ウルフマン ②
「とりあえず、どこかで夕飯を食べに行きましょう。君もお腹減ってるよね?ほら、一緒に行こう」
このまま、この子をほおっておけないし、夕刻でお腹も減っていることだろう。まずは何か食べさせてあげようと僕はファンさんに抱かれている男の子の頭をなでた。
男の子はポケッとした顔で僕を見つめたが、すぐ顔を赤くしうつむいた。
「うん、でもボクお金がないの・・」
「それは大丈夫だよ、僕たちが出してあげるから。君は元気よく食べれば、それでいいんだよ」
「・・うん、ありがとう」
微笑む男の子。グレーの瞳でかわいらしい顔をしている。
とても利発な子であることは受け答えから分かるけれど、幼子らしからぬ遠慮に一抹の悲しさを感じてしまう。
ファンさんは、その子を抱きしめたまま歩き出す。
最初、不安そうな顔をしていた男の子だったが、安心したのかファンさんに抱きついて目を閉じた。
軽い食事ができる店に入り、皆でパスタを注文した。
男の子はよほどお腹が減っていたのだろう、夢中でほおばっている。
「ほら、そんなに急がなくてもご飯は逃げないわよ」
優しく寄り添って、穏やかに注意するファンさん。慈悲を含んだような瞳で男の子を見つめている。まるで母親のようだ。
男の子が、口の中のパスタを飲み込んだところを見計らって声をかけた。
「ねえ、君を呼ぶときはなんて呼べばいいのかな?名前を教えてくれるかい?」
グレーの瞳を僕に向けた男の子。
「ぼくね、ミルフっていうの。ミルフ・ウォーカーがボクの名前なの」
ファンさんは、名前を告げた男の子の頭をそっとなでる。ミルフは嬉しかったのだろう、ファンさんを見上げると、ニコッとした。
「ねえ、ファンおねえさま。これからこの子どうしましょう?」
夕食を食べ終えたら今度は眠気がきたようで、ファンさんに抱かれてスースーと寝息をたてて寝てしまったミルフ。
「そうねえ、あの店に帰すわけにはいかないし、今日の所は私たちが泊まるところに一緒に寝せようと思うのだけれど、いいわよね?」
むろん、誰も異議はなく、そのままミルフを連れて宿へと向かっていた。
途中、ファンさんがちょっと寄るところがあるから先に戻っていてというので、僕たちは宿に直行した。
なので、途中から僕がミルフを抱いていたのだが、まだまだ体重が軽く幼児の域を出ていないようだ。
宿についても、ぐっすり寝てて起きないミルフをベットに横たえていると、ハアハアと息をきらしながらファンさんが戻って来た。どうやらこの宿まで、走って駆けつけたようだ。
そのファンさんの手には紙袋が握られていて、「これ、買ってきちゃった」と、嬉しそうに中身を取り出した。それは、数着のミルフに着せるための服であった。




