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ウルフマン ⑤

「どうしよう、みんなで行かないで、わたしが残ってればよかった」

 ミルフが部屋から消えてしまい狼狽するファンさん。ミルフと接触が一番深かっただけに、責任を感じてしまっているようだ。

「ファン、オロオロするでねえ、失踪と決まったわけでねえべ」

「そうですよ、とにかくみんなで探しましょう」

 捜索するのであれば早い方がいいので、外に出ようとドアを開けた。

 すると、ドアが開くのを待ってたかのように、そこにミルフがポツンと立っていた。

「ご、ごめんなさい。かってに出ちゃって」

 泣きそうな顔で、謝りの言葉を発するミルフ。そこに、ファンさんが飛び出してきてミルフを抱きかかえる。

「よかった!無事でよかった!一人にしちゃってごめんなさい!」

 抱えられたミルフもファンさんに腕をまわして目をつむった。しばし、そのままでミルフが無事だったことに安堵していた。

「ファンおねえさま、とりあえず、部屋の中で話しましょうよ」

 ペーリーさんの言葉に、ファンさんはハッと気がついたように、周りを見る。

「ごめんなさい、そうね、中で話しましょうね」

 と、室内へ戻った。


「ぼくね犯人を見つけたんだ」

 皆でソファーにかけて、ミルフになぜ部屋を出たのか事情を聞くと、意外な答えが返ってきた。

「犯人って、さっきの殺人事件の?」

 僕の問いに、大きな目で僕を見ながらコクンとうなづくミルフ。

「おばあちゃんのかたきがとりたかったんだ。ボクね、いつもこうして事件がおきるたびに犯人を捜しに出てたの」

「そうだったんだ、じゃあ、狼男を見つけたんだね」

「ちがうの。犯人はオオカミ男じゃないの。ぜんぜん知らない、おじさんたち。今日はそのおじさん達の住んでるところを見つけたの」

 ミルフは、可愛がってくれたレストランのおばあさんの仇討ちがしたくて、犯人をさがしていたんだ。

 健気な心と思う反面、あまりに利発すぎる幼子に常識ではないものを感じてしまうのは僕だけなのだろうか?

 いや、ファンさんは僕以上にそのことを感じていたのだろう、そのことを意外な言葉でミルフに質している。

「ミルフ、正直に言ってね。あなたから、かすかだけど、魔力を使った形跡を感じるの。ミルフは魔法が使えるの?」

 ミルフはそのセリフに動揺の色を隠せない。

「ごめんなさい、ボクここにはもういられない。おせわしてくれてありがとう」

 頭をペコっとさげ、その場から逃げ出そうとしたミルフ。

 だが、ガイターさんの大きな手で、捕まえられた。

「あわてんでねえミルフ、ほれ、ファンのことよぐみでみろ」

 ガイターさんにうながされ、ファンさんのほうに首をむけたミルフは目を丸くして驚いている。

 ファンさんの手には、炎が燃え盛っていて、炎を大きくしたり小さくしたり、自在に操っている。

「ミルフ、魔力を使うところを見られたら逃げなさいと人間に教えられたのね?ここでは大丈夫よ。ほら、ママは魔女なの」

 ニコッと笑ったファンさんが、手のひらをクルっと回すと、手の上の火が横回りし、炎のつむじ風が出来上がった。


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