ウルフマン ④
なん時だか分からないが、それは夜中の出来事であった。
ぐっすりと熟睡中であったが、外での喧騒が耳に入り半ば強制的に起こされた。
それは皆も同じだったようで、眠そうな顔をしながら次々とリビングに集まってくる。
「いったい何ごとでしょうね、外がずいぶんと騒がしいですけど」
「んだ。結構な人数で大声だしてるべ。ちょっと普通じゃねえだ」
「ミルフはぐっすり寝てるから、ちょっと様子を確認してきましょうか」
ファンさんの提案により、ちょっとだけ四人で外を散策することとし、宿泊施設を出てみる。
ここは、市街地でも大きめの道路に建物が密集している地域だ。
むろん真夜中であり外は真っ暗であるけれど、5~6軒となりの建物の前が明るい。大勢の人が集まっていて、その人達が手に手に松明や手提げランプをもっているためだ。
その場所に近づき、その中の一人の野次馬らしき男に声をかけてみる。
「すいません、これってなにがあったんですか?」
「ああ、殺人だよ、パトロールをしていた保安官が殺されちまったみてえだ」
見ると、十数人の保安官が、殺された人が見えないようにシーツで幕をつくっている。
「犯人は分かってるんですか?」
「いや、今回は目撃者がいねえようだ」
「今回はというと?」
「なんだ、あんたら?最近の事件を知らねえのか?」
「ええ、僕たち旅のものなので、この街はたまたま泊まっているだけなんです」
いぶかし気な目で僕たちを見ていたその男は、納得したとばかり、また続きを話し出した。
「ここ最近だけでも、こうやって夜中を歩く者が10人以上犠牲になってるんだよ。それで、犯人は狼男だっていうことなのさ」
「狼男?」
たしかに検問所で狼男の話を聞いてはいたが、実際に間近でそのような事件がおきるとは思っていなかった。
「そう、殺人事件で何回か目撃されているようなんだ。一番はっきりと確認されたのが、あそこのレストランのばあさんが殺されたときだな」
その男が指をさし示す方向にレストランが見えるが、それはなんと、ミルフが住んでいたレストランだったのだ。
「あのレストランのばあさんの死体に噛みついている狼男が、たまたま近くの住人に目撃されたっていう話なのさ。怖ろしいもんだよ」
ミルフを可愛がって育てていたレストランのおばあさんは、最近、亡くなったようだが、それは狼男に殺されてしまったということになるようだ!?
その後、別な者にも事情を聞いてみたが、やはり情報は似たり寄ったりだった。
とりあえず、騒ぎの原因が分かったので、宿泊施設に戻り部屋にはいったが、外に出るときに確かに部屋のカギをかけたのが、開錠されていた。
なんだかイヤな予感がした。
案の定、ミルフの様子を見にいったファンさんがリビングに飛び出してきた。
「たいへん!ミルフがいない!」
外部の者が侵入し連れ去られたのか、はたまた自分で内カギを外して出て行ったのか、それは、今のところ直ぐには分からないが、とにかく至急探さなければと皆であわてるのであった。




