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ウルフマン ①

 今日はこの街に一泊をし、明日、首都に向けて出発することとした。

 検問所で聞いた狼男の件がみんな気になっているようだが、これだけ大きい都市なので出会うことは、まずないと思われる。

 とりあえず、宿泊の施設は押さえることができたが、急きょの事で夕飯の用意は出来ないとのことであったので、市街地に繰り出し夕食をとることができる店を探索しているところだ。

 前方の十字路の角に大きめのレストランが見えたので、皆でそこに行くことと相成ったが、そのレストランの方向から、中年男の怒鳴り声が響いてくる。

 現場に近づくと、小さな子供がでっぷり太ったオヤジに道に転がされ、怒りの声を浴びせられていた。

「このガキ!なん枚皿を割れば気が住むんだ!」

「ご、ごめんなさい。誰かがボクの事、押したの・・」

「てめえ!言い訳するんじゃねー!おまえは、この店ににゃー置いとけねえ!さっさと消えやがれ」

「ごめんなさい、ボク、他にいくところがないの。だからゆるして・・」

「うるせえ!知ったことか!うわさの狼男にでも食われちまえ!」

「ごめんなさい、ごめんなさい」

 あやまり続けているのは5~6歳の、かわいらしい顔をした小さな男の子だった。涙をほほにいっぱい流して謝罪を繰り返している。


「ちょっと!そこのあなた!やめなさいよ、こんな小さい子に!」

 あまりに胸くそわるい光景に、ペーリーさんが怒りの声を発した。

「な、なんでえ、あんた」

「あたしは旅の者ですけどね、こんなひどいもの見せられて黙ってられないわ!」

 なかなかの迫力でペーリーさんが詰め寄っている。ファンさんは子供を立たせ服の汚れを払い、ハンカチで涙を拭いてあげている。

「旅のもんだ~!赤の他人じゃねえか、関係のねえやつはすっこんでろ!」

「そうはいかないわ、あなたのしてることは虐待よ!」

「なにが虐待だよ、しつけだ、しつけ。ここはオレの店だ!それに、そいつはもうここから出てってもらう」

「出てってもらうって、この子、どこの子なのよ!」

「知るか!そいつは先日亡くなったオレのお袋が、道端で寝っ転がっていた浮浪児を拾ってきたんだよ!皿洗いもまともに出来やしねえ!食い扶持ばかりかかって、とんでもねえ疫病神だ!」

「ふざけないで、あなたのほうが、この世に仇名す疫病神よ!」

「なにおー!」

 言い争いの場にガイターさんがのそりと顔をだす。

「あんた、この店、いま営業中だべか?」

「ああ!?やってるよ、ちゃんと金を払うんだったら客として認めてやる」

「んだか、では入らしてもらうべ。ただし、オラ、グルメだから、少しでも味付けが気に入らねえときは暴れ出すの覚悟してけれや」

 と、指をボッキンボッキンとならし、鋭い目つきで男の詰め寄った。

 目の前の凶悪そうなガイターさんに、顔を青くして脂汗を流した男は、ひえーっ!と声を上げ、店の中に転がり込んでしまった。

 最近のガイターさんは、威圧をかける半ば用心棒のような存在となっているが、その風貌がトラブル解決を早期にしていることは間違いない。

 さて僕たちは、小さな男の子を囲み、これからどうしようかと思案するのであった。


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