この変身方法は高等魔術で、そう簡単に修得することはできないわ。天性の才能ね、きっと」

 ファンさんはペーリーさんの腕の中にいる、犬の姿のミルフを見つめた。

「ミルフ、あなたさっきまで、その姿で犯人捜しをしてたのね?」

「うん、夜中に外を歩くときは、この姿のほうが怪しまれないの」

「そうね、だから魔法を使った波動が残ってたのね」

 犬の姿のミルフはペーリーさんの腕の中から降ろしてもらい、バク宙をする。すると今度は人間の姿に戻った。

「ボクね、前に犯人捜しで何回か人にみられちゃったんだ。それで狼男のうわさがでちゃったの」

 なるほど、灯台下暗しというか、ここに狼男がいたわけだ。まあ、狼男というようりは、幼児犬という感じだが。

「それでね、今日はとうとう犯人を見つけたから、捕まえようと思うの」

「あら、ミルフ一人で大丈夫なの?」

「・・わからない。だけど、おばあちゃんの仇はどうしてもとりたいの」

 下を向いて考え込むミルフ。たぶん犯人は一筋縄ではいかない相手なのだろう。

 そんなミルフの頭をなでたのはペーリーさんだった。

「ねえ、ミルフ。そういう時は、このライスお兄ちゃんに頼んでごらん。ライスお兄ちゃんは、すごいパーティのリーダーなのよ」

 ・・また、はじまった。ミルフも意外な顔して僕のことを見てる。もういい開き直ってやる。

「ファンさん、ガイターさん、ペーリーさん、いいですか!ミルフのおばあさんの敵討ちをしますよ!」

「ふふ、ライスくん、了解しました」

「んだな、ライスっち。オラ腕がなるべ」

「ね、ミルフ!ほんとだったでしょう。ライスさん、あたし頑張る~!」

 ミルフはビックリしている。

「ライスお兄ちゃん、すごいパーティってここのみんななの?」

「うん、そうだよ。ここにいるみんなは世界最強なんだよ、だから心配しなくて大丈夫だからね!」

「ありがとうライスお兄ちゃん。お兄ちゃんは、どんな魔法を使うの?」

「・・お兄ちゃんはね、ミルフと二人で安全なところで見てる。どう?すごい魔法だろう?」

 僕はキョトンとしたミルフの手を引いて、いざ出発!と声を発し、闇夜の屋外へと出だしたのであった。


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